「うたのま」の背景

こんにちは!
うたのま実行委員会会長の岡田知理(おかだともみち)と申します。

6月の投稿では団としての抱負などを、いわば公的な声明として発表させていただきました。
この記事では私個人の思いなどを交えて、「うたのま」構想のきっかけや創設の背景などをお話しできればと思っています。

私の来歴

私は小学校3年生の時に故郷である長崎で合唱音楽に出会い、以来その虜になっている一介の愛好家です。
紆余曲折あり、現在は東京藝術大学の音楽学部で音楽学を専攻しています。
今年で学部に在籍して4年目になるのですが、これまで様々なジャンルの音楽やそれらの学問的背景に触れつつ、様々な分野で才能をもった同世代の学友の活躍を目にしてきました。
この大学で過ごした3年半を通じて私が改めて気づいたことは「私は合唱音楽が好きだ!」「合唱音楽に微力ながらも貢献していきたい!」という純粋な思いでした。

「うたのま」構想のきっかけ

構想のきっかけといってもそれは大それたことではなく、私が大学卒業を控えていることから、記念に大きなイベントをやってみたい!というものでした。私がこれまでにお世話になった関係者や関係団体が一堂に会する場があったらいいなと思いました。私の人生の大きな区切れに合わせてマイルストーンを置いておきたい、ただその程度の軽い気持ちでした。

このときに漠然と思っていたのは、私の独壇場にしたいわけではない(だったら合唱団を新設して単独で演奏会を主宰すればいい)、ということです。またそれに関連して、そこにつどった人間同士のつながりや関係性が絡み合って、新しい何かが生まれる場をプロデュースしたいということでした(本当に漠然としてますね……)。そこから私の思いは徐々に膨らんでいくことになります。

「うたのま」へ至るまで

作曲家の信長貴富さんがある動画の中で「一度思ってしまったその思いは誰にも止められない」という趣旨のことを話されていました。私もこれにもれなくあてはまる人間だったようです。

私の漠然とした思いは、周りの人に打ち明けながら、「合唱音楽を中心とする芸術文化の振興に貢献」する任意団体の設立、という形で徐々に具体化されつつあります。これが「うたのま実行委員会」です。当然これは現在進行形で、もしかしたら私のライフワークになるかもしれません。

4〜5年前には常設の合唱団をつくりたい!と思っていた時期もあり、そのときのラフなメモが残っています。私のやり方は「合唱団」という形ではなくなりましたが、私がやりたいこと・やろうとしていることの根幹は、この頃からぶれていないように思います。

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「うたのま」に込めた思い

実は、「うたのま」という名称は常設の合唱団を立ち上げようと思っていた頃にはすでに思いついており、ずっと心の奥底であたためてきたものでした。日付が記録されていないのが惜しまれるところですが、これもメモが残っています。

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「ま」が私にとってのキーワードであるようです。時間、空間、人間……など、この世界のすべてをひっくるめた、極めてシンプルかつ複雑な概念だと私は捉えています。

当然、「床の間」も意識しています。
家屋の中に当たり前に在りながら、来客を出迎え、もてなし、日常にちょっとした彩りを与えてくれる場所です。そこで行われる会話や、築かれる人間関係などにも想いを馳せます。日常の中でハレの舞台を演出してくれるスペースだという認識です。

「うたのま」構想が軌道に乗り出した今年の3月に私が書いたポエム(のようなもの)があります。粗も多いし、心奥を打ち明けるような恥ずかしさもありますが、この場を借りてシェアしたいと思います。

「うたのま」は、漢字にすると「歌(詩、唄、謡、詠、頌、吟…)の間」。

「間」とは空間性と時間性の両方が同居する、日本・東洋思想独特の概念である。概念的な側面だけでなく物質的な側面をもあわせもつ。さらには、人間関係にも拡張される概念である(“友人間”など)。

「床の間」は、ハレの舞台を演出する空間。そこには精神的な余白があり、物質的な余裕がある。日常のほんのちょっとした隙間にたたずみ、来客をおもてなししては、わたしたちの豊かな人間関係を演出してくれる。

「うた、の、ま」を作りたいんだなって私は思った。うたがある空間、時間、うたにまつわる人間関係。うたが自然と演出してくれるハレの舞台。

過度な熱狂はいらない。派手なパフォーマンスもいらない。ありのままの私たちが、ありのままの私たちで、ありのままにつくりあげる、「うたのま」。

そんな「うたのま」で育まれるのは、私たちのたったひとつの大切なうたの世界。たった一度きりの大切な音楽の調べ。そのたったひとつ、ひとつの思い出を心の糧とし、そして私たちはまた再び、日常へと帰っていくのだ。

2021年3月22日 岡田知理

さいごに

以上、これまでを簡単に振り返りながら、私の思いの丈を綴ってみました。
前回の投稿では「アマチュアの文化に焦点をあてる」ということが強調されていましたが、私も例にもれず「アマチュア」です。「アマチュア」とは何かという議論は一旦脇に置くとして、少なくとも芸術文化で生業を立てている、立てようとしている者ではありません。そんなちっぽけな私に何ができるのだろうか。自問自答する日も少なくありません。

しかし、先にも確認した通り、私は「合唱音楽が好き」で「合唱音楽に微力ながらも貢献していきたい」のです。その純粋な思いだけでここまで様々な経験をさせていただいてきました。たくさんの出会いやめぐりあわせがありました。今この瞬間も素敵な仲間に恵まれています。

よって、これからもこれまでと同じように「できること、できるとき、できるだけ」の精神で、たとえ蝸牛の歩みになったとしても、私たちにできる取り組みを進め、深め、そして広げていきたいと思っています。
今後とも応援のほどよろしくお願いいたします!

2021年12月3日 岡田知理

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