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「若手を抜擢すべし」という勘違い

経営変革が求められる現在、「若手の抜擢は善で、ベテランの重用は悪」という風潮があります。しかし実際は思ったほど若手の抜擢は多くなく、ベテランが重用されています。(なおここで言う若手とは新入社員のような若者ではなく、役職者としての若手(中堅)として話を進めます)。若手を重要なポジションに登用すると非常に象徴的なので、周囲の印象に残るのです。中には、驚きの抜擢・ビックリ起用が大好きな幹部がいて、しょっちゅうそんな人事異動が発令される組織もあります。しかし、それもよく見るとそこまで若いわけではなく、「相対的に若い」という程度でしょう。若返り、新陳代謝は常に少しずつ行われています。その中で一番若いトップランナーが目立っているのです。

ではベテラン重用中心でいいのかというと、決してそんなことはありません。実力を比較して、同レベルであれば誰もが若手起用に賛成でしょう。成果が同じであれば、成長度合いの高そうな若手に期待します。実力(現在の能力)が「若手<ベテラン」の場合はどうでしょう。程度にもよるし、得意分野も異なるので一概には言えません。しかし、M&Aと同様、人材についても割引現在価値(DCF)で考えることができます。簡単に言うと、「残りの会社勤務年数と、会社を辞めるリスクを考慮して、その人材の割引現在価値を想像し、どちらが与えるポストに見合うのか」を考えます。当然厳密に数値化できないので、ざっくりとしたイメージです。毎年稼ぐ(会社に貢献する)利益、残りの年数、退職リスクに応じた割引率。利益→ベテランは大きいけど伸びない、若手は少し低いけどこれから伸びる。年数→ベテランは短い、若手は長い。割引率→ベテランは今さら辞めないので小さい、若手は辞めるかもしれないので大きい。人材のNPB(ネットプレゼントバリュー)を、瞬時にざっくりイメージします。残り10年の50歳と、残り20年の40歳なら、比較的判断しやすいかもしれませんが、そうそう単純ではありません。

結局若手抜擢の是非はケースバイケースということになってしまいます。優秀な若手人材が潰れて離職しては元も子もない。将来の人材成長よりも、現在の利益確保のほうが大切。海千山千の部下たちを統御できるか。などなど様々な検討が必要です。若手抜擢が上手くいかないケースも多い。多様なメンバーのチームビルディングが混乱する場合があります。若手が計算できないのはその部分ですね。まずはプロジェクトリーダーなどから、段階的に任せてもいいかもしれません。「若手を抜擢すべし」というのは勘違いで、正しくは「計画的な若返りを図るべし」ということになりそうです。

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