寒の雨枯れたるものの華やげり 右城暮石

寒に入り、枯れ切った野山が一層寂れてくる。ささくれだった無残な姿に身も心も凍てつくようだ。こうした自然の織り成す厳しい姿に、ほのかな安らぎを見いだした。雨に打たれた姿が艶やかに見えてきたのだ。水分を得て、蘇るはずもない草木が、まるで生気を帯びて生き返ったように見えた。しかし、それは本当の姿である。地面に落ちた水滴は土に吸収され、根から草木に吸い上げられている。春の芽生えをいち早く察知している。

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