【今さら聞けない…】PCR検査の"PCR"って何??
新型コロナウイルス感染症の検査としてここ数年でよく耳にするようになった"PCR"。
皆さんはこのPCRって何だかご存知ですか?
え?
「そんなの知らなくてもいい?」
確かに知らなくても困りません。
なので、ここから先はちょっと雑学として
よく聞く"PCR"とは何なのか知りたい方はご覧ください。
そもそも、特定のウイルスに感染しているかしていないか、つまり検査の結果が陽性か陰性かというのは、何を基に判断するのでしょうか?
結論から言うと、新型コロナウイルスのPCR検査では、
新型コロナウイルスのRNAがあるかどうか
で判断しています。
はい。。「RNAって何!?」ですよね。
ここでは、
"DNAと構造が似ている物質"くらいで理解してください。
DNAはあれです。遺伝子情報とかを持つ、
二重らせん構造のやつです。
今回の記事のサムネのやつです。
"二重らせん構造"とか中学で習いましたよね。懐かしい。。
とにかく、検査によって
"新型コロナウイルスのRNA"が検査を受けた人の唾液などに含まれていると判断されれば陽性、含まれていないと判断されれば陰性、という結果が出るわけです。
ということで、検査では、
その人の唾液などに"新型コロナウイルスのRNAが含まれているかどうか"を調べたいわけですが、なんと困ったことに、
普通は、少量の唾液から特定の(ここでは新型コロナウイルスの)RNAを見つける
というのはかなり難しいです。
そのため、見つけやすくするために、特定のRNAを増やしたいと考えます。
例えば、たくさんのトランプの山の中に
"数字の5のカードが入っているかどうか"を知りたい場合、
①100枚の中に1枚だけ"5のカード"が入っているとき
②100枚の中に10枚"5のカード"が入っているとき
どちらが判別しやすいでしょう?
もちろん②ですよね。"5のカードがあるか無いか"だけわかれば良いので、そりゃ5のカードがたくさん入っていた方が見つけやすいです。
これと同じ考え方をするのが、
PCR検査です。
PCR検査では、"新型コロナウイルスのRNA"を増やして見つけやすくすることで、検査を受けた人が"新型コロナウイルスのRNAを持っているかどうか"がわかります。
しかし困ったことにPCR法では、
DNAは増やせても、RNAは増やせない
んです。(*表記に語弊がある可能性あり)
なので、一旦"RNAをDNAに変換する"という過程を踏みます。
…ついてきていますか??
ここまでをおさらいすると、
①検査では、新型コロナウイルスのRNAの有無を調べたい(これで陽性or陰性の判定)
②しかし、微量の唾液などでは特定のRNAの有無を判別するのは困難
③だから、見つけやすくするために特定のRNAを増やしたい
④しかし、PCR法ではRNAは増やせない
⑤だから、一旦RNAをDNAに変換して、PCR法で増やせるようにする
という考え方です。
ということで、やっとPCR法の説明です。
細かく説明すると生物学のかなり難しい話なので、ここでは簡単に。
ズバリ、PCRとは、
Polymerase Chain Reaction
(ポリメラーゼ連鎖反応)の略です。
ポリメラーゼ とは、
DNAやRNAといった高分子物質(ポリマー)を合成する酵素(接尾語-ase)のこと。
DNAを合成する酵素はDNAポリメラーゼ、RNAだったらRNAポリメラーゼという風に合成する物質によって呼び名が変わります。
PCR法ではこれが連鎖して反応していくわけです。
では、"連鎖して反応する"とはどういうことでしょうか?
先述したように、PCR法ではRNAは増やせません。
なので、"RNAをDNAに変換する"過程が必要です。
ここで開発された技術が、
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
(Reverse Transcriptase PCR)
というもので、略してRT-PCRなどと呼ばれます。
まぁこれは置いといていいです。
何はともあれ科学者の力で
"RNAをDNAに変換する"ことができました。
次はいよいよ見つけやすくするためにDNAを増やす行程です。
これも先述しましたが、
DNAは二重らせん構造をしています。
これが実は大切です。
難しいことは抜きにしますが、PCR法では、
このDNAの二重らせん構造を分解し、
一本ずつにします。
上の写真で言えば、赤の一本と青の一本に分解されるわけです。
ここで、ポリメラーゼの出番です。
今回はDNAを合成するDNAポリメラーゼ
という酵素を使います、
DNAポリメラーゼによって、
先程二重らせん構造を分解して出来た一本ずつのDNAの片割れから、新しくDNAを合成します。
DNAは相補性という性質から、
二重らせんのうち一本鎖が決まれば、それに対応したものが出来ます。
例えば、DNAの二重らせんをA-A'とすると、
分解して「A」と「A'」にしてそれぞれで新しくDNAを合成しても、
「A」には「A'」が合成されて「A-A'」に。
「A'」には「A」が合成されて「A'-A」になるので、結局同じものが2つ出来ることになります。
つまり、
二重らせんのDNA(A-A')から、
一本ずつに分解して再合成することで、
同じDNA(A-A')が2つ作られるのです。
あとは、これの繰り返しです。
2つ出来たDNAは、それぞれ分解して再合成の元となることが出来るので、
1つのDNAから、
↓
2つ
↓
4つ
↓
8つ
↓
…
というように、2倍ずつ増えていきます。
これが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の
"連鎖反応"にあたる部分ですね。
そしてこの連鎖反応によって、
DNAの指数関数的増加が出来ること
がPCR法のすごい所なのです。
皆さん一度は電卓で、1×2×2×2×2×2×2…と打ったことがあるのではないでしょうか。
PCR法はこの考え方で、ものすごいスピードで特定のDNAを増やすことができるのです。
ということで、ものすごくDNAを増やしました。
あれ、何のために増やしたんでしたっけ?
…そうそう、見つけやすくするため、ですよね。
この増やしたDNAの中に、新型コロナウイルスのRNAを基にしたものがあれば、
「あ、これは新型コロナウイルスのやつだ!」
と見つけやすくなるので、検査を受けたときに
陽性か陰性か、判断が出来るわけですね。
簡単に説明すると、こんな感じです。
もっと詳しく知りたい方は是非ご自分で調べてみてくださいね。
また、何事も情報リテラシーが大切です。
この記事の内容も"完全鵜呑みで信じる"ことは危険です。
時にはわからないこと、気になったことは自分で調べるという姿勢も忘れないようにしましょう。
そして、ここまで読んで、気づいた方もいるでしょう。
そう、このPCRという方法、
元々は新型コロナウイルス検査のためのものではないんです!
PCRというのは、ただの
"微量な試料からDNAを短時間で効率良く増幅させるための方法"でしかないんです。
今でこそ、
新型コロナウイルスのおかげでと言うべきか、
"せいで"というべきか、PCRの知名度は上がりましたが、
元々は1983年に開発された方法です。
PCR=新型コロナウイルス検査のこと
と思っていると恥ずかしいですので、お気をつけくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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