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【Hello】まだ形になってない、見えてこない、見ようとしないと見えないものしか興味がない/Keiko Mei

editing unit [ Spielen ]のメンバー Keiko Mei。プロフィールの代りに、ちょっとインタビューっぽいただの雑談を 記事に仕立ててみました。彼女が何を考えながら働いたり遊んだりしているのか、そういうことが伝わるといいなと思います。途中挿入される写真は写真家のkoniさんに、記事の内容に反応した数枚を提供してもらいました。聞き手はediting unit [ Spielen ]のもう一人のメンバー tatsuhiko.watanabe です。

何に対して 手応え を感じる?

ーえー なんだろ。

なに。

ーなんて聞こうかなって。

うーん。

ー仕事の成果ってさあ、成果?…質というのか。いい仕事の条件ってなんだと思う?

あーーー。

ーという話が聞きたい。一人でやるというよりは、誰かと一緒につくり上げる仕事が多い印象だけど。

そうプロマネとかディレクションの仕事の中で、最終的に「自分の仕上げ方になったな」と思うのは、一緒にやる人に対して、あなたの「技術」じゃなくて「思考」を借りてるってことがちゃんと伝わっていたときなんだよね。

ーおお。

ロゴとかキービジュアルとかコピーをやるときは特にそうだと思う。
関わる人を黒子にしてしまわずに、活き活きやり切ってもらったものが積み重なって積み重なって最後、お客さんの前にポンっ と出せたときは、クリエイションという領域ではいいワークって言えるかなと、思うなー。

ークライアントの評価 とかではないんだ。

そうだね。 自分の目線でディレクションして磨いて出して、それが採択された。その先の行動はハンドリングできないものだし、相手による次のリ・アクションだから、なんかまあ、いいなあって。そこまでコントロールしようと思わないんだよね。
なんかちょっと思ってたのと違う使い方してるなーと思うことはあるけど、それもコミュニケーションなのかなって思うし。

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ーぽいわ。

その手放し感がいいのか悪いのか、特に答えは出てないんだけど。

ークライアントの課題解決とか出したい成果に「一緒にコミットします」みたいな姿勢も一般的にはよく聞くじゃない。あれとは違う感じだねちょっと。

あー、昔はその方がいいと思ってたかも。でも自分が事業サイドにいたから思うんだけど、ブランディングの人たちが言う「その先のコミット」って事業側から見たらコミットでもなんでもないというか。
事業にコミットしますという話というよりは、自分たちの作ったものの鮮度が保たれることにコミットしますよ。という話に聞こえてそれはちょっと違和感があったな。

ーそんなに重要じゃない?その、鮮度のキープっていうのは。

特に事業って、周りの企業だったり時代の風潮とか、内側の組織だったり、ユーザーのリアクションだったり、変数がとにかく多くて変わり続けるから…。
ロゴとかコピーとか名前とかデザインとかって結局コミュニケーションの素材? になるものだと思う。だから… そう、素材だと思ってるから。

ーなるほどなあ。

だし、あともう一つあるとしたら、他人の動きをコントロールしようと思うのは良いことだと思ってないかも。マーケティングみたいに戦略があって、一手一手を打つようなものはまた話が別だと思うんだけど。

ーコミュニケーションの素材の方からコントロールして来るのはちょっと、くどいってことかな。

くどいっていうか・・・面白くないんじゃないって。

ー…ああ、お互いに、だよね。

そうそうそう。人がそこにいる面白さがないっていうか。わたしはユーザー体験ばかり提供されたくないんだよね、ブランド体験・ユーザー体験…っていうのは「わたしの」体験じゃないと思ってるから。
そうすると成果ってなんだろう…ねえ。

ーなんだろうねえ。

言われて思ったけど、この2年くらいは成果っていう尺度を持ってない気がする。

ーちゃんと「行ってらっしゃい」って玄関で言えたかどうかみたいなことなんじゃない?成果という言葉でなくても、手応えを感じるポイントとして。

あ~…はは、うん。できたものをひょいっ(両手をひょい)て感じだと思う。行ってらっしゃい(手を振る)までじゃないかなあ。

ーひょい。

これは自分のスタイルだと思うんだけど、終わりがあるというのが自分にとっては重要で。プロジェクト終わっちゃうのさみし~って思いながらも、終わった瞬間に、自分の自由度がグワッと広がるとき? 次のステージにきた、みたいな感覚になるときは「やり切ったんだなあ」と思う。

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「よい構え」のようなものについて

ー仕事に対するその距離感は、ずっと前からそんな感じだよね。

社会人なって初めての仕事で児童発達支援の先生やってたときに。

ー20歳とかそこらの?

そう、そのとき、放っておいても刺激の量が必要なだけあれば、できることのフェーズがどんどん変わっていく子どもや大人をみていて。

なにかと「先生のおかげです」と言われるんだけど、それはその人が行動や言語を取得するリズムに噛み合わせられただけだから。刺激の種類とか量とか、自分の授業のアレンジが合っただけだから、半分以上はそっち側(あなた・本人)のおかげでもあるよねっていうのは、いまの仕事のスタンダードな姿勢になってるかもしれない。

ー噛み合っただけか…。それって、自責と他責のバランスでいうとどんな感じなんだろう。僕なんかは「雨が降っても自分のせい」みたいな、自責100%の新卒研修を受けた世代だから。(笑)

答えになるかはわかんないけど…。努力は自分のもの、結果はひとのものって思ってるから。雨が降って欲しくて雨乞いをするのは自分だけど、結果 晴れたら「わたしの雨乞いのおかげだ!」とはならないかな。(笑)

ーまあ確かに。(笑)

なんか、作用…と反作用だと思うから。アクションと、リ・アクションというか噛み合えばいいというか。
今できる手札が自分になければ、一周見送って次のタイミングで手を打てばいいと思ってる。だからあまりスポットで見ることはないかもしんない。

ーしかも噛ませる、噛み合わせる、とはちょっと違うんだよねきっと。噛み合う、んだよね。

ウンウン。

ーでも、そのためにしている努力があるでしょう。

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うーん?ある。
でも自分の具体例は人からするとすごい抽象なんだよね、ふふふ。

ー教えてよ。

ひとつは、これは考え方の癖だなあと思ってここ1年くらい集中してやってたことだけど。「今か今じゃないか」という考えをすごく意識している。

ーああ。

それがアリかナシかじゃなくて、「今」なのか別の道筋で使う札なのか。それによって、今やりたいことが今できるフィールドになかったとしても、焦ったり相手を無理に寄せてったりはしなくなった。
待つというほど受け身ではなく、時を見る。

ー保留する?

いや、読む。みたいな。判断しない。フローでいる。
のと、もう1個は「近くに行き過ぎない」っていうのは大事にしてる。知りすぎると目の前のひとりと話すのが難しくなるので。

人や場の機微は…結構見てる方だと思うけど。相手に関する社会的な評価とか、最近の大きなトピックとかは知らなくても噛み合うから、出来るだけそうしてる。1ヶ月に20分くらいしか会わない仕事のパートナーもいるけど、それで十分だなと。ちゃんと自分自身の時間をやっていれば、というかその方が、人と噛み合うことがある。みたいな。

ーたしかに。それも結構 意識的にやってるよね。

あとはプレスリリースとか新しいサービス、広告とか。勉強してるつもりはないけど、シャットダウンはしてない。

ーメインストリームから目を背けないという意味?

ううん?あんま細かいところまで見てないけど。世の中にちょっと違うリアクションが生まれた時。人々の反応が違うとき?を見てる。

ーツイッターで?

いやー、街中かなあ。
たとえば渋谷のスクランブルスクエアの壁面ディスプレイ、すごい変な形なんだけど。でもあの形に即したモーションとかすぐ出てくるじゃない。これ誰が最初に型を作ったのかなあとか。

ーあれは確かに気になる。

渋谷駅周辺の街並みも、よくひどいって言うじゃない。

ーうん。(ちょっとそう思ってる)

まあ確かに歩きにくいけど 空見上げると結構スカスカなんだよね、上だけ見ると立ってるビル群として綺麗だったりして。あれってオリンピックに向けて空撮?が重要だったのからなのかなとか。全部推測だけど。

ーほお。

テレビでテニスの試合やってるときも、この人は苗字省略でこっちはフルネームなのなんで?とか。もしかして格闘家みたいにリングネームで出てるの?とか。相撲部屋なら親方がつけるんだろうけど、アスリートの場合ネーミングは誰がするの?とか。
もちろんツイッターも見るけど、いわゆる「コンテンツ」が示すものに、自分はそこにリアクションできるものは、あんまない。

ーどっちかっていうとものごとの仕掛けの方に関心があるのかな。

んー、そうだね。なんか、見えないこと?まだ形になってない、見えてこない、見ようとしないと見えないものしか興味がないってのはある。探さないとわからないことというか。
だから人に会った時に聞きたいこといっぱいあるし、各業界の人に確かめたいことがいっぱいあるんだよね。(笑)

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今年はこれをやるぞというような

ー今年はいい仕事できそうすか?

うーん。(目をつむる)
今年は最初に話したような「いい仕事」のプロセスは必要としてないと思うなんか。3ヶ月後聞かれて同じような仕事の良し悪しを語ってたら もうダメだなって感じもするし。
去年の年末に「出会うより、出会い切る」ということの面白さみたいなのをやっと掴んだ気がするから、それを今年は毎度やり切れるか?それが結構重要かも。

ー出会い切る って最近よく言ってるけどさ、…それはなに。

ふふふ、何だろうね?ひとのことを「わかる」とかとは、全然違うとこにあると思うね。

ー出会い切った時特有の面白さってのがあるんだ。

うん。1年くらい会わなくていいやって思うことかな?違うな。あと会話でいうと、絶対冒頭の会話にフレーズが戻ってる…ま、それは喋り方の話か。

ーそれってさ、面白いと思えるいい人と出会えたらいいなっていうシンプルな話なのか、どんな出会いであれ、出会い切るぞっていうこちら側の態度の話なのか。

あはは、あー、そう。去年?フリーランスになった頃、ようやく同世代の人たちと遊ぶようになったんだけど。自分のものの見方の狭さとか、こっちの引き出しが少なかったりとか、開け方が悪かったりとか時間とか。色々未熟だったからそのときは出会いきれなかった。その時感じた寂しさの様なものからこの話は来てるのかも。

ーでもこないだインスタのストーリーで、自宅で同級生の子たちと騒いでなかった?

あはは、あれはいいの、あれで。「ずーっと長く一緒にいる」っていう距離で、出会い切ってる。
あ、そうか。その人と自分のの間合いがわかること、かもしんないね。この距離だと楽しいっていう、間合いを掴むということなのかも。

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ーぽいなあ。(笑)

(BGMのトランペットソロがしばらく流れる)

ー自分が仕事に飽きるときって、兆候あると思う?

仕事?…自分が会社員だった頃の兆候は、「評価されるとき」。

ーふーん。

というか、役に立ってしまったとき。伝わる?

ーああ、評価されるって、ポジティブな方に?

そうそう。「優秀だね」って言われたりすると、あーここじゃ終わったなーと思う。
そこからはもう、評価されたところを拡大するとか拡張するとか、機能を上げることを期待されるよね。より予算規模の大きな仕事をとか、後進の育成とか。それにはそれの面白さがあると知ってるけど、自分でissueを見つけないとなんかねー、ダメなんだよな~。

ーんはは!そうか。

最近だと飽きるのは、コミュニケーションのテンプレートが見えているとき。
それをなぞる演者にはなれないなあと思うから、し、そういうことをやるなら、自分よりめちゃくちゃ上手い人が他にいるから。最近はそういうのには手を出してないから、飽きるというのはないんだけどね。

ー最近見つけた格好いい人います?

いっぱいいる。うーん。いるけど?

ー憧れたりはすんの?誰か。

「ま、憧れるよね~」みたいなフレーズを使うことはあるけど。

ー本当の意味で。

どうなんだろう。憧れちゃったらよくない気がする…。ちゃんと悔しいって思っていたい。悔しいか、嬉しいか、ならあるな。「こんな人がいて嬉しい」というやつ。

ーちょっとわかる気がする。

うん。でも決断?決断の潔さとポップさについて「かっこいいですね」とコメントしてる気がする最近は。何してる人かとか、決断の内容じゃなくて。「決めちゃった^^♪」って感じ?

ーあー、いい。

断腸の思いでとかじゃなく「そうしちゃったんだよねー」と言えてしまうこと。が、結構かっこいいんじゃないかなと最近思う。

ーうーん。この話また続きしよう。すごく面白かった。

うん、ありがとうございました。

ーありがとうございました。

fin(雑談後記へつづく…)

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<雑談後記>

東京藝術大学のすぐ側に上島珈琲店がある。1階にはカウンターが数席しかないけれど、2階はゆったりしたソファ席があり結構穴場だと思っている。この日も奥の方で教授らしき女性と学生が面談していた。

普段 ケイコとよく行くのは押上の韓国料理屋。Googleの口コミはボロクソに書かれているが、気立ての良いおばさんに可愛がってもらっている。キムチチャーハンを食べながら最近気に入っているミュージシャンの話をしたり、一緒に進めている仕事の実務の話も多い。けれど、彼女自身の仕事観や人生観については( 日々のコミュニケーションの中から一方的にこちらが感じ取ることはあっても)あらためて純粋に耳を傾けるなんてことは、ほとんどしてこなかったと思う。

記録していた音声データを聞き返すと、なんと沈黙の多い50分間だっただろう。店内のBGMしか聞こえない時間が結構ある。黙り込むのはだいたい僕の方で、その理由はたぶん「うれしさ」だった。仕事観や人生観を言葉にする過程で、人は哲学をすると思う。そのプロセスは孤独なものだが、結果として導き出された言葉は他人を触発する。僕はケイコが日々コツコツ積み重ねてきた哲学の累積にこの日触れることができて、50分間ずっと勇気付けられていたんだと思う。自分の頭で考えつづけ、自分だけのスタンスを形作っていくことの先にある「自由」のうつくしさというか、「希望」のようなものを感じて、ずっとニヤニヤしてばかりいた。Big respect for you!Thank you so much!

editing unit [ Spielen ]についてはこちら🚶‍♀️


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