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【2019駒場祭特集】ジンブンアトラス編⓪-ジンブンアトラスとは

 みなさんこんにちは。
 今回から、2019年11月22-24日に東京大学駒場祭で行った「ジブン×ジンブン」の展示内容を公開していきます!
 惜しくも期間中に行くことができず悔しさに夜も眠れないという方、見にいったけど展示のあの文章がもう一度読みたくて夜も眠れないという方、単純に寝られないので何か読みたいという方、みなさんの不眠のために、UT-humanitasは昼夜問わず活動しております。

 「ジンブンプリズム」というテーマのもと組み上げた今回の展示、そのメインは、「ジンブンアトラス」という企画にあてられていました。ジンブンアトラスとは、ある親しみやすい題材を取り上げ、それをメンバーが各々の専門分野から読み解いていく、その読みの重層性を、文章を通して体験してもらおうというものです。
 以下は当日会場でもみなさんにお読みいただいた、ジンブンアトラスの目的を説明した文章です。

 「ジンブンアトラス」の目的とは「ある一つの対象に対して異なる学問分野の人から様々な意見を述べてもらうことで、学問分野間の視座・方法の違いとテクストの多義性を伝え、人文学の『地図』を描く」というものです。 そのためにアトラスにおいては様々な題材をテクストに見立て、専門分野の視点から分析を行います。
 「テクスト」とは一般に、人文諸学における分析の対象を指す用語です。歴史学ならば歴史資料、文学ならば文学作品、哲学ならば哲学書が「テクスト」となります。普段私たちはそれらのテクストに向き合い、そこからどのような意味を引き出すことが出来るのかを日々考えています。
 そのようなテクストはしかし、上に挙げたような専門文献に限られません。何故なら私たちが学ぶのは、テクストの意味そのものではなく、それを引き出す方法論だからです。それらの方法は確かに専門文献を相手にした時に、最も効力を発揮しますし、専門文献こそテクストのもっともたるものなのです。しかし例えば、ふとつけっぱなしになったテレビで放映されているドラマを見ると、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が言及されていた夜について考えてみましょう。文学を学んだことのある方であれば「間テクスト性」という言葉と、宮沢賢治の日本文学における特異な立ち位置を想起することになるでしょうし、歴史学や社会学、映像理論を学んだ方はまた別のコンテクストにそのドラマを位置づけることになるでしょう。このように日常における様々な事物もまた、「テクスト」になり得るのです。
 つまり人文学のテクスト分析の方法論というのは、新しい「世界の見方(perspective)」を授けてくれるものなのです。歴史学を学べば歴史学の、文学を学べば文学の、哲学を学べば哲学の方法で世界を見ることが出来るようになる。それによって世界に新たな意味を見いだすことが可能になる。
 さてジンブンアトラスに話を戻します。アトラスは諸人文学において共通する手法、あるいは人文学的な手法としての、「テクストの解釈」という営みの一つのモデルとも言えるものです。先に述べたように、人文学を学ぶということは、世界を見る見方を学ぶということなのですから、今回の展示のようなテクストに対しても、またその分野ならではの意味を見いだすことが出来るのです。
 ただジンブンアトラスについて付け加えておきたいのは、そこでは一つのテクストが複数の分野=視点から解釈され、それによって人文学的な考え方の一端、あるいは様々な方法論を内包した人文学の営みを見せることが出来る、ということです。今回のテーマである「プリズム」のたとえを用いるなら、一つの学問分野は世界の一定のスペクトルを見ることを可能にすることが出来ると言えます。ジンブンアトラスでは様々な分野によってテクスト=世界が分析されることで、まさに世界が人文学で分光され、多様な意味がテクストから照射されることになる、と言えるでしょう。
 さてジンブンアトラスは確かに今までの展示でも採用されたものですが、今回ならではの要素もあります。この駒場祭の展示では、人文学の様々な方法論を開示するスペースをアトラスの前に設けました。これによってメンバーがアトラスで行ったようなテクストの分析において、各分野の分析がどのような問いに基礎付けられているかを知ってもらうという意図があります。これによって来場者の皆さまに、アトラスにおける私たちの分析が一つの例でしかないこと、テクストは開かれていて、あなたがそれをまなざすことで新しい知が生まれることに気づいてもらいたいのです。
(岡田進之介)

 この熱い文章を読んで知的好奇心が昂ってしまったあなたは、すでに次なる記事へとカーソルを動かしているに違いありません。
 次の記事では、上でも言及のある通り、人文学の様々な方法論を簡単に解説したブースの内容を公開したいと思います。
 さあ、あなたも「ジンブンプリズム」から、まったく新しい世界の一端をのぞいてみませんか?

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