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ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied㉜

生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…

32曲目もツェムリンスキー!…ひとかけら、届くかな?

ツェムリンスキーZemlinsky(1871‐1942)作曲
トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌 Walzer Gesänge nach toskanischen Volksliedern Op.6より
愛らしいツバメさん Liebe Schwalbe  

                ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵

愛らしいツバメさん、小さいツバメさん
あなたは空高く飛び回り、朝早く歌うのね
そして空の青みにその甘いメロディを
振り撒くのね

ほら、朝だというのに
恋人たちはまだ安らかに眠っている
その囀りの歌で
眠り込んでいる人たちを起こすのね

起きて、さあ起きて!愛すべきお寝坊さん
朝のツバメが呼んでいるんだもの
さもないと夜に騙されちゃうわよ
明るい昼に眠っている人は

詩はイタリアのトスカーナ地方の民謡をドイツの歴史学者フェルディナンド・グレゴロヴィウスFerdinand Gregorovius(1821-1891)が独訳したもの。
 

 何て上手にツバメの飛行を音にしているのでしょう!前奏はツバメのスピード感ある飛びっぷりですね。前回のツェムリンスキーの曲でも綴ったのですが、歌のメロディはしっかりしがみついていないと振り飛ばされてしまうくらい音の間隔のある、歩幅の広いものになっています。その極端な上下運動はツバメの飛行そのもの。そうかと思えば順次進行で上行し、空の高みへとまっしぐらに飛び進む様も見られます。一転、第2節の中間部では同音を繰り返してのんびりモードとなり、朝寝坊している恋人たちを呆れている第三者の視線が歌われます。そして第3節に向かう間奏は、映像で言うと大きく空のツバメにパーンするように画面を揺らし、その後スピード感ある上行形で歌声部にメロディを繋いでいきます。続く歌声部は第1節のメロディの発展形で、「起きて‼昼と夜が逆転しちゃうよ」と、ツバメのセリフが歌われます。
 このツバメの飛行音型。日本歌曲の「お菓子と娘」にも出てきます。↓ ↓最後の ♪つばめの宙返り~♪ のフレーズです。そっくりだと思いませんか? 歌われているのは私の高校と大学の大先輩、小川明子さんです♪

 

 先日パラグライダーで空を飛んでいるときにツバメの大群に出くわしました!空の一角(っていうかしら?)が黒くなっていたので本当に大群でした。目を凝らしてちゃんと二つに分かれた尾っぽを確認したので確かです。グライダーに当たらないかドキドキでした。上空1000メートルでの出来事でした。また、別の日に長野の木崎湖に飛びにお邪魔したとき、ランディングでツバメの群れが、虫を食べるためヒュンヒュンと地面から2~3メートルの高さを飛びまわっていました。そして…我が家のお隣さんの軒下に毎年春になるとツバメが巣をつくって子育てに勤しんでいる姿を見かけます。私にとってツバメはとても身近な鳥です。ツバメの曲を歌うとき、様々な情景が、それこそツバメのようにヒュンヒュン脳裏に飛びまくるのです。


前回のドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied㉛にツェムリンスキーについての解説があります。よろしければご参照くださいませ。
https://note.com/utauakiko/n/n667cfc50db37

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