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20231009 火を灯す

"火を灯す"という焚き火と歌の会

外に出て歌い始めたいなぁ、とぼんやり思っていたけれど
「じゃぁどこから始める?」とずっと迷っていた。

長くお世話になっている人や場所もある、
最近出会って居心地のいい人や場所もある、
だけど、すべてが今のわたしを作っていると思うので、再スタート、どこでやりたいのかひとつに決められなかった。

波紋珈琲でお客さんがいなかった時に、お店のお二人と話をしていてそのことを相談した。晴耕雨読のゆうきさんが、外で歌ったら?と言ってくれた。自然の中で歌っているイメージと。なんだかビビビッと一番しっくりきてその場で決まった。

いつも、ひとりで歌う時も、思い切り歌いたいときは人のいない自然の中を探していた。特に海が一番落ち着く場所だった。

森の中だと四方八方から何かが来る、見られているような気がして、野生の血が騒ぐのか安心しきれなかったけれど、砂浜だと、その先は広い広い海なので、広々した気持ちで安心して歌えた。

中学生の時にギターを始めて毎日のように部活が終わった後、海にギターを背負って陽が沈むまで歌っていたのがやっぱり原点で、その時の感覚がやっぱりずっとある。ひとりだけれど、海で歌っていると寂しくなかった。いろんなものに包まれているようで、いくつか歌を歌ったら心も身体もスッキリして、帰り道は軽やかに家に帰ることができた。

海でライブをやろうと決めたのは8月後半だったけれど、9月はすでに予定が入っていて出来なそうで、海で焚き火ができるのはギリギリ10月の前半かな、と考えて、日付を決めた。10月に入ってから、夜ものすごく冷えたり、雨が降ったりしていたので、歌なんか聞いてられる感じじゃないんじゃないかと、ものすごくドキドキした。

また、別の不安もあった。1年間ライブをしていないと、別に人前で歌う必要はないんじゃないかと思う時もたくさんあった。新しい曲を作っていた時、アルバムの曲を選ぶ時、まず大前提が自分のために、自分の中から湧き出た歌を歌っていくのだ、という気持ちがあったので、誰かに聞いてもらった時のその先の事は未知だった。他の人がどう感じるのか、と想像したくなかった。しかも新曲ばかりで、人に聞いてもらったことのない曲ばかり。新曲を歌うライブの時はいつもドキドキしたけれど、それが新曲だらけとなると怖さは倍増。歌、いまいちだから、あなた歌わずに珈琲淹れてたほうがマシじゃない?と言われたりしたらどうする?とネガティブなわたしが心の中でささやいてきたり。

それでも、その怖さと向かい合わせで、今がいちばん自分の中で最高なんだから、今の自分が決めたことだし大丈夫だよ、とゆったり安心している自分もいた。もしがっかりされたらその時はその時だし、人からの評価のために歌っているわけじゃないんだから、わたしはわたしの歌を歌い続けるんだ、という気持ちが背中を押してくれた。

ライブをたくさんしていた頃は、外に出すことばかりに時間も心も持っていかれて、うたと向き合う時間、うたを生み出す時間が少なかったので、以前よりも今の方が、引きこもって曲作りをしているおかげで、たくさんギターを弾いて歌っていて、そこも心強さだった。習慣の力、すごいなぁ。

散歩コース

当日。朝、気持ちの良い晴れた空が広がっていた。
ヨガをして、スープを飲んで、てんさんに噛まれて穴のあいた大事な服を縫って、散歩をして、コーヒーを飲んで、リハをして、家を出た。
妹にお手伝いをお願いしたので、一緒にご飯を食べて準備をした。

湯川の海

落ちている流木を拾いつつ、ゴミも拾った。思っていたよりゴミは少なかった。焚き火に火を灯して、持ってきた鍋でお湯を沸かして、はじまりのコーヒーを飲んだ。

人の力を借りて、大きな流木を焚き火を囲う椅子にしたり、蛇みたいな、龍みたいな流木を見つけて運んでステージにしたりした。

幸いの龍フッフールが現れた!とおもった

陽が暮れていく中で、ポツリポツリと人が集まり、歌いはじめた。

大きな火、街明かり
漁火が素敵なライトに

何が起きるのかよくわからない(自分でもどうなることやらだった)焚き火ライブに、足を運んでくれる人がいること、ありがたいなぁ、幸せだなぁと噛み締めて、大事に歌を歌った。

わたしの1章と、2章。
歌えば歌うほど、焚き火の煙の中で、スーッと心と体が、その場が、ひとつになっていった。とても気持ちがよかった。

暗闇の中から、光は生まれる
暗闇の中で、光と影が出会う
歌い始めた時は青空が似合う歌が多かったけれど
今は暗いところで歌うのも落ち着くなぁと感じた

自分の中の扉を開いた感覚
再スタートの重い扉を、ようやっと開いた
みにきてくれた人も何か持ち帰ってくれただろうか

終わった後は、焚き火でジャガイモを焼いて食べて解散した。

最近出会った人、波紋珈琲のお客さん、歌を歌っているわたしを知らない人も来てくれた。歌い始めた頃を知っている人、去年ライブで出会った人、覚えていてくれて足を運んでくれた。その一歩がすべて尊い。時間を共有してくれて、ありがとうの気持ちでいっぱいだった。

ひとりで歌うのと、その先に人がいるのとでは全く違うんだったな、と感じた。ひとりで歌うと、歌があてもなく飛んでいくけれど、その先に人がいると、響き合う。どんな形で響くか、残るかは人それぞれで、わたしにはわからないけれど、でもきっと、ひとりでは起きなかったことが起こる。踏み出さなければ、出会えないものに出会える。

一度うちにこもってしまえば、外に出るのが怖くなったり、一人の楽さに外に出るのが億劫になってしまったりするけれど、人はひとりでは生きていけない。その先に人がいるからできることがあるんだと、改めて実感した。

わたしも生きているし、その先にいる人もたった一つの命を生きているんだ、と火を囲んで感じた。

自然の中で、自由に、まっさらで共有したかったので、今回のライブは本当にできてよかった。自己満足かもしれないけれど、でも確実に自分の中の大きな一歩で、何かに繋がっていく起点になりそう。

ライブをする中で、何を歌おうか考えて、アルバムに入れたい曲も固まった気がする。最後の録音、調整をしていこう。

ひとつひとつ、ここからドアを開いていく
ひとりでできる事は少ないから
周りのすべてに感謝して歩く

ありがとうございました


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