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『ファーストステップ 演習 行政法』はしがき/原田大樹

原田大樹 著『ファーストステップ 演習 行政法』がまもなく刊行となります。定番の参考書として広い支持を集める原田先生の数々の著作のなかで本書はどういった位置を占めるのか、以下の「はしがき」をご参照ください。

本書は、法学部・法科大学院・公共政策大学院等で開講されている行政法(行政過程論・行政救済論)の授業と並行して、行政法の理解を深め、アウトプットの練習を行うための演習書として企画された。その執筆の経緯と意図は次の通りである。

今から約10年前に、私は、行政法の参照領域 (行政法各論)に関する研究・教育の成果として、『例解 行政法』(東京大学出版会・2013年)、『行政法学と主要参照領域』(東京大学出版会・2015年)とともに『演習 行政法』(東京大学出版会・2014年)を刊行した。その際に演習書を含めた理由は、具体的な条文を読み解く練習のために、演習書というスタイルが適切であると考えたからである。そのため、問題のレベルは全体として高めに設定し、読み解く条文の数も多いものとなっていた。その後、別の出版社から『判例で学ぶ法学 行政法』(新世社・2020年)を刊行する機会を得た。演習書ではなく判例に重点を置いた構成とした理由は、初学者にとってはアウトプットの練習よりも知識を体系的にインプットする方がはるかに重要であり、その際に具体的な紛争事例を念頭に置いて学ぶことが、将来のアウトプットの力の涵養にもつながると考えたからであった。

これに対して本書は、この2冊の間にある学習ニーズに応え、両者を架橋するものとして企画された。大学における行政法の授業は行政法一般に通じる内容を扱うため、抽象的な話になりやすく、理解できた実感を伴って学習を進めていくことが難しい。それにもかかわらず、これらの授業の終わりには期末試験があり、学習成果を答案という形でそれなりに示さなければならない。そこで、本書では、行政過程論・行政救済論で学ぶ重要な論点を13個ずつ取り上げ、具体的な論述問題・事例問題の形で示すことにより、行政法の授業が取り上げている内容の具体的な形をイメージしやすくするとともに、問題の解説を読むことでアウトプットのやり方にも慣れてもらえるように工夫した。また、総合的な演習問題を4個設定し、各種試験にも対応できる力を身につけてもらうことをも目指している。本書での学習によって、行政法の内容が「腑に落ちる」体験をしてもらうことができれば、これに過ぎる喜びはない。

行政法の参照領域三部作に続き、行政法全般にわたる基本書・体系書の刊行という新たなプロジェクトの最初の成果物として本書が刊行されたことは、東京大学出版会の山田秀樹氏のお力なしには実現できないことであった。出版に至る緻密な作業を完璧にこなして下さった山田氏と、東京大学出版会の関係者各位にも心から御礼申し上げる。

2023年2月
原田大樹


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