少しずつ書評を書いていくその1『コールドスナップ』

舞城王太郎って知ってますか。ぼくにとっては『阿修羅ガール』を読んでちょうどいまみたいに改行のないくだらない感想をmixiに書いて以来、常に気にかかる作家の一人なんですがみなさんご存知ですか。ノーベル一行目賞があったら確実にあげるね、ぼくだったら、って作家なんですがどうでしょう(ちなみに冒頭は「減るもんじゃねーだろと言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。 返せ。」)。そんな彼(なのか彼女なのかすら知らないけれど)が初めて翻訳書を出したとのことで試験帰りのぼくはそのほか14冊くらいと一緒に有楽町の交通会館の本屋さんで買ったわけです。その名も『コールド・スナップ』。帯のママ書くと「サノバビッチとジャンキーまみれのファックライフ」についての短編小説集です。まあこれはすごいです。なにがすごいってたぶんトムジョーンズの小説を唯一訳してる(エッセイは村上春樹も訳してる)岸本佐知子女史がこれまた帯に書いてるとおりなんだけど息遣いがまさに舞城ワールドでございます。って書いたけど柴田元幸大先生が訳してるみたいですねそっちも読もう。まあもうね舞城王太郎が翻訳というていで出しちゃったんじゃないかと思ってます。だいたい最初のページが「クソったれのボケってなもんだ。」から始まって最後「ヘイ!」つって終わるってどういうファックライフなんだろうか。舞城のもっとも優れている点はその疾走感と息遣いだとして次点はオノマトペだと思うんだ。いまオノマトペであってるよなって思ってググったらフランス語なんですねこれ。最初に書いた『阿修羅ガール』では女子高生が携帯のボタンを押す音を「ニチニチ」って書いてんだ。ちょっとガラケー引っ張り出して押してみてよ、「ニチニチ」っていうから。びっくりした。でももっとびっくりしたのはもうこれ死につつあるオノマトペなんだってことだね。まあそれは置いといて『コールド・スナップ』でも舞城オノマトペ健在です。銃ぶっ放す音は「ボワラ!」だし「ナイフでバリバリ」やられちゃうし。ボワラはフランス語かもしれんね。それからやっぱり改行が少ないのが好ましいよ。どこが読みどころかなんて関係ないんだその全てが長い潜水中に鼻から溢れる空気みたいなもんだから。ただただ呼気の泡なんだ行間もクソもへったくれもねえ。10作ある短編の中では《流砂》が好きですね。「ダイレクトメールの天才魔術師アドマジック」がゲロ下痢まみれで親指は腐りかけてて、すげえ綺麗なおっぱいのラーズに夢中になる話。そのほかジャンキーが本当の親友と恋人との狭間で悩んで天国にたどり着こうとする《私を愛する男が欲しい》もおすすめです。そんなこんなで今回も書いているうちに飽きてきたのでやめます。ぜひ読んでくださいあけましておめでとう。

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