夏逝くや油広がる水の上   廣瀬直人

夏が逝こうとしている。40℃をめざす勢いのある暑さだった。体温越えに挑戦する異常な暑さは、外界との区別を脳が判断できずに熱中症を引き起こした。古代よりその土地で育った環境に慣れてきた体内メカニズムが狂うのも当然。火をつけたらたちどころに燃え上がるような危険な暑さを伴う夏が、水の上に広がり薄められていくようだ。ようやく峠を越したのである。水面に広がる模様が、暑さに逃げ惑う人々の苦悩のように思われる。

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