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東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から~1~15

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東京の自治体専門紙、都政新報に掲載されたイラストエッセイを再録しております。テーマを都バスから都営交通全般に広げました。
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記事一覧

ノンステップからフルフラットへ【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から15】

 一昔前の都バスと言えば出入り口に段差のある車両が当たり前であり、高齢者や障害を持った方にとって、バスとは必ずしも利用しやすい乗り物であるとは言い難かった。  交通局として初となる出入り口に段差のないバス、いわゆるノンステップバスが営業運行を開始したのは1997年のことである。2013年度までにすべての路線車のノンステップ化が完了したが、その後もさらなるバリアフリーを目指して挑戦は続いている。東京都が16年12月に策定した「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年

イチョウのバスを見るはずが【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から14】

 交通公園とは、一言で言えば「交通ルールを学べる公園」。園内には模擬的な道路とともに信号機や交通標識が設置され、子ども用のレンタル自転車やゴーカートが用意されているところが多い。交通遊園・交通施設など、自治体により名称が異なる場合はあるものの、同様の施設は都内に20以上ある。交通公園は、公道から隔てられた安全な場所で交通安全の基礎を学ぶには、好適な環境と言える。  葛飾区にある新宿(にいじゅく)交通公園。鉄道駅からはやや離れているが、JR金町駅から都バスの草39系統を利用

ブルーシートの海原を【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から13】

 恩賜上野動物園は1882年に開園した日本最初の動物園である。東京ドーム3個分の広さを誇る園内では、東園駅と西園駅とをモノレールが結んでいる(東園と西園間は徒歩移動も可能)。上野動物園モノレール……正式名称上野懸垂線は、1957年に開業した、鉄道事業法に基づく日本最初の営業用モノレールであり、交通局が運営している。  JR上野駅の公園口から徒歩5分ほどで動物園の表門に到着。ジャイアントパンダやゾウ、ニホンザルなどの獣舎を横目に進んでいくと、モノレール東園駅が見えてくる。自

視界の先で時間を刻む【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から12】

<筆者が愛用しているセイコー製の鉄道時計SVBR001。真鍮にクロームメッキが施されている。現在発売されているSVBR003はSVBR001の後継モデルで、ステンレス製である。>  子どもの頃、鉄道の運転士に憧れていた。鉄道に乗る時には必ず先頭車両を選び、きびきびとした指差喚呼、ガラス越しに見える頼もしい背中、発車・停車時の緊張感など……。  専門的なことは分からなかったが、子どもながらにその姿は「きちんとした大人の姿」として、私の心の中に刻まれていた。運転士の背中の先

都電と人魚が共存する場所【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から11】

<東京都北区の飛鳥山公園に静態保存されている都電6080号車と公園遊具の人魚。6080号車は昭和24年(1949)に製造され、53年(1978)3月まで営業運転していた。人魚の像の設置時期は不明だが、これまでに何度か塗り替えがされたようである。>  先日、北区飛鳥山博物館の秋期企画展『都電の記憶』に足を運んだ。王子出身の元フリーカメラマン西山英明氏による、北区ゆかりの路線にまつわる80点の写真は圧巻で、車掌がいた頃の都電を知らない私でも、当時の雰囲気を体感することができ

初日の最初のバスに乗る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から10】

<豊洲市場待機所に待機する都バスと、停留所に向かって動き出すA-S692号車>   都バス市01系統については、築地市場に乗り入れていた当時にもエッセイを書きました。『市場のバスはゆっくりと。【ゆっくり動く乗り物で~都バスの走る風景3】』もあわせてお読みいただければ幸いです。   10月11日の午前4時40分、私はJR新橋駅銀座口付近にいた。都バス市01系統、豊洲市場行きの始発に乗車するためである。日の出前の停留所には15人ほどのお客様が並んでいた。竹かごや発泡スチロー

埠頭に猫がきちんと並ぶ【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から9】

晴海客船ターミナルの都バス待機所で休息するバスとネコ(巨大化) ネコを大きく描いた理由につきましては記事をお読み下さい。 ※モデル:カフェモフリー(東京・大泉学園)の看板ネコ、ナツ先生。  東京港晴海埠頭は、国内外の豪華客船が寄港することで知られている。南極観測船「しらせ」が接岸する港でもある。いわゆるSNS映えも良く、レインボーブリッジの夜景や水面に映る高層ビル群を美しく撮影できるので人気が高い。<br /> 晴海埠頭の晴海客船ターミナル周辺では、毎年5月には「東京み

金太郎塗りの人気者「一球さん号」【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から8】

<都電荒川線6152 一球さん号> 荒川区立あらかわ遊園に静態保存されている都電6152号車、通称「一球さん」号。2000年まで運行されていた。 ※あらかわ遊園はリニューアル工事のため、2021年の夏頃まで休園中です。  都電荒川線の「荒川遊園地前」電停から3分ほど歩くと、23区で唯一の区営遊園地、あらかわ遊園がある。その入り口付近に静態保存されている車両が都電の6152号車、通称「一球さん号」である。  戦後間もない1947年から290両製造された6000形車両の中で

最後のバスとオムライス【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から7】

<都バス最後の新7E K468号車のラストラン> 2018年1月27日にラストラン運行された、都バス最後の新7E、北自動車営業所所属のK468号車(KL-UA452KAN)。 ラストランとしてふさわしく、LEDの行先表示も特別なものが用意された。 ※イラストでは公道上で走行中のバスが特別な行先表示を出しているように描いておりますが、これはデザイン上のものであり、実際の営業運行では通常の行先表示になっていました。豊島五丁目団地での待機中などに、特別な行先表示に切り替えていた

額縁越しに安全を見る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から6】

<日暮里・舎人ライナー330形車両> 2015年10月に営業運転を開始した日暮里・舎人ライナーの330形車両。従来の300形車両とはデザインが大きく異なり、異彩を放っている。  子供のころ、鉄道関係の職業に憧れた。運転士をしていた親戚に乗務ダイヤを教えてもらい、彼の働く姿を乗務員室の仕切り越しに何度も見学しに行った。普段は「冗談好きなお兄さん」として認識していた親戚の姿が仕事に入ると突然きりっとして大きく見えた。大勢の乗客の安全を担うその背中は、小学生の目にも十分すぎる

装飾電車と花電車【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から5】

<都電クリスマス号の車内(2017年)> 2017年12月8日(金)~12月25日(月)にかけて運行された、冬の風物詩「都電クリスマス号」。都電荒川線 9002号の車内・外にクリスマス装飾が施され、大勢の人の目を楽しませた。 ※天皇陛下(明仁さま)は2019年4月30日に退位され、皇太子徳仁親王が5月1日に新天皇に即位されました。文中の「皇太子殿下(現在の天皇陛下)」は「上皇陛下(明仁さま)」についての記述ですので、ご承知願います。  『思い出ガタゴト 東京都電diar

そのバスは力強く上る上る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から4】

都バス「梅76甲」系統の車窓から 青梅市内を運行する都バス「梅76甲」系統は、都バスの最高地点「上成木」停留所へ向け、くねくねとした道を上ってゆく。窓の外には、都心の都バスには見られない、緑あふれる光景が広がっている。  「みんくるガイド」は、都バスの営業所・支所・車内などで無料配布されている路線案内である。これには、一部の出入庫系統を除く都バスの全系統が色分けされて記載されており、運行頻度ごとに太さを変えてあるなど、視覚的にも分かりやすいものとなっている。皇居を中心と

ありがとう7000形【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から3】

<東京最後の吊り掛け駆動車 都電7000形> 6月11日に開催された「2017路面電車の日記念『ありがとう7000形イベント』」の一コマ。一番左に見えるバスは、旧三田電車営業所所属の7075号車を模した都バスのラッピング車両(南千住営業所のL652号車)。都電の7000形は左から7022号車(青帯復刻デザイン)、7002号車(更新車標準色)、7001号車(赤帯復刻デザイン)。なお、イラストでのバス車両の配置はイベントでの実際の配置とは異なる。  6月11日、荒川電車営業

『未来の想い出』に会いに行く。【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から2】

<都営12号線試作車(12-001)> 豊島区立千早フラワー公園で静態保存されている「都営地下鉄12号線(現・都営大江戸線)試作車」1号車(12-001)。模擬ホームを挟んで隣に設置されている2号車(12-002)とともに、静かな時を過ごす。  東京メトロ要町駅、または西武鉄道椎名町駅から歩いて8分ほど。豊島区立千早フラワー公園は閑静な住宅地にある。  童話の世界に登場するような城をイメージしているのか、国旗を連想させる装飾をてっぺんにほどこしたミニアスレチックや、鉄棒