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限界旅行のすゝめ ~旅程崩壊を乗り越えろ・後編~

実録!旅程崩壊

さて、お待ちかね(?)の旅程崩壊と対応の実践編でございます。
今回は台風の襲来から旅程を変更して逃げ切ったパターンと、大雪で予定のルートが寸断される中、ルート変更によって旅行を強行したパターンの2つをご紹介します。
旅程崩壊が怖くて限界旅行ができるか!
(※記事中のダイヤ・費用等の情報は旅行当時のものです)


帰路を直撃する台風から逃げ切れ!

まず1つ目は、2023年の盆休み5日間(8/11~8/15)を使っての旅行。
この時の旅行はこんなことを考えてました。

  • 東北・信越方面を中心とした路線の未乗車区間の乗り潰し
    (常磐線、羽越本線、田沢湖線、白新線、飯山線、石巻線、仙石線、東北本線利府支線、仙石東北ライン)

  • 東京でオフ会

  • 女川の震災遺構(旧女川交番等)の観光

  • 東北方面のグルメを堪能

  • 新潟でバスセンターのカレーを食べる・駅ビルで利き酒

  • 姫路の駅そば・塩尻の駅そば・名古屋駅ホームのきしめんを食べる

結構詰め込みましたね。
そして当初計画していた旅程がこちら。
青春18きっぷ使用なので、基本的に移動は普通・快速列車のみです。

計画当初の比較的余裕のある旅程

地図にプロットするとこんな感じ。

地理院タイルより作成

しかしこの旅行、出発前の段階で一つ懸案事項がありました。
台風7号が小笠原付近の海上で待ち構えていたのです。

8月9日時点での気象庁の台風進路予想

予報円がかなり大きく、どうにも進路が読めません。
台風の速度が遅く、かつ東寄りの進路を取ってくれれば影響を受けずに済みそうです。
しかし台風の進路が西寄りになった場合には、8/14~8/15辺りで直撃を食らうことになるので、甚大な影響が出る可能性があります.

どうするかギリギリまで様子を見た上で、台風が東寄りの進路を取ってくれることを期待して旅行を決行したのですが、その矢先に早速不穏な空気が漂い始めます。
なんと旅行初日の11日夕方の予報で、台風の進路が西寄りになることが判明。その日の夜の進路予想がこちら。

最悪のパターンです。
15日に通る予定の近畿地方で台風の直撃を受ける可能性が高く、14日に長野で宿泊した場合には足止めされることがほぼ確実。
旅程崩壊が確定しました。
移動しながら時刻表と睨めっこして、ダメージを軽減する方法を考えます。

15日まで旅行を続けると、帰宅が困難になる。
でも折角の機会だし、どうにか東北方面には足を伸ばしたい。
…となれば旅程を繰り上げて、台風が来る前に近畿地方を通り抜けるしかない。

予報を見る限り、14日の時点では日本海側にまで影響が及ぶ可能性は低そうなので、13日のうちに新潟に入ることができればどうにかなりそうです。

そして組み直した旅程がこちら。

12日:女川での観光を1時間に短縮の上、翌日に予定していた利府支線乗り潰しを繰り上げ
13日:出発時刻を1時間半繰り上げ+秋田観光取りやめ+特急利用で鶴岡宿泊をスキップ
14日:繰り上げて捻出した時間で一気に岡山へ

しかしこれでも逃げ切れる保証はありません。
台風の速度が上がった場合には14日に塩尻→名古屋→京都のルートが通れなくなる可能性があったので、念のため迂回ルートとして
・長野から北陸新幹線で金沢→(北陸線)→京都(プランB)
・新潟→(越後線)→柏崎→直江津→金沢→(北陸線)→京都(プランC)
という候補も用意しておきます。
更に大阪周辺で足止めを食らった場合は、最悪レンタカーのワンウェイ利用も視野に入れて、一通りの手は尽くしました。


緑の矢印のルートが基本計画
地理院タイルより作成

そして一夜明けた8/12からは組み直した旅程で旅行を続行。
この旅程変更によって新潟到着時刻が遅くなった結果、バスセンターのカレーが売り切れという憂き目に遭いましたが、その他には特に大きなトラブルはありませんでした。(なお2か月後にこれを回収する弾丸旅行をするわけですが、それはまた別のお話。)

そのまま随時台風の情報をチェックしながら旅行を続け、最終的には長野から名古屋経由のルートを選択し、無事14日の夜に岡山に到着して旅行を完遂することができました。

なお翌15日には台風は近畿エリアを直撃し、京都~兵庫は全面的に運休となっていたので、間一髪で台風から逃げ切った形になります。
旅程崩壊が確定した時点で早期に手を打つことの重要性を再認識した旅行になりました。


北陸の大雪を迂回せよ!

さて、2つ目の事例です。
時は2021年末、曜日の配置が良くて12/27~12/30の間で休みが取れたので、青春18きっぷと北陸の第三セクター路線の乗り放題切符を使って北陸方面の路線を乗り潰しながら美味しいものを食べに行ってみようと計画。

詳細な時刻までは決めずに、こんな風にざっくりと予定を立ててみました。
12/26:仕事を早退して岡山→米原
12/27:米原→福井→九頭竜湖→福井→津幡→穴水→金沢
12/28:金沢→高岡→氷見→高岡→城端→糸魚川→富山
12/29:富山→高岡→美濃太田→多治見→美濃太田→岐阜→名古屋
12/30:名古屋→大府→武豊→大府→名古屋→亀山→木津→京都→岡山

地理院タイルより作成

この時の旅行にも、出発時点で一つ懸案事項がありました。
それは年末から年明けにかけて予報されていた大雪
特に北陸地方では、不要不急の外出を避けるようにと呼びかけられるほどの降雪が予測されていました。
しかし年末年始なので、途中で少々の足止めを休み明けの仕事には影響がないと踏んで旅行を決行。
そしてこの旅行、開幕からとんでもないハプニングが起こるのです…

まず初日、ギリギリまで様子を見た結果米原まで行って1泊することにしていたのですが、出発した矢先からお先真っ暗な事態が。

はい、ちょっと目を離した隙に宿がなくなりました。
そして事態はさらに悪化していきます。
大雪の影響でダイヤが乱れていたところに、不穏なアナウンスが。

翌日の列車がまともに動いてくれるか分かりません。
追い打ちをかけるように、翌日に乗車予定だった越美北線の列車の運休が決まります。

こうして出発から3時間も経たないうちに旅程が崩壊しました。

ひとまずそのまま姫路から東に向かいつつ運行情報を確認していたら、どうやら関ヶ原を越えて名古屋までは行けそうであることが判明。
予定の経路を逆回りで辿ることによって北陸に入るタイミングを遅らせ、北陸方面の運行が正常に戻るのを待つという方法を考え始めます。

当初の予定とは逆回りで北陸を回るルート案
地理院タイルより作成

しかしこの思惑も見事に打ち砕かれます。

京都を過ぎて滋賀県に入り、野洲駅を過ぎたあたりから先行列車が詰まって徐行運転が始まったのです。

東海道線 京都から米原までの路線図

そこに踏切で車が立往生して列車が遅れるというダメ押しの一撃まで発生。
ノロノロと安土駅まで行ったは良いんですが、これでは関ヶ原を越えるのは不可能な可能性が高いと判断。
安土駅で逆方向の列車に乗り換えて折り返し、どこかに宿を取ることに決めました。

この時点で、駅近くの宿が取れそうな近隣の駅は近江八幡か野洲。
近畿エリアにお住まいの方はご存じかもしれませんが、野洲駅というのは車両基地が併設されている駅で、ここを始発・終点とする列車が多く運行されています。
年末年始という時節柄、JR側も京阪神方面は極力列車を動かしたいはず。
つまり、もし翌日に運休が発生することになった場合には、野洲駅より北側が運休になる可能性が高いということになります。
こうなったら選択肢は一択、野洲に宿を取るのみです。

そして翌朝…

目を覚ましてみたら、東海道線は野洲駅から岐阜県の大垣駅までの区間で運行がストップしていました。
昨晩の読みは見事的中。折り返して野洲に宿泊したのは大正解でしたね。

余談ですが、もし仮に米原に辿り着いて関ヶ原を越えるルートに突っ込んでいたら大変なことになっていたようです…


しかし立往生を回避したとはいえ、東海道線が動かないのでこのままでは岐阜方面には行けません。かといって湖西周りで北陸に行くのも、大雪でダイヤが崩壊状態なので非現実的。
そこで前回の記事で紹介した広域迂回の出番です。
情報を収集したところ、草津線と関西本線は通常通り動いている模様。
そこで草津線と関西本線を使って、亀山・名古屋経由で不通区間を迂回するルートを取ることにしました。(一応新幹線も遅れながら動いてはいましたが、京都→名古屋で5.000円超の出費になるので選択肢から除外)

野洲→岐阜を草津線と関西本線で迂回するルート
地理院タイルより作成

こういうことができるのは青春18きっぷの強みですね。
こちらのルートは積雪こそあれ、平常通りのダイヤで動いていました。

関西本線四日市~桑名付近と岐阜駅前の雪の状況

そして無事に宿の当日確保にも成功して飛騨高山に到着。

…が、まだ安心はできません。
富山方面の雪の降り方が激しく、翌日の列車が動くかが分からないという懸案事項がありました。
高山から高速バスで長野県の松本に抜けても、糸魚川方面に行くルートは運休が決定していたので、代替ルートはありません。
こればかりは出たとこ勝負なので、ダメなら高山にもう1泊して観光でもするつもりで就寝。

そして翌朝目を覚ますと…無事に列車は平常ダイヤで運行されていました。
車窓は一面の銀世界。除雪作業にあたられた職員の方には頭が下がります。

途中の猪谷駅の積雪状況

さて、これで当初の予定と逆回り+迂回で旅程を完遂することができるかと思いきや、実はまだもう一つ問題が。

最終日の20時から高松(香川県)で予定があったんですが、越美北線で九頭竜湖まで行ってから高松方面に乗り継いでいくと間に合いません。

越美北線に乗車した後、普通・快速列車で高松に至る行程
どう頑張ってもこれが最速

そこでもう一つのテクニックを使います。
ワープです。(詳細は前回の記事を参照)

福井から敦賀まで別料金(自由席で2,190円)で特急に乗った場合
赤字の部分が特急乗車区間

福井から敦賀までの区間で特急を使うことで、1本早い新快速に乗り継ぐことが可能になりました。
さらに特急列車に乗ると、もう一つのメリットが。
車内で駅弁が食べられるのです。
乗車時間の30分の間に食事も済ませることができ、まさに一石二鳥です。

こうして当初予定していたのとは大きく異なる経路にはなりましたが、予定の目的地をおおむね回って無事に旅行を完遂の上、高松での予定にも間に合って見事大団円となりました。

場当たり的な経路変更の末に辿った最終的な行程

このときは目的地はそのままで、不通区間を迂回した上でルートを逆回りにするという方法で旅程崩壊に対処できました。
目的地を訪れる順番を変更することによってダイヤの回復を待つという方法は応用が効きそうですね。


もしこのような大規模な旅程崩壊が発生しても、的確に情報を収集して早期に旅程を組み直せば、旅行の目的を達成できる場合があります。
リスクを早期に見極め、先手を打って交通路が寸断された場合の代替プランを用意できるかどうかが運命の分かれ目です。
貴重な旅行の機会を出来る限り無駄にしないためにも、今回の記事を旅程崩壊への対応方法の一例としてお役立ていただければ幸いです。
まあ普通の人は台風や大雪が予測されるエリアには突撃しないでしょうが。


さて、次回は鉄道を使った限界旅行に使える乗り放題切符を特集してみたいと思います。
列車よ、走って行け!どこまでも!


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