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千鳥の常設展

8月は、一年の中でうつわ界隈が一番静まる時です。
お客は夏休みで他の土地へ行き、お店の主も避暑で休業したり。
開いているお店にはガラスが多く並び涼やかさを演出しますが、やはり多いのは焼物。その温かみや力強さという魅力がかえって猛暑の中では客足も遠のかせてしまうようです。
そんな中で休まずに開いているお店があります。水道橋の千鳥は、お盆も東京で過ごすうつわ好きにはオアシスのような場所。
8月は休日なしで営業しているのでいつでも行けるだけでなく、都内有数の広さの店内に充実の品揃えが楽しい店です。

余宮隆さんや増田勉さんのような人気作家だけでなく、他の都内のお店ではあまり置かれてない若手中心の作家の作品も置かれています。
そのラインナップは、明らかに焼物が大好きな人の目線で選ばれたものです。いかにも焼いた、という力強く骨太な焼物と、きりっとした端正で透明感のある焼物と、オーナーの好みを感じます。かつ相当の焼き味を要求しているのでしょう、どれも芯のしっかりした使う上で心強いうつわが並んでいると感じます。
どこのお店もそうですが、焼物が多くてもガラスや木工・漆器もあります。ガラスは手仕事ならではの造形的美しさのあるもの、漆はモダンさのあるもの、とここにも千鳥らしさが出ていると思います。

場所は、水道橋と飯田橋の中間にある日本橋川沿い。水道橋西口からが近いです。

西口を出て首都高が見える方向に入ります。

首都高の下に日本橋川の橋がかかっていますが、その手前のファミリーマートを九段下方面へ曲がります。

右手に見える古めかしい色のタイルのアパートに千鳥が入っています。

入り口も年季があり人によっては躊躇われるかもしれませんが、でかでかと掲げられた看板がたしかに間違いなくお店があることを主張しています。

2階の店舗入口はノブを回すガラスの嵌ったドア。初めて来てガラス越しに店内を見ると、その広さにきっと驚くでしょう。2008年4月の開店当初は半分の広さでしたが、2012年8月のリニューアルで今の広さにグレードアップしました。上の写真の範囲で全スペースの4分の1くらいでしょうか。

千鳥の一番の特徴は、この店内のスタイルです。アンティークな什器や小物と、至るところに飾られたドライフラワー。ヨーロピアンクラシックな雰囲気にうつわが飾られている独特のスタイルです。

その中でうつわたちが埋もれるかといえば、そうではなく逆に環境とのコントラストで存在感を発揮しています。それができるのも、やはりオーナーの柳田さんが選んだ頑強なうつわだからでしょう。
台の真ん中にある花器は稲吉善光さん、右の花器は大江憲一さん、ガラスは西山芳浩さんの作品です。

酒器や漆器が集まる棚。ここはレトロな和の雰囲気があります。

現在は、今月始めまで二人展を開かれていた安土草多さん・田宮亜紀さんの作品が多めに並んでいます。

次回の企画展は9月5日からの山口利江展ですが、それまで毎日開いている常設展も、魅力的で力強いうつわをじっくり見る良い機会です。18時までの開店なので平日は難しいかもしれませんが、週末に独特の店内を味わいに行くだけでもちょっとした旅気分になれます。

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