シェア
金属の目録に眼を通した あらゆる色彩がひび割れる時刻に 百万年かけて落下する思考の速度で 澱んだ大気の底に広がる地衣類のような 金属の結晶が犇めく都市の上空から 走査電子顕微鏡の稠密な眼差しが ヒトや建物や樹木や獣を舐め回している 無感動の水位が上昇してゆく この世界が確実に一人ぼっちなのは そのせいなのか あなたはそれを彫金細工に仕立て上げ 賑やかな観光地の街頭で 晴れやかな顔をした人たちを相手に 僅かばかりの値段で売ろうというのだ 誰の所有
・Geometrical arachnida・「|/「/│/┌─―|/┌─―/― 幾何学的なくせにネバネバした、巨大な蜘蛛の巣に過ぎなかった都市は、街のそこら中で汚れた糸が筋を引いて、互いにくっ付き絡まり合って、全くにっちもさっちも行かなくなった。あちこちに転がる黒灰色の塊の中には、大量のアブラ虫やシデ虫や、臨海工業地帯ではフナ虫が巣を作り、ザワザワ出入りしてはそこら中を這い回っている。 /┌─―/「」/│/┌─/─/ ・Three-dimensional lattice