心を強くする狎れ
世間がこうして大騒ぎの今、どんな心持ちであるべきだろう。
これは危機・有事の心構えをこれまで怠ってきた自分を反省するとともに、改めて今どういう内面を養うべきか、考えていた。
やはり心の鍛錬といえば侍かと、山岡鉄舟の言葉に求めていましたら、「心胆錬磨の事」と題してこんな一説がありました。
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では、どのようにすれば肝を剛毅なモノにすることが出来るのか。
まず第一に思念を生と死の間に潜めてしまうこと。(中略)次に、
経験と鍛錬によるのである。つまり、いつも自分がいちばん恐ろ
しいと思っているものに接近して、これに狎れてしまうことだ。
『剣禅話』 山岡鉄舟
https://ux.nu/sudU0
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自分がそもそも恐れていることが起こりつづければ、はじめは恐れおののき、うろたえてしまうもの。
山岡鉄舟はさらに続けます。
「肉体はおののき、精神は震え、普通の精神状態は吹き飛んでしまうかもしれない」
自分の鍛錬を考えるとここまで追い込まれることすら、必要だ、と。
今の世情はどうでしょう。
ウイルスのリスクに恐れ、自粛で気分が落ち込み、ここからは経済状況が悪化するかも、と、さらなる精神的負荷がかかってくる気もします。
次々に迫り来る恐れは多種多様。
いっそそういう度重なる波になれてしまえば、どうってことない、というのは侍の頃から変わらぬ真理のようです。
どっしり構えて、死を覚悟して向き合うこと。
そして狎れることなんですね。
まだまだ鍛錬が必要だな、と猛省。
ところで、鉄舟は「狎れろ」と書き、
「慣れろ」とは書いてない。
狎:声符は甲(こう)。
上に「犬は(なら)すべきなり」と、
犬の飼養しやすいことをいう字とする。
慣:声符は貫(かん)。
貫は貝を貫き綴った形で、前後相連なる意がある。
代々住みつく地を本貫、その家がらを旧貫、
しきたりを貫行・貫習という。その心情を慣という。
※「字通」より
なるほど。
恐れというのは、犬を飼いならすように、心にならすものなんだ。
これが、今の世情を乗り越えるヒントのひとつかもしれない。
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