かなしみのほのと温くもる日向ぼこ   吉屋信子

悲しみは人それぞれにある。老いならば老いてあるなりに、若いならば若さゆえに、それぞれの悲しみを背負う。その悲しみを一つずつ解き明かしながらまた新たな悲しみへと向かう。うろたえ悩み傷つきながら遠く尊い人格を目指す。人は一人では生きられない。寄れば必ず摩擦が起きる。互いに突き出る棘を切磋琢磨して丸くする。悲しみが一つ消え温もりが感じられる。生きる悲しみの分だけ、人は温もりをしみじみ味わうことができる。