中天に白き沸点花辛夷 伊東芙美子

見立てがいい。辛夷が固い蕾から白い花びらをのぞかせはじめ、日に日に少しずつふっくらさせてくる。辛夷がため込んだ春の息吹きをふっと吐き出すように純白の花びらを開かせる。その様子が、水が熱せられて沸騰するようだと捉えた。誠に見事である。だんだん水の温度が上昇するにつれ水の分子が振動し、液体から気体が生まれぷくっと吐き出される。しだいにたくさんの空気が真ん中あたりからふつふつと生まれ出てくる。

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