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【10デリ】東大男子×東大女子 意見交換会(2024/9/2)

 はじめまして。10デリに所属しているY、Tです。
 この記事では、9/2に行った10デリの企画「東大男子×東大女子 意見交換会」の内容と感想を紹介したいと思います。


【1】はじめに

(1)「女子学生 活躍推進Diligent(通称⑩デリ)」とは?

(2)「東大男子×東大女子 意見交換会」開催概要

 これまで女子だけで完結しがちだった女子学生ならではの悩みなどといった話題について、より広い視点からオープンに意見を交換することを目的としてオンライン上で実施しました。

 参加者は、女子の参加者は10デリメンバーから、男子はデリジェントに所属している方はもちろん、デリジェントに所属していない方にも参加していただきました。

 最初に全体説明の後、男子と女子それぞれ2,3名ずつの班(ブレイクアウトルーム)に分かれ、与えられたトークテーマについて班内で話し合いました。トークテーマは「女性や東大の女子学生を取り巻く問題について」と、それを踏まえて「今後10デリが出来る活動には何があるか」です。これらについて班内でそれぞれ30分議論をしました。

(3)参考:文責2人の状況

・Y(2年生、理学部内定)の状況

 自分は女子校時代が長かったため、東大には女子が少ないと聞いた時そもそも教室に男子がいるという状況があまりよくわかりませんでした。最初に教室に男子がいるという経験をした時は漠然と怖いという印象がありました。自分から話しかけるのはもちろん、話しかけられることも遠慮したかったです。

 ですが、ある時男子も同じ生き物だということを悟り、その後は女子と同じように話せるようにはなりました。今では男子が多いという環境に慣れた感覚があります。ただ、やはり女子のいる環境の方が安心します。女子の多い授業を選択しがちになったり、女子がいない環境が続くと他よりも疲れてしまったりということが多いです。

 自分にとっては現状に対する不満よりも、将来に感じる不安の方がずっと大きいです。自分は将来博士課程に進学し、研究者を目指していきたいという思いがあります。同時に結婚や出産もしたいとも思っています。これを考えた時に、研究者という狭き門を目指すことへの不安だけではなく、研究者を目指していく上で、本当に結婚など出来るのか、逆に結婚できるとして研究職を続けられるのかといった先行きの見えない不安があります。

(この原因の一つは女性研究者というロールモデルが少ないことだと思います。このために、自分が将来どのように行動するかにあたっての参考材料が少なく、またあったとしても特殊事例ではないかと考えてしまい、素直に受け入れにくいことも多いです。また、周囲も女性研究者がどのようなものかわかっていない部分が多いために、いざ修士・博士課程に進む際、周囲が手放しで応援してくれることはないのだろうと思ってしまいます。)

 意見交換会でこのような不安を直接男子に共有できたのはありがたいと思いました。

・T(2年生、理学部内定)の状況

 大変幸運なことに、親や高校の教師含め自分の希望する進路を応援してくれる環境に身を置けていたため、この大学を受験・入学することができました。ただ、(“強い”資格を取れるので結婚出産の可能性がある女子でも将来に困らなさそうと一般的に思われている)医療系以外の理系を専攻することに対してあまりいい顔はされなかったです(親には今でも「医学部編入試験受けたくなったらいつでも言ってね!応援するから!」と言われます笑)。東大に男子が多いという事実は知っていたものの、東大に限らず国立大理学部の女子率はどこもまあまあ悲惨なのでそれを理由に志望校を考えることはしませんでした。今振り返ると、同じ進路を志す女友達に恵まれていたことも大きかったと思います。

 実際に入学してみて、私のクラスは運良くジェンダーバランスが理系にしては偏っていなかったこともあり基本的には楽しいキャンパスライフを送っています。しかし、やはり日常的に男性が大多数の空間に置かれる中で「女子である」ことが他の何にも代えて特筆されるべき個性(属性)のような目(性的・侮蔑的なものも含む)で見られる場面が時々存在し、その度に居心地悪く感じてしまうこともまた事実です。また、Yさん同様私も将来研究職に就きたいと考えていますが、自分の専攻の男社会っぷりやロールモデルの少なさを見ると不安が無いわけではないです。

 意見交換会では、これらのような自分が普段感じているモヤモヤを足掛かりに、様々な立場の学生と東大の抱える構造的な問題について話し合うことができました。

【2】意見交換会に参加して


 今回、自分が普段感じている居心地の悪さ・将来への不安などを直接男子に伝えられたこと、また議論していく中で女子の少なさに対して何が問題なのか・どこを解決すればよいのかといったことで、今まで漠然と考えていたことを言語化することが出来たことに大きな意味があったと思います。

以下、特に興味深かった話題をいくつか紹介します。

(1)小さな積み重ねが女子を東大から遠ざける?

 ここで言う「積み重ね」とは、今もなお社会に存在する男女に対するバイアスのことです。女子には学歴は必要ないという意見、女子は東大に行くと結婚できないという意見、など。このような一つ一つは小さいことかもしれないものも、幼少期から高校まで長い間触れ続けていた結果、女子が東大を目指しづらくなってしまっているかもしれないというものです。

 自分の周りにはこのような意見を直接的に述べる人はほとんどいなかったのですが、言われ続けたらストレスになるのは間違いないと思います。

(2)少数派は無意識のうちに選択肢が制限?

 ディスカッションの過程で、女子学生側からの「一回男子ばかりの空間で不快な経験をしてからは、進振り先、サークル決め、選択科目、体育の授業の種目選び...等の『選択』を伴う様々な局面で男子ばかりの選択肢を避けるようになった」という体験談が印象的でした。

 一般に形式上特定の属性に不利益を強いるようなルールが無くても、東大のようにそのバランスが極端に偏った環境下において少数派が心理的安全性を確保するためには、しばしば実質的に選択肢を狭めざるを得ない状況に置かれます。このエピソードには私も共感できる部分があったし、やはり快適さにおいて「数の力」は偉大なんだなと改めて実感しました...。

 なお、このような意見に対して「仲間が少ないってだけで避けるのはその程度の熱量だったんだろ」というような声をたまに聞きますが、特定の環境で日常的にマイノリティとして過ごす中で、(打ちのめされるレベルではないけど)「不快な経験」を何回も何回も積み重ねることは、人によっては大きな精神的負担になり得るというのは一回でもそのような立場に置かれたことのある人なら想像に難くないと思います(逆にそのような経験のない人にとってはピンと来ないかもしれません)。

(3)無関心層へのアプローチ

 この議題は10デリの一員としては大変気になるところですが、議論の結果「問題意識や興味関心は、たいてい実際に自分が困らない限りは醸成されない」という身も蓋もない結論に落ち着きました...。

 ただ、今回の意見交換会に参加してくれた男子学生のみなさんのようにマジョリティの立場から問題意識を持って考えてくれる人も一定数存在するので、そのような人たちを巻き込みつつも地道に発信活動を続けていくしかないんだろうなと感じました。

(4)「女子枠」について

 女子を増やすために東大側が何をすべきかを話し合った時に、東大にも女子枠を設けたらどうかという議論もありました。反対意見としては、女子枠で入学したとしても自分の能力を疑われてしまうという懸念・そもそも東大の女子率が少ないことは社会背景や構造に起因するので、女子の数だけ増やしたところで根本的な解決にはならない(枠を作るのではなく、女子学生に対する支援を充実させるべき)というもの。賛成意見としては、社会・周囲の意見などにより東大の女子率が低くそれにより不利益が生じているため、その是正は積極的に行っていかねばならないというアファーマティブアクションの考えや、女子枠設立により必ず一定数の女子は確保出来るため、長い期間で見た時に女子率の上昇には効果的であるというもの。

 女子枠については文責2人の間でも立場は別れますが、賛成派反対派どちらの意見も一理あると思い、これをめぐってはより多くの活発かつ慎重な議論が必要だと改めて感じました。ちなみにこの議論から発展して、女子率の高い推薦生を増やすのはどうか、なぜ推薦生の方は女子率が高いのかといった話題も上がりました。

(5)余談:議論中に感じたこと

 充実した意見交換会でしたが、実施後よく考えてみた時に、自分の意見をすべて伝えられたかと言われるとそうではなかった様に思います。

 男子:女子がほぼ1:1の班分けではありましたが、やはり人数の絶対数は少ないです。このため、「自分」の意見は女子代表として捉えられるという思いがありました。自分の意見は本当に「女子として」の意見なのか、あるいは個人としての意見であるのか分からなくなってしまうことがありました。

 特に難しかったのは、女子が東大を選ばない理由を考えた時です。自分は興味のある学問からほぼ一択で東大を選んだため、東大を選ばなかった「女子として」の理由が想像でしかないと気が付きました。この中で自分の率直な意見を言えば、東大を選ばなかった女子を否定してしまうのではないかと感じ、発言を控えてしまうことがありました。また、オンライン上であるとはいえ顔を合わせながらでは異性の前で言いづらいといった意見もあり、躊躇してしまうこともありました。

【3】今後10デリにできること

 上記のような意見交換を踏まえ、これらの課題に10デリがどのようなアプローチを取れるかについてディスカッションを行いました。
 具体的には、

・様々な業種やライフスタイルを選択したOGへインタビュー&記事化して発信することで、働く女性や東大OGのロールモデルの少なさに起因する将来の不安を軽減

女子学生が集まれるクローズドなコミュニティやイベントを運営し、東大女子がより快適に過ごすことのできる空間をキャンパス内に創出

大学のD&I推進課への提言や協働を通じて、東大女子のリアルな要望を大学側に伝える

などのアイデアが出ました。この他にも密度の高い議論を通じて様々な面白い案が生まれ、有意義な時間を過ごすことができました。

【4】おわりに

 10デリでは新メンバーを募集しています。
 少しでも興味がある方は、来たる秋新歓の時期にぜひDiligentと10デリを覗きにいらしてください。みなさんのご参加をお待ちしています!

文責:Y、T

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