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稲吉善光展@トライギャラリーおちゃのみず

トライギャラリーおちゃのみずで開かれている稲吉善光(いなよし よしみつ)陶展へ行ってきました。笠間で作陶されている稲吉さんにとってトライギャラリーでの約2年ぶりの個展です。

3月のKOHOROでは椀型の食器が数多く揃いましたが、今回は瓶や大きめの作品が出ていました。

一番大きなこの皿は、きれいなクリアブルーを基調に、稲吉さんらしい奇を衒わないガシッとした形と、窯変によるピンク色が組み合わさって、独特の雰囲気をもつ魅力的なうつわでした。静かでいながら存在感がある、そんな食卓での姿が思い浮かびます。

こちらも林檎灰のクリアブルーの釉がかかった、きれいな花入。鉄粉が飛青磁のような装飾ですが、より土っぽさがあります。そういう山間の雰囲気を感じさせてくれるのが稲吉さんの作品の魅力のひとつです。

白縁の黒いうつわたち。うつわとして使いやすい色なだけでなく、稲吉さん独特の黒はカッコイイ黒色をしています。そして、やはり土の匂いがしてくるような風合があります。

白縁と黒のうつわを作っている時に偶然出た色にインスパイアされてできたのが、この渋い色だそうです。焦げたような黒い部分もあれば地の白色に近い色が出ているところもある、そんなムラの変化に富んだ焼物の面白さをもった質感です。

この色は2年前の個展で初めて使われたようです。その時にもボトル形の作品を見ましたが、この色の魅力を引き出すのに似合いのボディの形だと思った記憶が残っています。ただ同時に、まだ首の部分がおさまる形を求めて迷走しているようにも感じました。

それが今回は形と口縁の色合いが整えられ、きちんと着地に成功したのを感じることができました。ボディの形も2年前同様に素晴らしく、ヒビ粉引と釉の質感のバランスも進化しているのでしょう、それぞれの要素が完成度高くまとまり、日常で使ったらさぞ豊かさを演出してくれそうな頼もしく美しいモノとなっています。

焦げたような黒い色やオリーブ色にも見えるくすんだ釉薬の色から、一見すると暗い印象を与えるかもしれません。ただ稲吉さんのそれは深い森のわずかな明るさや豊かな土壌に通じるものな気がします。日本文化に通底する自然観につながる、日本のうつわならではの現れ。そういう風に考えても稲吉さんの作品は末永く使えるうつわだと思います。

今回は瓶が多く出ているので、いろいろな大きさから選ぶことができます。小さなこの瓶についてトライギャラリー店主の方が「牛乳瓶を思わせる」と言ってましたが、作り手のの性格も含めて、稲吉さんの作品の雰囲気をうまく表しているように思いました。

お碗や鉢も出ていて、形も質感もバリエーションがあります。会期は6月11日まで。稲吉さんの作る形と質感を実際に手に取って魅力を味わえる機会です。

トライギャラリーおちゃのみずの次の展示は、6月19日からの脇山さとみ作陶展。脇山さんにとって関東初個展となります。

トライギャラリーおちゃのみず

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