従来からの領域に魅力は無いのか?注目したい「福祉」領域

 ヘルスケア分野の中でもデジタルヘルスの領域ではありませんが、従来からの領域として注目したいのは「福祉」領域であると考えています。私は、この領域に詳しくはありませんが、データ駆動型社会、Society5.0、エリアマネジメント、コンパクトシティ等といった言葉がバズワード化している現在、なぜか福祉領域に切り込んだDX※ビジネスがほとんど見受けられないのが不思議であり、不安でもあります。

 これまで、福祉はビジネスにしてはいけない、福祉で儲けてはいけないといったステレオタイプ的な概念が浸透してしまい、極めて生産性の低い職場になっているのではないでしょうか。福祉に生産性を求めることは不謹慎だ、という方もおられるかもしれませんが、特にバックヤード業務(事務管理作業等)は極めて生産性が低いと推察しています。

 国会で、いわゆるスーパーシティ法案が可決され、多くの自治体が動き出した今、福祉に切り込んだ議論は不可欠であると思っています。障害者福祉、高齢者福祉等、その領域の中で、これまで準市場として扱われてきた領域にもデジタル化の波は押し寄せ、もはや避けることは不可能だとも思います。福祉機器市場は、現在、1兆円を超えるとも言われていますが、あくまで機器供給市場であり、福祉制度、システムそれ自体にアプローチしたものではありません。

 福祉は措置の世界であるという認識ですが、社会福祉学者の古川孝順によれば、措置制度は次のように定義されています。「措置制度とは、公的福祉サービスの供給に際して、措置機関の実施する、利用者のニーズの認知(申請・通告の受理、職権による認知)からその評価 (調査・判定、審査)、ニーズに適合するサービスの選定と供給の決定、さらにはサービスの提供機関・施設にたいする通知あるいは送致にいたるまでの手続きを意味している。」とあります。

改めて今、読み返してみると認知・評価・選定・供給・通知・送致等のプロセスは、まさにDX化による迅速性・正確性・公明性が必要な部分であり。今後、デジタルヘルスが拡大していく新たな領域であると考えています。

 また、この福祉領域を支えているのは社会福祉法人やNPO法人が中心となっていますが、株式会社のようにその経営状態は外部に開かれた、オープンにできるモデルになっていません。どのような経営者が、どのような経営を行い、どのような福祉サービスを提供しているのか、ほとんどブラックボックスに近いとも思います。また、サービス評価・標準化も遅れているように見えます。

 こうした福祉法人経営のあり方、マネジメントシステムに切り込み、そこに正しく国費(公費)が使われているのか、いびつなサービスモデルになっていないか、将来に向けた事業継続性等を評価し、是正・改善する仕組みもDX化が役に立つのではないでしょうか。

 福祉領域については、私自身がまだまだ知識不足でもあり、今後もっと詳しく学んで行きたいと思っています。

※DX:Digital Transformationの略語。IoT、AI等のデジタル技術を駆使し、データ駆動型のサービスモデル、事業モデル、社会モデル等への転換を意味する。

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