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限界旅行のすゝめ ~実践編 長距離ツーリング計画~

読者の皆様におかれましては、次の旅行はどこに行こうかと、日々各地に思いを巡らせてお過ごしのことと存じます。
さて、今回は筆者が先日敢行した長距離ツーリングをどのように計画し、実行に至ったのか、その経過を振り返ってみようという企画です。

旅の計画の立て方については以前の記事で触れましたが、今回はその実践例という位置づけになります。

基本的には上記の記事の流れに従って進めて行く形になるのですが、『計画の立て方のぼんやりとしたイメージは掴めたけど、具体的に何を調べて何を考えればいいのかが分からない!』という方には是非とも参考にしていただければと思います。


0.前提条件

日程に関する条件は以下の通りです。

  • 確保できた休日は5月1日(水)~5月7日(火)の7日間

  • 休前日の仕事からの帰宅予定時刻は21時頃

  • 5月8日(水)は朝から仕事なので、前日深夜の帰宅は可能な限り避けたい
    (できれば5月6日中に帰宅)

旅行の具体的な計画は4月上旬頃から立て始めています。
また出発地は岡山県です。

1.行き先を決める

今回行き先は最初からほぼ決まっていました。
47都道府県中、唯一筆者が未だ観光したことのなかった青森県
前々から行きたいと思っていたスポットが以下の通り。

  • 恐山

  • 青函連絡船メモリアルシップ 八甲田丸

  • 竜飛岬と青函トンネル記念館

  • 大間崎(本州最北端)

  • ついでに函館

それから色々調べたり人から教えてもらったりで、追加で見つけたスポットが以下の通り。

  • 弘前城

  • 仏ヶ浦

  • 十三湖

  • 青池

  • キリストの墓

ひとまずこれだけあれば、回るスポットには困らないでしょう。
あとはこの中から取捨選択です。

2.交通手段を決める

さて、西日本と東北地方というのは往来が結構大変です。
自力移動であれば相当な長距離になりますし、公共交通機関を使うにしても直行便があるのは大阪からの航空便などに限られます。

今回は時期的にもバイクで走りたかったので、バイクでの青森までのアクセス手段を検討します。

  1. 全区間自走する場合
    岡山から東京経由もしくは新潟経由で高速を自走する。
    A.東京経由で走行距離が1,400km弱、所要時間14時間半
    B.新潟経由で走行距離1,200km強、所要時間17時間
    ※所要時間は休憩を含まない

  2. フェリーを利用する場合
    長距離フェリーを使って自走区間を減らす。
    利用できそうな航路は以下の通り。
     A.敦賀~新潟~秋田(新日本海フェリー)
     B.敦賀~苫小牧東(新日本海フェリー)と
      苫小牧西~八戸(シルバーフェリー)を乗継
     C.舞鶴~小樽 or 敦賀~苫小牧東(新日本海フェリー)と
      函館~青森(津軽海峡フェリー or 青函フェリーを乗継
     D.徳島~東京(オーシャン東九フェリー)
     E.名古屋~仙台(太平洋フェリー)

この中からの選択になるわけですが、まず除外したのが全区間自走。
休憩時間も考えると2日掛かりになり、途中で(おそらくは一旦高速から下りての)宿泊が必要になります。
高速が2分割になることと、高速のガソリンスタンドは値段が高いことを考えると、体力を使う割には費用面での負担が大きいです。

したがって、今回はフェリーを使うことにしました。

上記のリストのうち、A(敦賀~新潟~秋田航路)とE(名古屋~仙台航路)は毎日運航ではないため、日程が合わなければそもそも使えません。
残念ながら両者とも5/1発の便は運行がなかったので、これらは選択肢から除外です。

B(苫小牧乗継)のパターンは敦賀を23:55に出発→翌々日の7:30八戸着なので、時間的には割と便利です。
ただし苫小牧東港に着くのが20:30、苫小牧西港を出るのが23:59(22:30までに乗船手続きが必要)で、東港から西港までの移動に1時間かかることを考えると、乗換時間はあまり余裕がありません。
遅延か何かのトラブルがあると詰みのリスクがあります。

Cは青森に入るのが3日目になりますが、函館に立ち寄るのであれば有力な選択肢です。

Dは徳島を11:20発で翌日5:30に東京着、そこから高速を自走。
自走する距離は長いものの、東北自動車道を全区間走破(679.5km)できます。

総合的に勘案した結果、東北自動車道の終点にある「おつかれさまでした」の看板も見たかったので、行きはDの徳島→東京航路を使って、東北自動車道を全区間走破するプランを使うことにしました。

帰りは函館に立ち寄りたかったので、Cの選択肢をチョイス。
北海道から関西に向かう航路は小樽→舞鶴と苫小牧→敦賀の2つがありますが、小樽で寿司が食べたいというのと、苫小牧→敦賀航路は以前乗ったことがあるからという理由で小樽→舞鶴航路を使うことに決定しました。

乗船するフェリーが決まったので、大まかな日程は以下のようになります。

5/1(水)11:30のフェリーで徳島発 船中泊
5/2(木)5:30東京着、当日夜青森到着
5/3(金・祝)~5/4(土・祝)青森県内を回る
5/5(日)フェリーで北海道に上陸、23:30のフェリーで小樽発 船中泊
5/6(月)21時過ぎ 舞鶴着 高速を走って自宅へ

3.経路と宿泊場所

次は、回るスポットと宿の空き状況を勘案してルートを考えます。

今回はGWの連休が絡むので、宿を当日に予約するのはリスキーです。
そこで、まずは宿の確保を優先することにします。

5/2(木)は青森市内で普通にビジネスホテル確保できました。
5/3(金)は連休初日とあってどこも値段が高騰していましたが、横浜町のペンションが安かったのでそこに泊まることに。
5/4(土)もリーズナブルな価格で泊まれる場所はありません。函館行きフェリーの夜行便(青森2:30発→函館6:10着)で寝ることにします。

今度は、宿泊地に合わせて回るスポットと経路を考えていきます。
現時点で候補になってるスポットと宿泊地を地図で見るとこんな感じ。

地理院タイルより作成

青池とキリストの墓は、他の場所から孤立していて回るのは厳しそうなので、今回はパス。
弘前城は今年は名物の桜が早く散ってしまっているので、無理に回らなくてもよさそう。
陸奥湾を渡る航路(蟹田-脇ノ沢)が使えれば便利なのですが、運航時刻の関係で利用は厳しそうなので、津軽半島側(竜飛岬、十三湖)と下北半島側(恐山、大間崎、仏ヶ浦)をそれぞれ1日ずつかけて回る感じになりそうです。

上記の事情を考慮して、
5/3 八甲田丸→竜飛岬→十三湖→(時間に余裕があれば弘前城)→宿へ
5/4 恐山→大間崎→仏ヶ浦→青森港からフェリー乗船
ぐらいが現実的なラインでしょうか。

5/5は北海道に上陸してから小樽でフェリー(23:30発)に乗船するまで結構時間があるので、函館を観光した後は前から気になっていた室蘭の地球岬に立ち寄るぐらいの時間はありそうです。

これで旅程は決まりました。

5/1(水)11:30徳島発のフェリーで船中泊
5/2(木)5:30東京着 東北道を走破して、青森市内の宿に宿泊
5/3(金)宿→青森港→竜飛岬→十三湖(→弘前城)→横浜町の宿
5/4(土)宿→恐山→大間崎→仏ヶ浦→青森港26:10発のフェリー泊
5/5(日)6:10函館着→五稜郭→函館山→地球岬→小樽23:30発のフェリー泊
5/6(月)21時過ぎ 舞鶴着 高速を走って自宅へ(26時頃着予定)

全行程の経路を地図に示すとこんな感じです。

地理院タイルより作成
赤→青→緑→橙→紫→桃が各日の行路

移動距離がえげつないことになってますが、徳島→東京と小樽→舞鶴はフェリー移動なので考えなくてOK。
実際に長距離を走るのは2日目の東京→青森の約720kmだけで、あとは函館→小樽が約380km、他の日は250~300km程度。
過去の経験から、渋滞にはまらなければ1日で最大400キロぐらいは走れるので、2日目さえ乗り越えれば十分走り切れる距離。

これであとは実行するのみです。

4.実施結果

そういうわけで、実際に行ってきた結果(一部)がこちらです。

左上から函館港の摩周丸、大間崎、函館山、
竜飛岬の階段国道、恐山山門、竜飛岬灯台、青森港の八甲田丸

全般的にはおおむね計画通りに旅を終えることができました。

しかし、なかなかうまくいかないことがあるのも旅の常。
実際のところ、今回もいくつかトラブルが発生しています。
比較的影響が大きかったものとしては、

  • 青森で狙っていた店がGWの営業時間変更で食べられず

  • バイクに取付けた積載用装備に不具合が発生、対応に少々時間を要した
    (結果、弘前城立ち寄りをカット)

  • 仏ヶ浦→青森の途中の国道338号が通行止め、内陸の県道に迂回

  • 函館の観光客の数が予想より遙かに多く、時間の関係でラッキーピエロのハンバーガーを食べ損ねる

  • 函館市街から室蘭に向かう道中、森~静狩峠の区間の気温が9℃と非常に低く、寒さに耐えながらの走行となった

といったところです。
とくに函館に関しては、連休前に公開されていた名探偵コナンの映画の効果で観光客が通常より相当多くなっていたようで、これは完全に誤算でした。

回れなかった場所があるのはちょっと残念でしたが、やり残しがあるということは、また次回訪れた時の楽しみが残っているということでもあります。
また機会を作って津軽海峡周辺を訪れたいものです。

補足:ツーリング計画の注意点

今回はバイクを使ったわけですが、他の交通手段での旅行にはない注意点がいくつかあるので、最後にご紹介。

駐車スペースの有無を確認する

四輪車用のコインパーキングは二輪車が駐車できないところが大半です。
今回だと、函館駅周辺はバイクの駐輪スペースを探すのに苦労しました。
ホテル・観光を予定している場所ともに、バイクの駐車が可能な駐車場があることを確認しておきましょう。

交通規制を十分に確認する

これは四輪車でもそうなのですが、二輪車のみ通行禁止などの規制が行われている場合があります(今回だと函館山)。
現地で泣きを見ないためにも、前もって調べておきましょう。

天候を確認しておく

天気が悪いと、ツーリングもただの苦行になりかねません。
どこまでが許容範囲かは人によりますが、日程の大半で雨が降るようであれば、中止も視野に入れる必要があるでしょう。
あと余程の経験がある場合を除いて、台風や雪が降りそうなときはやめておきましょう。最悪死にます。

防寒装備・雨用装備の用意を

バイクは風を受けて走るため、思いのほか体温を奪われます。
日中は丁度いい気温でも、日没などで気温が20℃ぐらいになると、寒さに震えながら走ることになります。
真夏でもない限り、防寒装備は用意しておくのが賢明です。
また長期間のツーリングの場合、出発時点では旅程後半の天気が読めないことが多いので、雨具の用意も忘れずに。
ずぶ濡れの状態で風に当たると、一瞬で体温を奪われてしまい、もはや走るどころではなくなります。最悪死にます。

休憩は早めに、計画的に

運転に疲れたとき、四輪車であればシートを倒して寝ることができますが、二輪車の場合そうはいきません。
二輪車であっても、疲労が溜まった状態で無理に運転を続けると眠気に襲われることもあり、非常に危険です。最悪死にます。
休憩は意識して早めにとるようにして、疲れを溜めないように。

一日の走行限界距離を把握しておく

宿泊を伴う長距離ツーリングを行う場合、自分が一日にどの程度の距離が走れるのかは前もって把握した上で計画を立てるべきです。
無理をして疲れてしまい、集中力が切れた状態で運転していては危険です。最悪死にます。
いきなり長距離を走ろうとせず、少しずつ長い距離に挑戦するようにしましょう。

二輪車は四輪車以上に運転に集中力を要する上に、万が一事故に巻き込まれると重傷を負う可能性が非常に高くなります。
詰め込み重視の旅程の場合は、ちょっとした遅れが後に響いて無理をしがちです。事前にできる限りの準備をして、少しでもリスクを減らすように努めましょう。
旅をするにあたっては、無事に帰宅することが最優先ということをお忘れなく。

さあ、あとは読者のみんなも旅程を組んで、長距離の旅に出よう!


さて、今回は普段の旅程の立て方の長距離ツーリング版をご紹介しました。
これから長距離ツーリングに挑もうという方は参考にしていただければ。

次回は忙しい人の列車旅の味方、乗換待ちの間に手短に食べられる駅グルメを特集しようと思ってます。
おそらく盆明け以降になると思われるので、のんびりお待ちください。


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