ゴーリキーのモスクワ芸術座の監督交代に対する反対署名 ― ロシア演劇ニュースから

ゴーリキーの方のモスクワ芸術座は分裂以降、ソ連を代表する看板女優タチヤーナ・ダローニナが監督を務めてきた。

昨年12月8日に新しい芸術監督として劇場「プラクチカ」の芸術監督エドゥアルド・バヤコーフが就任。ダローニナは名誉監督というポジションになった。それに対し、1800人の反対署名がなされたという報道。

ここ10年ほど芸術監督の交代(という名の更迭)は、いわゆる不人気劇場で行われてきた。例えばゴーゴリ劇場はセレブレンニコフを迎え入れゴーゴリセンターに刷新、スタニスラフスキー劇場はユハナーノフを迎えてエレクトロテアトル・スタニスラフスキーとなっている。

(なお、不人気劇場というのは、私が実際に足を運んで感じたものです。留学中、モスクワにあるほぼすべての劇場に足を運んで(人形劇や児童劇場以外)、どういった演出をしているのか、だけでなく観客、人気なども実体験として踏まえ、当時のゴーゴリ劇場とスタニスラフスキー劇場は特に観客がスカスカな劇場でした。原因は時代の変化についていけなかったことです。マーラヤ・ブロンナヤもそんな感じですね。)

それにしても1800人という微妙な数字がなんとも悲しい。

ゴーリキーのモスクワ芸術座の凋落ぶりは、私が最初に留学した15年前に既に顕著だったが、ダローニナ目当てで来ている人はまだいた。

その後、ユーゴザーパド劇場のベリャコーヴィチを演出家に招いたりと、少しでも新しい風を入れて観客の回復に努めようとはしていたものの(もう当時のベリャコーヴィチは新しい風とはとても呼べないが)、完全に時代に取り残されてしまった劇場だった。
しかし、逆に言えば共産時代の演劇をいまだにやっている劇団でもあり、そういった関係からの支持もある劇場であった。今回の署名者はそういった人たちだと思われる。

チケット売り場のおばちゃんの無愛想な態度は、あぁこれがソ連時代の対応か・・と逆に感心した思い出がある。
舞台もダローニナが出るたび拍手が出るし、タイムスリップしたかのような経験である意味楽しめたし、ダローニナの演技が実際に見られたのも貴重な経験となった。

あのデカイだけで客席がスカスカという状態は、今後変わるのだろうか。

確かにあのリアリズムガチガチの役者たちに、古典作品ではなく、プラクチカの現代の作品を上演させるのは面白いのかもしれない。

まぁ劇団というのはそう簡単なものではないのだが、文化庁としてはそういった判断だったのだろうか・・・。俳優たちが言うことを聞かない可能性もあり、どうなっていくのかモスクワに行ければ確認してみたい。


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