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混乱期には種を蒔こう

2021年になりました。今までにない複雑な気分での新年を迎えている気がします。先週、記事をサボってしまったので、年のはじめに(とはいえ1週間以上過ぎてしまっていますが)考えていることの整理も含めて記しておきたいと思います。

新型コロナウイルスのこと

昨年から世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。自分は専門家でもなければ論じるべき立場でもないので、感染症に直接関わる話はできるだけ自分からSNSやnoteに書くことはしないでおこう、と思っています。逆に、触れられるだけの情報に触れて、自分なりに確からしい情報を持っておきたいと思い、それなりの量の文章を読みました。

それでいまのところ感じていること。「はっきりしたことは何もわからない」と思っています。これは感染症の推移や終息の見通しということだけでなく、経済的な影響がどこまでのものになるのか、社会の仕組みがどう変わるのか、ということも含めて、確定的なことがほとんど言えない。予測を立てることは大事ですが、可能性の振り幅はかなりあると思っていなければ、という感覚でいます。

ウイルス目線でみると

以前、別の記事でも少し書いたのですが、遺伝子に関する本を昨年何冊か読みました。数冊の本を読んだ程度の知識ですが、遺伝子というのはそれ自体が自己複製を続ける性質をもっていて、生物というのはどうやらその遺伝子の乗り物にすぎない、という見方があります。

ウイルスは生物学的には「生物」では無いらしいのですが、遺伝子を持っています。これを複製、増殖させようとする側からの目線で見てみると、その乗り物であるところのヒトは、分断や混乱を続けてくれていたほうが都合がいい。結束・団結してワクチン開発接種や公衆衛生の徹底などを行う能力を持っているのですから、他の乗り物(生物)に比べてウイルス目線で見るとヒトというのは厄介な存在のはずです。

この記事を書いているいま現在、アメリカをはじめとする大国も含め大変な混乱に陥っています。それは政治的な理由だったり経済的な理由だったりしますが、「ウイルスの遺伝子を生きながらえさせる」という目的から見ると実に都合の良い状況が続いているというようにも見えてしまいます。

戦後の混乱期にも似て

SNSでもさまざまな言説が飛び交っています。いま、そしてこれからの状況を表した表現のなかで個人的に腑に落ちたのは「戦後の混乱期」に近くなるのでは、というもの。
とにかく社会が混乱している中を生きていかなければいけない。「以前の価値観ならやらないこと」あるいは「これまでならルール違反とされること」を、生き延びるために行ったり、逆に「これからの社会」を作るために様々なチャレンジも行われたりする。そういう戦後復興期に近いような状況になっていくのではないか、というのですね。

自分は戦後を直接経験したわけではないので肌感覚まではわかりませんが、親世代が戦後生まれで復興期のあとの高度成長期を生きた年代ですし、うちの祖父は戦争を経験しています。僅かながらその時代の体験談を直接聞いて知っている世代なのですね。

もちろん、社会の状況は全く違うので単純な比較はできません。ただ、例えば大正生まれの祖父からすれば、2020年代の社会がどのようなものになるかを予測するのは相当に困難だったのではないか、と思います。多くの人はただその時代を生き延びるために、その後の時代を作るために必死に動いてきたというだけなのではないか、とも。情報化、グローバル化が進んだ現代では、次の世代、我々の子供世代がどんな時代を生きるのかは戦中世代が令和を想定するようなもの。全く想像がつかない時代になるんだと思っておいたほうが良いと思います。

混乱期に種が多く蒔かれた

ところで、2021年現在の経済を見てみます。たとえば上場企業を例に取ると、戦後と呼ばれる時代に生まれた企業が少なくありません。

Yahoo!ファイナンスで創業年月日が参照できる上場企業を調べてみたところ、3822社ありました。いちおう便宜的に明治(1877~1912)・大正(1912~1926)・昭和終戦まで(1927~1945)・昭和戦後(1945~1955)・昭和高度成長期(1956~1988)・平成(1989~2019)・令和(2019~2020)と分けて、それぞれ何社あるかを見てみることにします。

Yahoo!ファイナンス ー 創業時期

明治 82社
大正 216社
昭和・終戦まで 487社
昭和・戦後 703社
昭和・高度成長期 1150社
平成 1147社
令和 7社

高度成長期以降はまあ多いだろうな、という予測もしていたのですが、戦後に振り分けたわずか10年ほどの間に現在の上場企業が703社もあるのはかなり多い気がしませんか。全体の18%以上にもなります。年間70社平均で、「70年後の上場企業」が生まれています。高度経済成長期は多いとはいえ30年以上ありますから、1年あたりでは戦後期の半分ほどになります。(年代の区切り方は主観で勝手にやってますので悪しからず…)

上場を目指すだけが企業のゴールでは無いと思いますが、現代を生きる我々からすると想像の埒外であろう混乱期に、これほど次の時代への種が撒かれていた、というのは学ぶべきところだと思います。

いまはとにかく種を蒔きつつ生き延びよう

今回は混乱期の例として戦後を挙げていますが、社会が大きく変わるという意味では明治維新でもフランス革命でも産業革命でも同じ。変わるタイミングでそれなりの混乱期があります。

どの場合も混乱期には多くの命が失われたり、不遇な思いをする人が多数でたりしました。しかし同時に多くの種が蒔かれたことも確かです。
蒔かれた種のなかには芽が出なかったものも、実際に花開いたものの何倍もあるでしょう。確定的なことが言えない、この先どうなるかわからない混乱期において我々が歴史から学べることは何か。そのひとつは、「混乱期になる前の価値観から抜け出せなかった人々がどうなったか、は見事に共通している」という点ではないでしょうか。

コロナ禍と呼ばれる状況がどれほど続くかわからないし、その先に社会がどう変わるかもわからない。わからない中で、これまでの価値観では理解できない動き方や、これまでの仕組みの延長線上ではない考え方を持つ人が多く出てくるはず。

それらを否定も肯定もせず、自分も出来る範囲の種を撒くこと。この時代を生きるにはそのような心構えが良いのではないかと思っています。

このような挨拶が挨拶として機能すること自体が混乱期だなあと思うわけですが、みなさん2021年もどうか生き延びましょう。種を蒔きつつ。

そのような話が出るか出ないかわかりませんが、今年もできることをやっていきますMBCラジオ「Radio Burn+」は土曜日18時から生放送。YouTubeライブやRadikoでもどうぞ。次回ゲストは新しい価値観のデザインを生み出し続けている、アパレル・クリエイション M4210 四元真理さんです。


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