畑打の背になつなつともの問へり   戸田和子

畑は孤独な作業であるが、少しも淋しさを感じさせない。大自然の息吹きを肌に感じ、生きているという実感に震える。太陽光は黒々とした土をまず温め、微生物たちを目覚めさせる。地上の梅や桜が動きだす前に、地下が先に動き始めている。土に蠢く生き物たちは、彼岸にはすでにピークに達する。夏も近づく八十八夜とは、人の体感を測る基準値で、地表ではすでに夏である。夏が来た歓びの声を太陽光をいっぱいに浴びる背が同意する。

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