冬濤のおそひくづれて島かくる 水原秋櫻子

海が荒れている。寄せては返す海の波は緩急あり、刻々と変化して千変万化に変貌する。その最も高揚する瞬間を捉え、臨場感に溢れる。沖から襲いかかるすさまじい潮けむりとなって遠くに見える島をすっかり覆い隠してしまうのである。自句自解に次の記述がある。「濤に耐え、島は毅然として灯台をささげている。その雄々しさは、しばらく見つめていた私の頭に悲壮な感激が湧いてきたほどである。」波が去った後に焦点がある。

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