国民民主党は議員外交をしないの?政活費の領収書公開と議員外交に関する個人的な考察とアイデア

政治資金の領収書公開と関連して、「議員外交のために機密性の資金は必要ではないか」という論点があります。今回ここで考えたいのは、まさにこのテーマです。

国民民主党が「10年間の領収書非公開」に反対の姿勢を取っていることから、「国民民主党は議員外交をしないのか」といった意見も寄せられたのですが、国民民主党も議員外交を行っています。

その前にまず実態として、議員外交は「特定政党のカンバンで」行われるケースは全体のごく一部に過ぎないかと思います。

「○○党議員団視察」といった動き方だけではなく、超党派の議員連盟や議員団であったり、あるいは個人的な交友関係などのパイプを通して行われたり、イチ政治家として大使館と直接やり取りを行ったり…といった形ですね。

これは相手先が「特定政党とことさらに繋がりが深い」と誤解されることを防ぐ配慮もあるのかなと個人的に想像しています。

何より「政争は水際まで」ですから、議員外交の話に党派性を持ち込むこの記事の書きぶり自体まったく政治センスに欠けると承知はしておりますが、それを承知で少し書かせて頂きますこと、ご理解いただければ幸いです。


さて議員外交ですが、議員個人の取り組みで言うと、例えば国民民主党なら、玉木代表や榛葉幹事長が海外との個人的なチャネルを使ってやり取りをしているケースですね。具体的なところは詳らかにされていませんし僕も知りませんが、たとえば玉木代表は留学や外務省出向時代のつながりから米国や中東・東欧に、榛葉幹事長も中東諸国に個人的なつながりがある様子が、国会質疑や会見などで時々触れられている印象があります。

また、超党派での枠組みで言えば、先日、日本の国会議員若干名が台湾総統就任式典に参加しましたが、その際に、国民民主党からは榛葉幹事長、伊藤たかえ参議院議員らが参加しています。その他、あまり発信されていませんが、玉木雄一郎代表が日モルドバ議員連盟の枠組みで外交に取り組んでいたりと、様々な議員外交が展開されています。

そういえば浅野さとし議員も、何か超党派の枠組みでポーランド等に視察に行ってたことがあると思います。そのタイミングでワグネルが少し危険な動きをして、「おいおい大丈夫かよ」と思ってハラハラしながら見ていた記憶があります。

安全保障に関することでは…既に本人がいつかの街頭演説で述べたので書きますが…深作ヘスス神奈川19区総支部長が、過去に中台両岸関係の悪化が生じた際に、米国議会スタッフ時代の人脈を通して関係各所にコンタクトを試みていたと伺っています。

こうした動きは、SNSではあまり喧伝されず、ニュースにもなりませんが、議員さんの国政報告会に参加すると、聞ける機会が比較的多い印象です。

なお、国民民主党は政策活動費(非公開の政治活動資金)を既に廃止していますが、友好交流だけでなく、エネルギーや安全保障などのシビアなテーマにおいても議員外交に取り組んでいる様子です。(私の立場では、詳らかに承知はしていませんから、”様子です”と書いておきます。)

どの政党も実は議員外交に取り組む議員さん結構いるのでは?

国民民主党に限らず、どの政党にも、議員外交に取り組んでいる議員さんは意外と多いのではないかと思っています。超党派での動きや個人的なつながり、あるいは各国大使館を通してのやり取りなどもあるようです。

以前、米国政治に詳しい方から聞いた話ですが、日本は他国と比べて民間団体による米国政府へのロビー活動がとても少ないそうです。これは「民間団体が動かなくても、議員外交がしっかり行われて、議会レベルでの信頼関係がちゃんと出来ているからではないか」との見解も別の方から聞いたことがあります。

機密性の資金がなければ議員外交はできない(チャネルが限定される)のか?

さて、本題に入りましょう。

「議員外交のために機密性の資金は必要ではないか」という論点についてです。

「議員外交」をどう定義するかにもよりますが、スパイ映画のような話ばかりではないのは読者の皆様もご承知でしょう。機密性の資金が無くても可能な議員外交の選択肢は存在します。しかし、機密性の資金があったほうが選択肢が増えることは、理屈の上では間違っていないでしょう。

もちろん、どこかのセキュリティのしっかりした高級レストランで海外要人と秘密裏に会って話をした場合であっても、その領収書で公開されるのは「〇〇議員が〇月〇日にドコソコレストランにいくら支出した」という情報だけであって、「そこに誰が同席したか」も「何の話をしたか」も領収書には書かれないのが現実ですし、「その領収書を手掛かりに秘密の会合が“洗われて”しまうのでは」という懸念に対しては、情報保全対策をしっかり講じましょうという話になるのですが。

そうは言っても、「機密性の資金がなければ議員外交の選択肢が限定されてしまう」という理屈は、理屈の上では間違っていないと思いますから、この問題について考えたいと思います。

私案:「政策機密費」という枠組みの創設

あくまで個人的なアイデアとしては、「政策機密費」という枠組みを作ってはどうかと考えています。


原則として政治活動(選挙運動を含む)に用いた経費は全て領収書を公開としますが、一定の基準に合致するもののみ「政策機密費」として10年間の非公開を認めるものとします。

非公開期間の10年間は、「政策機密費の総額」のみ公開する義務を負うものとします。

また黒塗りに関しても、「黒塗りにして良い情報(個人のプライバシーに
関わる情報など)」について明確に基準を定める
ものとします。


こうすることで、

・機密性の支出以外の、「隠すまでもない使途のお金」を明瞭化でき、変なイチャモンをつけられにくくなります。

・10年非公開になるのは「政策機密費」だけなので、10年後のチェックはそこに絞って「これは機密費として妥当なのか?」という観点から行えば良い話になります。明確な基準に基づいてチェック可能であり、変なイチャモンも防ぎやすいでしょう。

・逆にチェックする側は、10年を待たずして「あの政党はやけに政策機密費の総額が大きい、何かやってんじゃないのか?」とチェックできます。

・また、10年後に公開された領収書の金額と、それまでに公開された政策機密費の総額とを突合することで、虚偽の報告などを見破る手がかりも得られます。

というわけで、「変なイチャモンをつけられたくない」という皆さんにも、「変なことやってないかチェックしたい」という皆さんにも、どちらにも一定の合理性があるアイデアではないかなと思っています。

「秘密の箱」に入れるものは、秘密にする必要のあるものだけ

そもそも、今の政治資金規正法改正法案は、「秘密の箱」に入れる必要のないものまで秘密の箱に入れようとしているんじゃあないの?と見られてしまっているから、批判が殺到しているんだと思うんですね。

確かに議員外交等で機密性の高い支出は必要かもしれませんが、それを理由に、「ちょっと街頭演説に行った時に車を停めたコインパーキングの領収書」みたいなものまで10年間も非公開にしておく必要って、多分ないと思うんですよね。

つまり、「議員外交等で機密性の資金が必要である」ことと、「政治活動(選挙活動を含む)の経費の大半を10年間も非公開にしておくこと」には関連性はあまり無いのです。なので、「議員外交に必要だから」というのは、少々、論理の飛躍が過ぎるのではないかと思います。

しかし、そうは言っても、今回の事態には少々混乱もあるかもしれませんから。ですから改めて、ここは問題をちゃんと切り分けたほうが良いと思うのです。

「議員外交等で機密性の資金が必要である」ならば、「機密性の認められる資金の枠を、通常の政治活動(選挙活動を含む)の経費の枠組みから切り分けて管理する」ほうが、管理もチェックもしやすいのではないかと。

個人的には、そんなことを考えています。
以上です。