壁の絵の濤みどりなり春嵐 石田波郷

春の嵐は、冬の西高東低の気圧配置がくずれ、低気圧が東海上に抜けるときに吹く南寄りの暖かい風で、不安定な春の気象現象である。まるで台風のように怒り狂い、ごうごうと唸り声をあげる。いったい何事か。耐えられそうにない。胸騒ぎがする。ところが、のど元過ぎればなんとやら。台風一過の清々しさにほっとする。台風のミニチュア版で、心のどこかで安心しており、無事に通り過ぎるのを傍観者の立場で静観している。

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