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クラフトマンシップとの語らい

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西村邸に関わってくださった奈良のアーティストに、主宰の杉本がインタビューする対談記事。個性豊かなクラフトマンシップ=「おだやかな生産の中に濃厚につまった、誇りと願い」をお伝えしま…
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クラフトマンシップとの語らい―第5編 漆作家・阪本修さん③

漆作家 阪本修さんへのインタビュー、その③です。 その①はこちら その②はこちら 自分が注いできた技術とか時間を肯定して欲しい 杉本 ―先ほど、日々の製作の中で次にやりたいことが見つかるという話が出ましたが、今後の長期的な目標はありますか。 阪本 「気持ちとしては、そろそろ公募展に出す一点ものを作ってみたいという思いはあります。 今まで、手に取ってもらえる値段の中で表現してきたことも面白いけど、『いまの自分の時間と技術と神経を全部注ぎ込んで作ったら何ができるんやろう。』

クラフトマンシップとの語らい―第5編 漆作家・阪本修さん②

漆作家 阪本修さんへのインタビュー、その②です。 その①はこちら 自分が作るなら、身の回りで使うものを作りたい 杉本 ―奈良に帰ってきてからは、すぐにご実家の仕事を手伝われたり、自分の仕事を始められたんですか。 阪本 「いえ、恥ずかしながら、何の伝手もない状態で帰ってきて、最初の頃は何をしていいのかわからなくて。 技術を持っているという自負はあったので、とりあえず気合いを入れて作品を作って、公募展にエントリーしたんです。ありがたいことにそれで賞を頂けて、『俺、この世界で

クラフトマンシップとの語らい―第5編 漆作家・阪本修さん①

こんにちは。西村邸の杉本です。 西村邸に関わってくださる作家さんへのインタビュー不定期連載【クラフトマンシップとの語らい】。第5回は、漆作家の阪本修(さかもと・おさむ)さんにお話を伺いました。 阪本さんは、奈良市出身で、いまも奈良で活動を続ける漆作家さんです。(プロフィールやお仕事は、こちら↓からどうぞ) 4月2日,3日に西村邸で開催する【工藝合宿】と題したイベントに、ワークショップ講師兼お茶会の亭主としてお越し下さいます。 当日は、漆に触れてお箸塗りを体験するワークショ

クラフトマンシップとの語らい―第4回 池田含香堂6代目・池田匡志さん③

奈良団扇(ならうちわ)の池田含香堂(がんこうどう)6代目・池田匡志さんへのインタビュー、完結編です。(前回までの記事はこちら→ ①、② ) 手づくりの団扇の良さを知ってもらうために、奈良に在る実店舗を盛り上げ、実際に手に取ってもらいたいと語る池田さん。 さらにその先、奈良、工藝全体へ向ける視点についてお話しいただきます。 新しい事って、失敗するまでやらないと、どれが正解なのかわからない 杉本 ―実店舗への注力の他に、これから力を入れて取り組まれたいことはありますか。

クラフトマンシップとの語らい―第4回 池田含香堂6代目・池田匡志さん②

奈良団扇の池田含香堂6代目・池田匡志さんへのインタビュー、2本目です。(前回の記事はこちら→① ) 「家業を継いで間もない頃よりも、いま現在の方が、ある種のプレッシャーを感じる」と語る池田さん。そんな現状の中で、大切にされているポリシーについて伺います。 「僕が好きな奈良団扇への評価ではなくなってしまいますから。」 杉本―いま、お仕事をされている中で、一番大事にされていることは何でしょうか。 池田さん「そうですね…これは、中学生の頃、6代目を継いだ頃、そしていまもずっと

クラフトマンシップとの語らい―第4回 池田含香堂6代目・池田匡志さん①

こんにちは。西村邸 主宰の杉本です。 西村邸に関わってくださる、職人さん/作家さんへのインタビューを記事にする「クラフトマンシップとの語らい」。 ゆったりとした不定期連載ですが、4回目になりました。 今回は、2020年夏に西村邸で開催した制作体験&展示販売会【工藝合宿】にて、奈良団扇(ならうちわ)づくりのご指導をいただいた、池田含香堂(がんこうどう)6代目・池田匡志(いけだ ただし)さんへのインタビューです。 池田さんのお父様、お祖父様、さらにはその先代から連綿と続く

クラフトマンシップとの語らい―第3回 一刀彫作家・ヒガシダモイチさん(第4章)

【クラフトマンシップとの語らい】ヒガシダモイチさんへのロングインタビュー、いよいよ最終回の第4章です。 『NARADOLL HIGASHIDA』、そして『西村邸』、それぞれのビジョンに切り込んでいきます。 『一刀彫本来の姿』とは杉本 ―ビジョンっていう言葉がさっき出ましたけど、いまの『NARADOLL HIGASHIDA』のビジョンはどういったものなんでしょうか。 モイチさん「『一刀彫本来の姿を目指します』っていうのが、NARADOLLの一番のビジョンやね」 ―『本来の

クラフトマンシップとの語らい―第3回 一刀彫作家・ヒガシダモイチさん(第3章)

【クラフトマンシップとの語らい】ヒガシダモイチさんへのロングインタビュー、第3章です。 話題はいよいよ、いまの時代に“手作り”をする意義へ。それを語る中で、山村の暮らしにも踏み込んでいきます。 工藝の“気持ちよさ”は、上り坂でペダルを踏み込む力になるモイチさん「ボクから逆に聞きたいねんけど、杉本君にとって工藝ってなに? 一刀彫や工藝にどういうイメージを持ってる?」 杉本 ―うーん、改めて聞かれると難しいですね。 「難しいよね。前に話したとき、杉本君が『西村邸自体を工藝的

クラフトマンシップとの語らい―第3回 一刀彫作家・ヒガシダモイチさん(第2章)

【クラフトマンシップとの語らい】ヒガシダモイチさんへのロングインタビュー、第2章です。 第1章は、ご自身が立ち上げたブランド『NARADOLL HIGASHIDA』の指針が決まるまでのお話を、ひな人形業界や、アーティスト性なども絡めながら聞かせていただきました。 第2章は、動き始めたNARADOLLが、どうやってお客さまに届いていったのか。そしていま現在、大切にしていることが語られます。 意外なマッチングを生み出す、批評の重要性杉本 ―いまNARADOLLを喜んでくださる“

クラフトマンシップとの語らい―第3回 一刀彫作家・ヒガシダモイチさん(第1章)

こんにちは。2回目から少し時間が空きましたが、『西村邸』杉本雄太によるインタビュー企画【クラフトマンシップとの語らい】第3回です。 今回のお相手は、奈良一刀彫作家のヒガシダモイチさん。2019年末に西村邸で、大阪のクリエイターさん達を招いての、体験会&展示会を開催してくださいました。(当日の様子はこちら。) お爺様から続く工藝作家の3代目でありながら、柔軟な感性を持つモイチさんの人柄は、ご自身のブランド『NARADOLL HIGASHIDA』の、親しみやすい世界観にも現れ

クラフトマンシップとの語らい―第2回 庭師、茶道家・土屋裕さん(後編)

土屋裕さんとの対談、後編です。 前編では、土屋さんが、県外から奈良に引っ越されてくるまで。修業時代のお話を伺いました。 後編では、現在のお仕事のスタンスや、奈良とのかかわり方について伺っていきます。 杉本 ―古川先生のもとから独立されてからのお庭の仕事は、奈良が中心ですか。 土屋さん 「そうですね、他の地域は、呼ばれたら行くくらいの感じで。」 ―庭造りに、地域性みたいなものはあるんでしょうか。 「気候がありますからね、まず植えるものが変わってきます。あとは、石が違

クラフトマンシップとの語らい―第2回 庭師、茶道家・土屋裕さん(前編)

「クラフトマンシップとの語らい」2回目です。 今回のお相手は、庭師・茶道家の土屋裕さんです。西村邸のお庭を整えてくださった庭師であると同時に、最初のイベントである【お披露目茶会】にてお点前を披露してくださった、茶道家でもあります。 奈良町周辺の様々な施設で庭造りのお仕事をされながら、独自の飾らないスタンスで、お茶の稽古・茶会を開いていらっしゃいます。 ご自宅は、山陵町(みささぎちょう)という、奈良町から少し離れたところにある、少し山間の静かなエリアにあります。その中でも

クラフトマンシップとの語らい―第1回 妖怪書家・逢香さん(後編)

こんにちは、西村邸主宰の杉本です。 逢香さんとの対談、後編です。前編では、学生時代のルーツから、現在に至るまでのキャリアについて、お聞きしました。後半は、現在の活動から、これからの展望について、話していただきます。 杉本 ーいま現在の制作で、逢香としてのブランドづくりというか…妖怪×書道の時点で、突き抜けたオリジナリティがあると思いますが、その他に大切にしていることってありますか。 逢香さん「ブランディングっていう程でもないですけど…奈良で自分の制作を再開したタイミング

クラフトマンシップとの語らい―第1回 妖怪書家・逢香さん(前編)

こんにちは、西村邸主宰の杉本です。 西村邸は、これから活動していく上で、大切にしたいことをまとめて、「3つの宣言」として掲げています。 1.永く付き合える、もの と ことを愛します 2.クラフトマンシップを愛します 3.きょう会える、あなたを愛します この記事は、2つめの「クラフトマンシップ」についてのものになります。 Craftsmanshipを日本語に訳すと、「職人技」でしょうか。ぼくはこの言葉の中に、「おだやかな生産の中に濃厚につまった、誇りと願い」という意味を