君のかけらを拾い集めて

汐見夏衛 作

ーああ、また夢から覚めてしまった。

私は今日も、目覚めた瞬間に絶望します。彼のいない世界に戻ってきてしまった、と。

私の最愛の人がなくなりました。病気が分かってから半年も経たないうちのことでした。彼は私の目の前で、永遠の眠りについたのです。

その瞬間に、私の世界は終わりました。

彼は私の全てでした。私の世界は、彼と出会った瞬間に始まり、彼を亡くした瞬間に終わりました。

これからも、まだまだずっと長い間、ふたり一緒で居られるはずだったのに。誰よりも優しい彼の隣で、誰よりも幸せに過ごせるはずだったのに。

私は絶望に打ちひしがれました。悲しくて、悲しくて、どれだけ泣いても悲しみが薄まることはありませんでした。私の気持ちは、世界でいちばん大切な人を失ったことがある人にしか、きっと分からないでしょう。

今までふたりで過ごした部屋は、彼がいなくなってこら、おそろしいほどに、広くなりました。果てしなく続く雪原のように広くて、広すぎて、私はすみっこで丸まって泣くことしかできませんでした

「きみに、涙。」スターツ文庫版 7つのアンソロジー① 連載 続きは書店で


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