再びステージに灯りが点くまでの間[2016・11~]

黒沢健一さんの2作のアルバムアートワークについてのテキストを公開しました。

前者は『Focus ─LIMITED EDITION─』というボックスセットに収録されたテキスト、後者は数年前に手を付けたまま放置していた文章を完成させた書き下ろしです。10年ひと昔とよく言われますが、いまは20年前位の出来事すら昨日のことのように思えます(音楽でいえば90年代のマンチェスター・ムーブメント以降)。『Focus』『V.S.G.P』についてはユニークなプロセスで作られたこともあって、自分の中でも特に強く記憶に残っている仕事です。

ご病気を発表されたときは驚きましたが、ご自身の考えを言葉にできる状態のようでホッとしています。なんにせよ、記憶を言葉の形に残していつでも思い出せるようにしておくのは大切なことだと思います。ひとつの言葉に誘われて別の人が、その人の言葉で語り始めるのもまた一興です。再びステージに灯りが点くまでの間、開演前のひとときのようにざわざわと言葉が飛び交う感じで、会場を温めておくのもいいのではないか、と思い、こうして当時の記憶を目に見える形で残しておこうと考えた次第です。

アーティストが残した作品がファンの間でいつまでも語り継がれていくことは、作者本人にとっても大きな幸せだと思います。本や映画、ドラマも同じです。作品やアーティストについて、わいわいと言葉が交わされる場が存在すること自体が、彼やその作品の影響力の大きさを物語ります。黒沢健一さん/L⇔Rのファンは真摯な目と言葉で、アーティストや作品と向かい合っている印象を受けます(同様の例として、自分の観測範囲では、ザ・ブーム、ハロー!プロジェクト、あまちゃん、など)。そのような作品に関われるのは、ファンだけでなく、サポートミュージシャンやエンジニア、写真家、デザイナーなどの作り手の側にとっても喜びなのです。

きのう見てきた演劇女子部「ネガポジポジ」トークショーの感想については、いずれまたの機会に。


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