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2020年11月4日(水)  浅岡雄也 ExtraRareBest 斉田才レビュー

浅岡雄也 Extra Rare BEST レビュー  Text 斉田才

 2020年という年はエポックメイキングな年だった。本来ならば日本は、56年振りの東京オリンピックで沸き、インバウンド需要で景気も上向き、
エンターテインメントも21世紀から丸20年の節目、世代交代と共に
新しいムーブメントの予感として華々しく語られる時代、のはずだった。

 ところが、新型コロナウイルス=COVID-19の出現によって全世界のエポックメイキング年は一瞬にしてネガティヴな意味合い一色の年に
変貌してしまった。

 たった1年間たらずで数千万人が感染し、100万人以上の死者を出した全人類未曾有の脅威、そしてエンターテインメント業界は、沈黙した。

 とりわけ音楽業界はライブ開催が困難になり、アーティストは活動の自粛を余儀なくされた。それは、この記事を書いている今も大きな進展を見せているとは言えない。

 しかし、そんな逆境の中にあっても、アーティストの創作意欲が止むことはない。実際、2020年は、旺盛な作品リリースと素晴らしい充実作品がリリースされた年として後世に語り継がれるだろう。
そんな予感は、僕はしている。

というわけで浅岡雄也、彼もこのコロナ禍にあってその影響をもろに受けたーティストであることに違いはない。

本来ならば、彼にとってはFIELD OF VIEW デビュー25周年イヤーとして
多忙な日々を送っているはずだった。

ところが、そのFIELD OF VIEWは5月に
『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』という
2枚組アルバムをリリースし、衆目を集めることとなったのだが、
残念ながら大規模なライブ活動を実現するには至らなかった。

 ただ、この伏線があったからこそ、今回のソロExtra Rare BESTが実現したのではないか、また制作期間に余裕ができたからこそこのクオリティーの作品が出来たのではないだろうか、と僕は考える。

 「浅岡雄也 Extra Rare BEST」、このアルバムは、FIELD OF VIEW解散後ソロ・アーティストとして活動を続けている浅岡雄也2003年〜2020年までの17年間の軌跡が収録されたアルバムだ。

内容としては、2枚組全31曲というこれもなかなかのボリューム作品だ。2003〜2008年メルダック〜徳間ジャパン時代のソロアルバム七枚とベストアルバム(2008年)の計90曲の中から、ファン投票などを経て選ばれた楽曲21曲に、シングルカップリング曲1曲、セルフカバーした「突然」2020年Ver.、そして2009〜2020年までの浅岡雄也自主レーベルFlyBlueからアルバム代表曲6曲、さらに書き下ろし未発表曲2曲を含む全31曲となっている。

 ちなみに、浅岡雄也のソロベスト作品としては、現在メルダック〜
徳間ジャパン時代のソロベスト「ウタノチカラ+4〜u-ya asaoka Best Album~」(2008年リリース)とFlyBlueから「u-ya Asaoka Legend Anniversary Fly Blue Best」(2012年リリース)の2作品が既に発売されており、サブスクリプション対応もしているのでこちらの方も記憶に留めておいてほしい。

 というところで、では何故、2020年の今、この
「浅岡雄也 Extra Rare BEST」をリリースする意味があったのか?
 

それは彼が「第三のベストアルバム」の意味と制作方法を見つけ出してしまったからに他ならない。

 通常、ベストアルバムの第一の定義としては、アーティストの既発の代表曲を網羅して年代順に並べてリリースするといった手法が王道である。
いわばアーティストの入門編的な内容であり、このベストアルバムは、当然オリジナル音源で構成されオーディオ的にはリマスタリングという処理が施されるのみである(基本、リマスタリングは各曲ごとの音量バランスを一定に揃えるのが主な役目で、オリジナル音源に音の追加や加工をしていないのが常である)

 ただ、近年リマスタリングであってもデジタル技術の進歩により、そこにイコライジング処理を施したりダイナミクスを付加してよりクリアーで聴感上の迫力が増す音源になったりもして(特にアナログ音源時代のレコーディング作品をデジタル化する場合は効果を発揮する)こういった音源にはリマスター年度をタイトルに付加して差別化を計っている。

 続いて、「第二のベストアルバム」。特長としては、アーティストのいわゆる代表曲の他に、アーティスト自身がこだわった内容の選曲、もしくはファン投票による選曲、シングルのカップリング曲として人気のあった楽曲、未発表曲などを収録したいわばアーティストのファンにとってはお宝的な貴重なレア・ベストアルバムという内容がある。ただ、これも音源に新たに手を加えるということはほとんどない。

 そして、今回浅岡雄也が考案した
「第三のベストアルバム」=「Extra Rare BEST」に注目していただきたい。

これは、先にリリースされた
『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』
でも導入された手法ではある。

選曲としては既発の代表曲はもとより、未発表新曲もシングルカップリング曲も網羅し、さらに1番の特長としてはリマスタリングのみならず、各曲にリミックスを施し、さらに新たにリアレンジして音色を足したりコーラスを入れたりと、音源にも様々に新たな手を加えているという点。そうすることによって、過去の音源がさらに現代の技術でブラッシュアップされ、アップトゥデイトな新曲のような輝きを放ってくるのだ。

 つまり、この今回のベストアルバム、ベストであってまるでニューアルバムのごとき魅力を放つ、まれな作品として完成してしまったのだ。

 今作でもDIsc-1の冒頭から2003年の1stアルバム曲「ripple」
「Re:start」が新たなアレンジと音色で息を吹き込まれたかと思えば、「ヒカリ」や「突然」は2008年Ver.からさらに2020年Ver.へとオリジナルから3世代に渡って変化している。また、「君の翼で」や「アシタガクルマデ アシタハクルカラ」でのリミキサー陣の手腕、リズムトラックが打ち込みから生音に差し替えられた曲もあれば、もちろん未発表新曲の
「これから」と「永遠のメロディー」は歌詞を書き下ろしている。

気になるヴォーカル・トラックも過去の声をそのまま生かしている作品のみならず、新たにコーラスを見直している楽曲もある etc‥。

一聴しただけでは知りえぬ様々な楽曲の様々な箇所に数々の手入れが入っているという贅沢な仕様、これをアーティストの自己満足だと括(くく)ってしまうには惜しいほどのこだわりなのである。(各楽曲のこだわり具合に関しては、本人筆のセルフ全曲紹介を参照にされたし(笑)

 浅岡雄也は、ファンの間ではつとに有名なテクノ・ミュージックの大ファンである。フリークと呼べるかもしれない。故に今回のアルバム・ジャケットにも本人を擬ロボット化したようなU-yaxキャラクターが登場しているわけだが、彼は元々デジタル・ミュージックやDJサウンドに精通した音楽オタクの一面を持っているという事実を知り得てこのアルバムを手に取ると、さらに興味深い作品として今作は浮かび上がってくるだろう。

 DJはもともと既存の音楽をミックスしたり音色を変えたり加えたり繋げたりしてオリジナルな音源を作り上げる。そういったDJ、もしくはクラブサウンドの手法を自らのベストアルバムに持ち込んでリリースしてしまうこのベストアルバムの発想は、まさに浅岡雄也のオリジナルと言えるのではないだろうか。

 ただ、困ったことに発想が斬新すぎて、私は今作を一体誰に売り込んで聞かせりゃいいんだ?という疑問にぶち当たる。もちろん、今までの浅岡雄也ソロ作品を熱心に聴き込んできたコアなファンなら間違い無く飛びつくだろう。ところが、これが浅岡雄也ソロの入門編か?というとビミョーな感覚もあり、かといってただ、レア、コアファンのためのコレクターズ・アイテムにしておくのももったいない。

FIELD OF VIEWの浅岡雄也だけを知っているリスナーにはどんな感触で受け取られるのだろうか?「有吉反省会」で浅岡雄也を知った若者には、今作はどんな感触で聞こえたりするのだろうか。
なかなかに興味は尽きない。

ともあれ2020年、こんなコロナの年に FIELD OF VIEWとして25年、
ソロとして17年間のキャリアを積んできた浅岡雄也が彼の半世紀と1年の人生の集大成とも言える類い稀なるベストアルバムを2枚リリースしてしまった。これはもうあっぱれというほかないだろう。

 さて、ここから先、浅岡雄也さんはどんな旅に出掛けるのですか?

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斉田様、有難うございましたm(__)m

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