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ヤバいサービス「On Zoom」についてまとめました

先日発表された「On Zoom」はヤバい、みたいな投稿がちらほらTwitterで流れてきて気になったのですが、まだ日本語で解説してる記事少ないので、On Zoomとはなにか、どんな事ができるようになるのかをざっとまとめてみました。

On Zoomとは

オンライン会議システム「Zoom」が提供する新しいサービス。Zoom配信の動画を、有料で販売できる仕組みになっています。

すでに公開されているβ版のマーケットプレイスを見ると、エクササイズ系の動画や料理レシピ、ピアノなど楽器のレッスン、朗読、ヨガ、自己啓発系のセミナー的なもの、などなどが並んでいます。価格は無料~10ドルくらいまでのものが多い印象。

動画配信を行う側は、1回限りの単発配信として販売することも、サブスクリプション(月額課金)で定期的な配信を行うこともできます。

何が新しいのか

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大以降、対面のイベントやセミナー、ライブ活動や教室などが実施しにくい環境になり、これらの代替としてオンライン配信が盛んに使われるようになりました。

動画配信プラットフォームとしては、2020年現在ではYouTubeが最も知名度もあり、YouTubeライブを使う例が多いと思います。ただし、無料で配信する場合は良いのですが、その配信から収益を得ようと思った場合、YouTubeの視聴URLを別の販売プラットフォームで販売したりすると利用規約に抵触する可能性がありました。

配信側が取れる選択肢は次の4つくらいでしょうか

(1)YouTubeスーパーチャット(いわゆる投げ銭機能)を使う → チャンネル登録者が一定数以上必要で、誰でも使える機能ではありません。投げ銭する側は100円から任意の金額を送れますが、あくまで視聴者に委ねられており収益の予測が立てにくい、などの問題も。

(2)YouTubeで無料配信 → あくまでプロモーションや関係性構築に軸足を置いて無料で実施。YouTubeチャンネル登録者数を増やして広告収入を得る、いわゆるYouTuber的な方法や、関連商品などを動画でPRし別サイトでの販売につなげる、など。

(3)YouTube以外のプラットフォームで配信、視聴チケット販売 → 現実的には最も収益化が行いやすい方法かと思います。Vimeoなど利用規約上、有償での配信を認めているプラットフォームを使用し、視聴チケットを販売。

Zoomはどちらかというとオンライン会議システムとして急速にユーザーを増やしています。もともとオンラインセミナーの機能もあったのですが、On Zoomでは動画の配信から収益化までを、Zoomのプラットフォームだけで完結できる、という利点があります。

すでにZoomのユーザーは世界中に広がっていて、今年に入ってからは1日に3億コール以上の通信が行われているそうです。これだけ普及したプラットフォームを使って、動画の配信から収益化まで一括して行うことができるというのは、配信側だけでなく視聴者側にとっても、いったん別サイトで視聴チケットを購入するなどの手間もなく、画期的だと思います。

どんなことができるように?

音楽のライブや演劇などのオンライン配信がまず想定できるところです。先日、BTSのオンライン公演を世界中で99万人が視聴し46億円超もの売上を上げたのが話題になっていましたが、いかに人気があるグループでもこれだけの規模の公演を1回で実施するのはオンラインでなければできないことです。こういった公演もOn Zoomで行われる例が増えてくると思います。

ただ、使い方として想定されているのはもっと小規模、個人規模の配信ではないでしょうか。楽器のレッスン、料理やヨガなどの教室、個別指導塾などもOn ZoomであればZoomのプラットフォームだけで可能になります。

YouTubeや既存SNSはプロモーションとして無償で行い、収益化はOn Zoomで、といった使い方が想定されます。サブスクリプション課金が出来るのでオンラインサロン的な使い方、ファンクラブ的な使い方もできるでしょう。Zoomが急速にこれだけ普及した環境は、小規模な配信者にとっても追い風と言えます。「新しい生活様式」を踏まえた、新しいビジネスモデルへの移行をZoomが後押ししてくれる感がありますね。

Zoomは急速な成長を遂げ、インターフェースや機能の改善、追加を続々と行っています。普及率だけでなく画質、音質のなどの機能面からも「ライブ配信+収益化」というジャンルではベストソリューションになると思います。

どうやってやるの?

公式に掲載されている、ホストになる方法を見ると現状では有料プラン(Pro、Business、Enterprise)の契約が必要なようです。接続数などもプランに依存するので、どの規模での配信を行いたいかでプランを選ぶと良いと思います。

また、2020年10月現在では英語版しか用意されていません。ただ続々と新機能のアップデートが行われるZoomのことなので、日本語版の用意もそのうちされるのではないでしょうか。

もちろん、必要なものはこれまでのZoomと変わりません。カメラとマイク、あるいはそれらを内蔵したスマートフォンやタブレットということになります。

今後の可能性を勝手に予測

今回のOn Zoomのリリースを見ると、Zoomは単なるウェブ会議システムではなく、コロナ後の世界に対応したコミュニケーションやビジネスのあり方をリデザインすることに取り組もうとしているように感じます。以下は勝手な予測ですが、例えば、

ライブコマース対応 → 商品紹介を行う配信の中で、直接商品を購入できる仕組みは今後ありそうな気がします。既存のEコマース事業者を組み込む形になるか、それとも自社でやってしまうかもしれません。

自然災害対応 → 日本のみならず、世界中を気候変動に伴う自然災害が襲っています。配信と収益化、というプラットフォームは、災害の現状をリアルタイムに伝えることと、被災地や被災者を支援することを同時に行うことに向いています。社会のリデザインという意味でありそうな方向です。

クラウドファンディング支援 → 資金調達方法としてはすでに市民権を得た感のあるクラウドファンディングですが、クラウドファンディングのプラットフォーム事業者も乱立していて、少しずつ仕組みや手数料が異なるため適切なやり方を選べるかどうかで結果にも違いが出てくる状況になっています。クラウドファンディングの設計やプラットフォーム選定などにコストをかけなくとも、Zoom配信で速やかに資金調達、という流れは今後ありそうな気がします。

ニュースタイルのネット放送局 → ネット放送局的なものは2005年くらいからいくつも実験的なものが生まれていますが、収益に関してはほぼ広告収入に依存する方法が主流でした。On Zoomの使い方として、直接視聴者から収益を得られればまだ面白い形のネット放送局が出てくるのではと期待しています。ネットだけでなく既存の放送局のビジネスも変えるかもしれません。

まだ使用例が限られているので未知数のOn Zoomですが、いま最も勢いのある企業のひとつが本気でリリースしてきたサービスのように思えます。今後も最新の動向をチェックしていきたいと思います。

参考にしたサイト
On Zoom Host Getting Started(ホストになるには)

Zoom will start letting people host online events with paid admission(CNBC)

【Zoom新機能】OnZoomはオンラインイベントの新たなマーケットプレースだ(1/2)(the bridge)




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