国民民主党の基本政策は?憲法・エネルギー・安全保障政策のスタンスを解説
国民民主党の基本政策について、憲法・エネルギー政策・安全保障政策の3つを軸に、個人的な理解をまとめてみました。
憲法:問題解決のために必要であれば改憲し、必要なければ改憲せず
まず憲法です。
たとえば自民党さんですと、『自主憲法の制定』を『悲願』と仰ることもありますよね。ですが国民民主党が、『改憲』や『自主憲法の制定』を『悲願』だと言った場面は、僕の記憶にはありません。
国民民主党のスタンスは、『憲法を改正しなければ解決できない現実問題があるならば、その問題を解決するために改正しよう』です。逆に言えば、『問題解決にならない改憲には反対』なんです。
自衛隊を明記する”だけ”の改憲には反対
だから例えば、憲法に自衛隊を明記する”だけ”の改憲には反対しているんですね。
自衛隊の存在を憲法に書き込む”だけ”では、自衛隊違憲論は消えませんし、国際法と国内法の矛盾といった問題も解決しません。
『問題解決にならない改憲』だから、反対しているわけです。
そうではなく、『現実にある問題をちゃんと解決できる改憲をしよう』という立場です。
国民民主党が「改憲は必要ない」と主張した「オンライン国会」
もう一つ例を挙げましょう。2022年頃、憲法審査会では「オンライン国会」が可能かどうか議論がされていました。憲法56条の定める「出席」は、オンライン出席も含めるのかどうかが判然としなかったためです。
そしてこのオンライン国会の議題では、国民民主党は、オンライン国会は改憲せずに可能だという姿勢を取っています。
つまり、『改憲しなくても解決できる問題をダシにして改憲しない』ということです。
改憲か護憲かではなく、「現実問題を解決できるか」
国民民主党の姿勢は、改憲のための改憲でもなく、護憲のための護憲でもありません。
『問題を解決する』という目的のために、必要不可欠であるのならば、解決に資する改憲をしようと考えます。
だから、『解決にならない内容の改憲』には反対するし、『改憲しなくても解決できる問題をダシにして改憲することはしない』わけです。
例えば、いま議論されている議員任期の延長規定についても、『改憲せずとも問題解決可能』という意見もあると承知しています。国民民主党としては『改憲しなければ難しいのではないか』と考えているから、改憲を主張しているわけですね。
この論点の是非については、この記事では掘り下げません。今回ここでお伝えしたいのは、国民民主党は『改憲のための改憲』でもなければ、『護憲のための護憲』でもなく、現実的な問題解決を重視する姿勢だということです。
エネルギー政策:原発も再エネも含めてベストミックスを目指す
続いてエネルギー政策についてです。こちらも国家の基本を成す政策分野の一つとして、国民民主党はかなり重視しています。しかし、「再エネに賛成ですか反対ですか」「原発に賛成ですか反対ですか」といった観点ではありません。
これについては玉木代表がショート動画でわかりやすく話しているので、こちらをご覧ください。
簡単に要点をまとめると、
「原発も再エネも足りない。日本のエネルギー自給率は低い。原発か再エネかの二元論ではダメ。」
「原発も安全基準を満たしたものは動かしていく。再エネも必要なところは推進。ベストな組み合わせを作っていくことが重要。」
というスタンスです。
再エネタスクフォースの件は、エネルギー政策ではなく『国家のガバナンス』の問題
「いやいや、再エネTFの問題をあれだけ追及しておいて、何を言ってるんだ」と思われるかもしれません。
しかし考えてみてください。他国の企業の影響が懸念される、法的根拠のない組織体が、政府の政策決定に関与しているかもしれない。これは、何も再エネだから問題ってわけじゃないですよね。経済、財政、産業、福祉、教育、どの政策分野でも、あってはならない問題です。同じ構図の問題が起きたとして、「再エネじゃないからオッケー」とはなりませんよね。
つまりこの再エネTFの問題は、再エネの問題ではなく、政府のガバナンスの問題です。たまたま今回発覚したのが再エネTFだっただけであって、これが別の分野であったとしても、やっぱり問題なんです。
こういう風に問題を切り分けて捉えることは、解決のために必須のアプローチです。国民民主党は、問題をきちんと切り分けて考えて、その解決を目指す政党だと僕は思います。
再エネ賦課金の問題も同じ:再エネの問題ではなく国民負担の問題
再エネ賦課金の問題も同じです。国民民主党は、アンチ再エネで再エネ賦課金に反対しているのではありません。国民生活に負担がのしかかっているから問題視しているわけです。
つまりこれはエネルギー政策の領域ではなく、経済財政政策の領域なんですね。
これもやっぱり「何が問題なのか」「なぜ問題なのか」と、問題点をしっかり切り分けて考えて、現実的に目の前にある課題の解決を目指して訴えているわけです。基本姿勢は何も変わりません。
安全保障:現実に必要な”備え”をしっかり行う
安全保障に関してもそうです。現実的に必要な備えをしっかり行う。備えにならないことはやらない。単にそれだけです。
例えばわかりやすいのが食料安全保障です。
安全保障というと、多くの人が『軍事』を思い浮かべるかもしれません。しかし、飯が食えなければ人は生きていけないんです。
こうした考え方のもと、国民民主党は、農業を『国防政策』としても捉えて、農業政策に取り組んでいます。
エネルギーや資源調達なども同様です。国民の命と暮らしを守るために必要なこととして、『総合経済安全保障』の考え方に立脚し、法案を提出しています。
『みんなの命と暮らしをいかに守り抜くか』という課題に立ち、そのために現実的に為すべきことは何かを、実態に基づいて把握し、必要な備えを推進していくのが、国民民主党のスタンスです。
"血を流す覚悟"発言の意味
さて、こういう話をすると、玉木さんがどこかのYoutube番組で言った「血を流す覚悟」発言を思い起こす人もいるのではないかと思います。確かにあの言葉はちょっとビックリしますよね。
これは英語の『Prepared to Shed Blood』をそのまま日本語直訳で言っちゃったんじゃないでしょうか。政治的な文脈で意訳するなら、『国を守る覚悟』みたいな感じだと思います。
これについても、2019年に出版された玉木さんの自著に言及があります。
『心臓を捧げよ』方式ではない国防観:防衛費の増額と、防衛増税の回避
それでも国防の話にどこか不安や恐ろしさを感じてしまうのは、『国を守るため』という大義名分のもとに、国民のさまざまな権利が―――時には命さえも―――犠牲にすることを厭わなかった歴史があるからではないでしょうか。
しかし、こうした歴史があるからこそ、国民民主党は、いついかなる事態であっても、国民の権利を守ることに重きを置いています。
その姿勢の発露が、『防衛費の増額』と、そして『防衛増税の回避』にあったのではないかと僕は思っています。
2022年臨時国会では、防衛費を引き上げる議論が行われました。この議論の端緒を大きく開いたのは、同年10月6日、玉木雄一郎代表の代表質問でした。自衛隊の継戦能力に課題があることを玉木代表が指摘し、岸田総理がそれを認める答弁を行いました。
自衛隊の最高指揮官である総理自身が、国会の場において、自衛隊の脆弱性を認める答弁をしたことは、大きなインパクトがありました。
防衛力の強化が『待ったなしの課題』として国会議論の場に急浮上した2022年臨時国会。「防衛増税もやむなし」という空気も漂いはじめました。
しかしそこで、防衛増税をせずに防衛力強化の予算を確保する『外為特会剰余金の財源活用』という第三の道を切り拓いたのも、国民民主党でした。
「国防のために国民は我慢しろ」とはしなかった。
そうすることなく、経済的にも国民生活を守る選択肢を導いたわけです。
まとめ:国民民主党は、「手段」を「目的」にしない政党
以上、今回は、国民民主党の基本政策について、僕の個人的な理解ではありますが、解説をお届けしました。
総じて、国民民主党は、「手段」を「目的」にしない政党だと僕は思っています。
目的はあくまで、課題を解決すること。
国を守り、みんなを豊かにし、人を育てること。
そのために、目の前にある現実的な課題にしっかりと向き合い、解決に取り組むのが国民民主党です。
憲法も、エネルギー政策も、安全保障も、そのための『手段』なんですね。
憲法を変えるのも、『憲法を変えるため』ではなく、『改憲しないと解決できない課題を解決するため』です。
原発も再エネも、手段です。目的は、エネルギーの安定供給を実現すること。そのための手段として、原発も再エネも使えるものはちゃんと使っていく。
安全保障もそうです。目的は国を守ること。みんなの暮らしを守ること。防衛力強化も総合安全保障も、そのための『手段』であって、それ自体が『目的』ではありません。
もちろん手段の適切性も極めて重要です。そこも然りと見極める必要がある。ですが、その手段を取ること自体が目的になってしまったら、解決すべき課題を見失ってしまう。それでは僕らの暮らしは何も良くならないし、不安に備えることもできません。
現実に向き合い、手段を目的にせず、課題解決に取り組むのが、国民民主党の基本姿勢であり、基本政策ではないかと僕は思っています。
以上です。