体幹のうごき
前回は肩甲骨と股関節のうごきをみていきました。今回は、体幹・胴体のうごきをみていきたいと思います。
胴体部分のうごきについては、パッと見て、動いているのがわかりにくいので理解をするのが難しい部分です。
今回は胸と腰と背骨の動きを見ていきたいと思います。
胸のうごき
まずは胸の動きについてみていきます。
おそらく、意識して動かす人はほとんどいないでしょう。しかし、呼吸をする度に胸部は動いています。
運動するにあたりこの胸の動く力も大切な役割を果たします。
体の筋肉の大きさを見てみましょう。
5番目に大きい筋肉が大胸筋です。
この部分から大きい力が出せることがわかります。胸の伸縮する力を利用することにより、腕だけの力では出せない力を加えることができます。
また胸部の動きを見てみましょう。
想像より伸縮することがわかります。
この胸部の伸縮する動きを利用することにより、技に威力を乗せています。実際には全身の筋肉の連動なので、これは一つのポイントになります。
腰のうごき
続いて腰のうごきを見ていきます。
ちなみに武道における腰というと骨盤のイメージがありますが、腰には腰椎を指している場合もあります。普段腰が痛いという場合は腰椎のことを言っていると思います。また、中国武術においても腰(ヤオ)と言うと、腰椎のライン(ウエスト)の動きを指している場合が多いです。
腰椎は背骨の腰あたりの骨を言います。背骨はS字を書いていると思います。これを生理的湾曲といいます。
この湾曲の役割は上半身の重さを分散させるためだと言われます。背骨がバネのようになることでショックを和らげているようです。
腰椎に注目するとこの湾曲部分に重さ(負荷)が集中しているとも言えます。
武道に置いてはこの腰椎の湾曲を少し真っすぐにしてやることで、上半身の重さ(負荷)を下腿で受け止めます。
この操作をすることにより重心がより下になり、安定感が増します。(股関節の屈曲も行わないと股関節が重さを受け止めるので、厳密には股関節の操作も必要です。)
上体についても、脊柱のバネが無くなるので、上半身の上下のブレも少なくなります。
この動画をみるとわかりますが、腰椎を伸ばすには骨盤の後傾が多少必要になります。
ただ、能動的に後傾すると言うよりは腰回りの力を抜き、自然と腰回りがだらっと落ちる感覚の方が無理な負荷が関節にかかりにくいと思います。
背骨のうごき
胸、腰とみていきましたが、どうしてもかかわってくる骨が背骨(脊柱)です。
腰から頭まで貫くこの太い骨を無視することはできません。
主に体のバランスと背骨が生み出す力が重要になります。
まずバランス面では、この体の大黒柱ともいえる骨で、脊柱が傾いていることがどれだけ不安定な状態か想像できると思います。
頭部の重さを知っていますか?体重の7%くらいを占めるそうです。
50kgの人であれば3.5kgほどあることになります。
自然な形では脊柱に頭部が乗っていますが、頭部が前に出ている人が多いと思います。その分、頭の重さを支えるのは骨格ではなく、筋肉で無理に支えることになります。
頭部をすっと上に伸ばし、腰から力を抜き、脊柱が上下にすっと伸びるように整えます。
背骨が真っすぐになるということは、バランスが良いので倒れにくくなります。
体重の比率について参考↓
また生み出す力に注目すると、背骨のバネのように伸縮する力を技に利用します。プラスチックの下敷きや定規を反らせて手を離したときに、勢いよく戻る様なイメージです。
背骨の伸縮が良くわからない場合、立った状態から猫背になりながらお辞儀をして、元に戻ると感覚が掴みやすいかもしれません。背骨の伸縮がなければ、このような動きはできないからです。
胸の動きにも繋がりますが、胸椎の動きをみてみましょう。
胴体の作り出す力はとても大きいです。
胴体の力を腕や足に伝えられるように武道は練習していきます。(胴体の力を使わない技もありますが。)
力を伝えることをいきなりできるようになるのは難しいので、まずは、胴体の可動する部分の確認することと、意識的に動かせるかを試してみると良いです。
まとめ
これらの体を動かす技術は武道に現代まで伝わっています。
古い武術の持つ技術はトライアンドエラーの結果、効率的な方法が受け継がれているのだと思われます。
意味がないことを数百年も伝え続けるでしょうか。使えたから、意味があったから残ってきたものがたくさんあります。最新のモノは良いですが、忘れられてしまったものもあります。
武術の技術は数百年の間、受け継いできた人達の創意工夫が詰まっています。
意味がわかってくると、とても一人の人間が一生の間で思いつくようなものではないことが理解できると思います。
はるか昔から続く歴史の折り重なりを体感するのはとても感慨深いものがあります。
もし、武道に限らず、伝統文化に触れる機会があれば、その文化の背景を浮かべてみると良いと思います。
古くて新しい発見があるかもしれませんよ?
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