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変化が求められる

 先週、いやもっと前から。山口新聞朝刊に、公務員の人事異動が紙面をびっしり埋め尽くす。地方紙あるあるなのだ。Uターンして10年が過ぎ、3月終わりの風物詩にようやく馴染んできた。

毎年思う

 人名や部署名に誤字は禁物。これを校正する方は目を悪くしないだろうか。そうじゃないのかも。異動を発表する自治体の人事部が原稿を作るはずだから、そこの担当者は血眼になって漢字を追うに違いない。

 ところで、公務員の人事異動は紙面公開が義務なのだろうか。知らないので調べてみた。国家公務員法と地方公務員法に公開規定は見当たらない。情報公開法も同じ。つまり、知りたい読者、市民がいるから新聞社は印刷して情報を流す。公務員の個人情報保護より、公益に属す故に情報公開は妥当の審判が下るのだろう。

 個人的な話だが、この手の情報は見ない。ただし、里山ステーション俵山もヤマネスタジアム俵山も長門市の所有物件で、管理を委託されているから、関係部署の担当者の人事は見る。中学校のスクールバスは、仕事の話しがストレスなくできるため、異動しないでくれと願いながら担当教諭の名前を探した。この手の情報は見ないと言っておきながら、しっかり読んでいる。こんな読者が多いから掲載されるのだね。

 3月の異動記事ではないが、先月だっただろうか、やはり山口新聞の社会面、眺めていると見覚えのある名前があった。新聞の活字って小さいのに、よく見つけたもんだと不思議な感覚を覚えている。阿武町教育長に任命の報道。二個上の先輩。ここではなるさんと呼ぶ。
 なるさんは高校野球部の主将で私は1年坊だった。高校時代などお話ししたことない。野球部の3年生と1年生の関係は、45年後の現代とかけ離れていた。大学に入ったら3年生になるさんがいた。知らなかったのである。同じ高校からこの大学に進む同郷先輩は他にもいたけど、なるさんがいて、副主将のこめさんもいた。なんだ、ふたたび高校野球部じゃないかと、ワームホールの存在を確信した。後年、量子物理学に興味をもった原因のひとつじゃないかと追懐する。大学生になった先輩はフランクで、よく遊び、同じところでバイトした。なるさんたちの卒業後は、消息を追えなかった。わたしが田舎を離れ、東京で働きだしたから萩と結ばれた未知のトンネルは消えたのだ。それから40年経って、山口新聞で知ることになる。

 異動の記事を前にして、読者が感じて考えることは種々雑多に違いない。民間企業は社長以上の人事が載るが、公務員は公益に照らし合わせて人事が開示される。短期間で異動を繰り返す目的は、不当な利益供与を受けないとか、癒着の指摘を回避するためとされる。それは醜い時代錯誤。地方の時代が叫ばれて久しく、人口減少が恒常化した社会。教職も公務員もスペシャリストが求められる。その部署で、その学校で、その土地で人間関係を結び、信頼を得て職務の熟達をなすには長い期間を費やす。教え子が大きくなり、同じ学舎で教鞭を競う日が来れば素敵じゃないか。こちら側の見解だが、3年間で農協、市役所、農林水産事務所は担当が代わるのだから、同じことを知らせなくてはならない。そこまでの会話や通話などのログは残っても、雰囲気だとか表情の変化だとか、記録できない記憶データを活かす機会を失う。高く積まれた人間関係ほど高価なものは無いと思うんだけど。