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ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied⑨

生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…

9曲目もヴォルフのイタリア歌曲集の中から♪ …ひとかけら、届くかな?

ヴォルフ Wolf:恋人が月明りの中、家の前で歌っている
           Mein Liebster singt am Haus im Mondenscheine
          
               ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵

恋人が月明りの中、家の前で歌っている
それを私はベットの中で聴いていなければならない
お母さんに背を向けて泣きながら
涸れることのないこの涙は血そのもの
ベットの周りに涙の川が流れるほど泣きつくし
涙で朝がきたのかもわからない
恋焦がれ、涙は滔々と流れる川になってしまった
この血の涙は私を盲目にしてしまった


前回と前々回のドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied⑦&⑧と同じく、詩はドイツの詩人パウル・ハイゼ Paul Heyse(1830-1914)独訳のイタリアの世俗詩。

 まるでショパンのマズルカに歌をのせたかのような曲。ピアノパート単独でも通じてしまうくらいです。イタリア歌曲集の他の曲と明らかに異なる造りのピアノは、極めてピアニスティックに響き、恋人の歌声、セレナーデを表しています。「何故、君はあらわれてくれないんだ!」と声色や強さを巧みに変えて、乙女を呼び出そうと必死です。それに呼応するようにベットの中でもだえ苦しむ乙女の心情が歌声部で歌われます。ピアノパートと微妙にずれている辺りが、恋人との距離感を思わせ、なんとも巧妙な造り。ヴォルフってすごい!

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ヴォルフについてはドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied⑦の最後の部分を参照にしてください。作曲家について知ることは、曲の“生まれ”を知る一つの手段。“生まれ”を知ると、その曲との距離がぐんっと縮まって仲良くなれるのです。​
https://note.com/utauakiko/n/n6d24566c60d1


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