切々と翅擦つて鳴く虫ならむ 鈴木貞雄

盆を迎えたあたりから、まだ暑かろうがおかまいなく、太古から続く命は切々と営まれ、大気を劈き意気揚々と歌い出す。この生命力の逞しさに圧倒される。二枚の翅を擦り合わせ、子孫を繋ぐべく切々と訴える。生まれてきた使命を全うするために全身全霊をかけて鳴く。夜明け前、位置に着いた一日が始まろうとして息を潜める中、自然と共鳴しながら鳴く。生きているのを慈しみ謳歌する。私は凛として翅を擦り合わせて鳴く虫であろう。

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