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未熟者たちに長い目を――ファイターズの未来へ

■ どうしてファイターズは勝てないの?

プロ野球が開幕してはや1ヶ月、地元球団ということもあり個人的に応援している北海道日本ハムファイターズ3・4月の成績は、28試合を消化して
9勝19敗、勝率.321の借金10でリーグ最下位という位置に沈んでいる。

この成績に対する率直な感想は……

ま、そりゃそうだわな^m^

この一言に尽きるだろう。

2022年の今シーズンは、昨年まで実に10年という長い間チームの指揮を執ってきた栗山英樹監督が退任し、新たにBIGBOSSこと新庄剛志氏を監督に招聘しての「船出」の年である。

このBIGBOSS、昨年11月の就任当初から年末年始にかけて、本職の野球関係はもちろん、野球とはまったく関係のないバラエティ番組、CM、挙句の果てにはファッションショー(笑)と、とにかく、ありとあらゆるところに露出しまくっていた。
いわゆるBIGBOSSフィーバーとかいう代物である。

チーム自体はここ3年間連続してBクラスと低迷しており、とりたてて世間を騒がせるような注目の大物ルーキーが入団したとかいうわけでもない。
通常であれば、ことさらに注目を浴びるようなこともなくひっそりと開幕を迎えるはずだったのだろうが、年末年始のBIGBOSSの「営業努力」の賜物で、各種スポーツニュース等での扱いはもとより、本来あまり本腰入れて野球など取り扱わないようなワイドショー等にまで注目されて3月25日の開幕を迎えることになった。

オープン戦の戦績もまずまずだったこともあり、

実際に開幕したら一体どんな戦い方をするのだろう、
なにかしらやってくれるのではないか、

そんな期待も大きかったかもしれない。

が、いざフタを開けてみたら、開幕から

怒涛の5連敗というロケット逆スタート

を皮切りに、その後も、ここ5年間で4度のBクラス、3年連続で5位ブービーという「実力」をいかんなく発揮しながら、5月の大型連休を終えてもなおチームは着々と敗戦を重ねている。

期待が大きかった人ほど失望の度合いも大きかったのではあるまいか(^^ゞ。

では、このチームがこれほどまでに勝てない原因がどこにあるのか、ズブズブの素人目線で考察してみたい。
SNS等、世間一般の意見を見ると

「投手が悪い」
「野手が打てない」
「BIGBOSSの采配がめちゃくちゃすぎる」(笑)

まぁ様々な見方があるようで、そのどれもがそれなりに的を射た指摘だと思う。
が、個人的にはもっと根本的かつ決定的な弱さの原因をまず一番にあげたい。

それは――

そもそもチームがあまりにも未熟すぎる

という点だ。
なにがどう未熟なのか。

それを考察するために、まず始めに、チームを構成する選手の年齢について見てみることにする。
他のパ・リーグ5球団の支配下登録選手の平均年齢(開幕日:2022年3月25日現在)とファイターズのそれとを比較してみると――

●オリックス 26.5歳(65人:最年長42・最年少18)

【投手:33人:27.1歳(上42・下18)/野手:32人:25.9歳(上34・下18)】

●千葉ロッテ 26.2歳(67人:最年長36・最年少18)

【投手:35人:25.7歳(上35・下18)/野手:32人:26.8歳(上36・下18)】

●東北楽天 26.6歳(69人:最年長38・最年少18)

【投手:35人:26.9歳(上37・下18)/野手:34人:26.2歳(上38・下18)】

●福岡ソフトバンク 26.0歳(68人:最年長41・最年少18)

【投手:33人:26.2歳(上42・下18)/野手:35人:25.9歳(上38・下19)】

●埼玉西武 26.0歳(63人:最年長39・最年少18)

【投手:30人:26.0歳(上39・下18)/野手:33人:26.0(上38・下19)】

実際に調べてみての感想としては、
・以前は主力野手にベテランが多いイメージだった福岡ソフトバンク野手の平均年齢が大分若返ったかな、
・逆に、若くて有望だけどまだまだ粗削りやなぁ、という選手が多かった印象のオリックスの平均年齢が、投手・野手両方とも意外と上がっていて、これはチーム全体として順調に成長しているということやろか (去年リーグ優勝してるし)、
・ベテラン先発投手や大物FA野手を多く擁する東北楽天の平均年齢ってやっぱ高いな、

…といった感じか。

平均年齢からみた単純な順位は、年齢の高い順に
東北楽天、オリックス、少し離れて千葉ロッテ、そのちょい下に福岡ソフトバンクと埼玉西武
といったところ。

そして我らが北海道日本ハムはどの位置に入るのか……………
(心の中でドラムロール)

25.1歳(67人:最年長38・最年少17(*1))

【投手:33人:25.3歳(上38・下17)/野手:34人:24.8歳(上33・下18)】

*1: 最年少17:目ざとい人は「いやいや、プロ野球になんで17歳がおるんや(笑)」と疑問に思われるかもしれないが、昨年のファイターズのドラフト1位・達孝太投手は2004年3月27日生まれという限りなく今年の現役高校3年生に近いチョー早生まれの子なので、今年の3月25日の開幕日現在では、まだ17歳なのである。こらしゃーない。

……若っ!

ファイターズだけ、平均年齢が唯一の25歳代、次に若いチームがソフトバンクと埼玉西武の26.0歳なので、コンマ下の僅差ではなくほぼまるまる1歳違うという若さだ。
これ、支配下登録選手約70名での平均年齢で見るまるまる1歳差なので、たかが1歳という印象以上の大差だったりもする。

この若さは野手においてより顕著だ。
上記のとおりファイターズの野手の平均年齢は24.8歳、他球団に比べるとこれまた断トツに若く、こちらは次に若いオリックス、西武の25.9歳とは1歳以上の開きがある。

平均年齢の若さもさることながら、さらに注目すべきは、ベテラン不在のいびつなメンバー構成だ。

ファイターズの野手には35歳以上のベテランは存在しない。

野手の最年長は昨年シーズン途中に埼玉西武からトレードで移籍してきた木村文紀の33歳である。他球団ならまだまだ中堅の33歳がチーム最年長というのも、考えてみればなかなかにイカレた状況なのだが、実は、そもそも30代の選手を全部かき集めてみても、木村を含めわずか5人しかいない
 
(杉谷拳士、中島卓也、谷内亮太がそれぞれ31歳、アリスメンディ・アルカンタラが30歳……ていうか、5人中1人は新外国人だし、生え抜きの30代は杉谷と中島の2人だけかいw)。

若い。いや、もはや若いを通り越してただひたすら青い。青すぎる

ただ、若くても高卒入団一年目からしっかりと実績を重ね、一軍・二軍のプロの世界で経験を積めば、年齢の割に経験豊富な選手になることは十分可能である。単純に「平均年齢が低い=未熟」と直結するのはいささか短絡的にすぎるというものだ。
次の章では、そのあたりにフォーカスし考察してみたい。 

■ 若すぎるぜ――野手編

では、単純な年齢ではなく「実績」(あるいは「経験値」という言い方も可)という側面でみた場合はどうだろうか。

実績(経験値)という観点から見たファイターズ野手陣 (一軍での総打席数順)を示したのが下記表-1である
(実績という観点なので新人ルーキー及び新外国人選手は割愛。また、名前の前に*がついている選手は開幕一軍ロースターに入った選手を表している)。

また、選手個々の具体的な数字は割愛するが、チーム全体としての総経験値(表-1でいうところの総打席数の項目のトータル) を他球団と単純比較すると次のとおり。

●オリックス  27,696
●千葉ロッテ  31,046
●東北楽天   44,174
●ソフトバンク 38,160
●埼玉西武   33,478

そして、北海道日本ハム 19,954

ファッ!???( ゚Д゚)……こ、このベラボーな差は…。
ファイターズの次に少ないオリックスと比べても7000打席強の差があり、一番経験値の多い東北楽天との差においては、約25,000打席もの経験値の差があるではないか。
ていうか、ファイターズって、東北楽天の半分以下 (約45%) の経験値しか持ってないのん??( ゚Д゚)??


単に数字だけで比較したら、なにこれ、ファイターズだけ毎試合5回までしか攻撃してないんか?(笑)……とかいってイジられてしまいそうな大差にも見えてしまう。
無論、これは選手個々のこれまでの実績を積み上げて単純に総量化しただけの話ではあるが、少なくともここから窺えるのは

ファイターズの野手はチーム全体としての経験値が他球団に比べ圧倒的に少ない

ということである。

他球団より全体的な経験値が不足しているという点も問題だが、それに付随してより致命的な問題がある。
それは、表-1の右端の項目、規定打席をクリアした経験のある選手があまりにも少ないという点だ。

規定打席(*1)は、ザックリ言えば1年間レギュラーとしてしっかり試合数をこなしたという目安でもあるが、これをクリアした経験、つまり1シーズンをレギュラーとして戦い抜くことができた、という実績を持つ選手が、
ファイターズには
近藤健介(5回)、中島卓也(4回)、渡邉諒(2回)、淺間大基(1回)、松本剛(1回)
たった5人しかいないということになる。

*1:規定打席:規定打席とは、リーグの打撃ランキングの対象となるのに必要な打席数のことであり、具体的には「所属球団の試合数×3.1(小数点以下四捨五入)」で求められる数字。ここ数年は143試合が1年の試合数なので「143×3.1=443」が規定打席数となる。
この規定打席に達しているかどうかは、その選手が1シーズンを通してレギュラー起用されたかどうかを見る基準でもあり、規定打席に達していればまずまず1年間一軍で頑張ったと胸を張れる数字ということができる。

さらに言えば、本当の意味でのチームの主力コア選手――規定打席数クリアを3回以上達成――という基準(*2)で見てしまったりなんかしたら、事態はさらに深刻だ。
そのような高いレベルで信頼に値する選手となると、ファイターズには近藤健介(5回)と中島卓也(4回)の2人しかいないのだから。

……むう。ワタクシ、野球は9人で戦うものだと聞いていたのですが……
( ̄∀ ̄)。

*2:本当の意味でのチームの主力コア選手という基準:規定打席を複数回、それも3回クリアしているということは、それだけレギュラーとして1シーズンをこなす可能性が高い、ということを示す。これは、故障等で離脱したり、あるいは極度の不振でスタメンを外されるという期間がない(あったとしても短い)ということを意味するので、チームを指揮する側からすれば、この上なくありがたい存在、まさに頼りになる主力選手といえよう。
 なお、選手の中にはほぼ1年頑張ったけど規定打席にはギリギリ到達できなかった、という選手もいたりするので、1年間レギュラーで出続けた場合に立つだろう500打席×3年=1500打席という経験値を持つ選手も、ほぼ「主力選手」と見て差し支えないかもしれない。そういった意味では、上記表-1のとおり、木村文紀杉谷拳士両名は、規定打席経験なっしんぐではあるが、そこそこの経験値を持つスーパーサブとみていいかもしれない。

無論、そのように「安定感抜群の主力選手」を9人まるまる全部揃えられるチームなんて実際にはないのだが、それにしたって2人はさすがに少なすぎるやろ――て話www

ただ、いうても他球団だって実はそんなに変わらないんじゃないの?
一縷の望みを抱いて、同じ条件での他球団の状況も見てみる――

●オリックス:8人(3回以上:3人)

 T.岡田(6)、安達了一(5)、吉田正尚(4)、福田周平(2)、西野真弘(1)、
 宗佑磨(1)、杉本裕太郎(1)、紅林弘太郎(1)

●千葉ロッテ:9人(3回以上:4人)

 角中勝也(7)、荻野貴司(2)、ブランドン・レアード(6)、中村奨吾(4)、
 田村龍弘(1)、井上晴哉(3)、藤岡裕大(2)、レオネス・マーティン(2)、
 安田尚憲(1)

●東北楽天:12人(3回以上:7人)

 浅村栄斗(11)、鈴木大地(9)、西川遥輝(8)、銀次(7)、島内宏明(5)、
 炭谷銀仁朗(2)、岡島豪郎(3)、茂木栄五郎(4)、川島慶三(1)、
 辰己涼介(1)、田中和基(1)、小深田大翔(2)

●福岡ソフトバンク:10人(3回以上:5人)

 松田宣浩(10)、今宮健太(5)、中村晃(8)、柳田悠岐(7)、
 アルフレド・デスパイネ(4)、明石健志(1)、甲斐拓也(2)、上林誠知(2)、
 栗原陵矢(2)、中谷将大(1)

●埼玉西武:8人(3回以上:6人)

 栗山巧(12)、中村剛也(9)、森友哉(5)、金子侑司(2)、源田壮亮(5)、
 外崎修汰(4)、山川穂高(3)、呉念庭(1)

改めて併記すると

●北海道日本ハム:5人(3回以上:2人)

……アカン(・_・)
こうして比較してみると、やっぱしファイターズの「主力選手」は少ない。少なすぎる。
「規定打席3回以上クリア」の人数で、かろうじてオリックスの3人がファイターズと大差ない数字だが、そのオリックスとて、規定打席クリアの人数はファイターズより3人も多いし、その他の球団と比較しようものなら、人数的にほぼ倍以上の差をつけられているではないか。

また、「経験値豊富な主力選手」の単純な人数差もさることながら、他球団との比較でより鮮明になるのがファイターズの構造的欠陥である。 

以下の表-2は、各球団の野手の一軍経験値から見たチーム内の位置づけを経験値帯で分類して図示したものである。

これを見て分かるのは、ファイターズにとって最も一軍経験が豊富でチームリーダー的な立場の選手はまぎれもなく近藤健介であるが(*3)、その同じ経験値帯(3000打席~)を見ると、どの球団も
トップクラスではあるが決してトップではなく
その上にはより経験豊富なベテランが存在する、ということが分かる。

そう、ファイターズのチームトップの「主力選手こんちゃん」は、東北楽天か福岡ソフトバンクあたりに行けば、幾人もいる中堅選手の一人にすぎないのだ。

*3 : まぎれもなく近藤健介であるが:近藤健介とほぼ同等の経験値を持ち、さらに年齢的にも年上の野手に中島卓也がいるので「まぎれもなく」と断言するのはいささか心苦しい。なんなら全国の中島卓也ファンの女性から総スカンを食らいそうなところでもあるが、近年の打撃の不振ぶりやセールスポイントである守備面でもしばしば見られる精彩を欠くプレー等から、中島の出場試合数は年々減少傾向にある。このことからしても、野手のチームリーダーはどっち?と問われたら、中島及び中島大好き女性カンパニーの方々には申し訳ないが、近藤健介一択と言わざるを得ない。御容赦あれ。

これが何を意味するかというと、近藤健介にはチームを引っ張っていくうえで何か迷いが生じたり行き詰ったりした時に、彼にはまだない経験値を踏まえて適切なアドバイスをくれたり、あるいは有形無形さまざまなフォローをしてくれたり、といった頼るべき「ベテラン」の先輩がいない、ということだ。
チームリーダーが必ずしもチーム最年長選手である必要はない。
だが、若きチームリーダーの脇を固める経験豊富なベテランが

「誰ひとりいない」

という状況はさすがにキツくなかろうか。
この状況で、さらに経験の少ない連中を引っ張って山あり谷ありの長い1シーズンを戦い抜けとかいうのだから、もはや単にキツいというより、いやそれ一体何の罰ゲームやねん、て言いたくもなろうて。
そら、脇腹もいわしたくなるってものだ(*4)

*4:脇腹もいわしたくなるってものだ:ファイターズにとって唯一無二の中心選手である近藤健介は、さる5月4日の練習中に右脇腹を痛め、右内腹斜筋の肉離れ(2度)という診断を受けてチームから離脱した。試合復帰まで約8週間、その後の筋力回復、ゲーム感の取り戻し等を考慮すれば本格的な一軍復帰は順調に経過してざっと3か月後といったところか。「近藤健介とゆかいな仲間たち」の打線から近藤健介が抜けるという、ファイターズにとっては一番シャレにならない事態となってしまった。
 無論、まわりに頼るべきベテランの先輩がいないからイジけて負傷した、などということでは断じてない。まずは何よりも、身体第一でお大事にしてもらいたい。

また、打線を組んだ場合においても、ファイターズは近藤健介レベルの経験値がアッパーであり、その他のメンツは (あくまで経験値ベースで見るなら)誰をどのように組んでも大差なく、実際に並べてみると格落ち感すら漂ってくる。
そうなると、当然相手バッテリーのマークは近藤一人に集中するし、もし相手投手・捕手いずれかが近藤健介レベルの経験値を持っていたなら、そのバッテリーにとってのファイターズ打線は、もはや打ではなく
「近藤健介個人軍」言わば「近藤健介とゆかいな仲間たち」にすぎない。

まぁ、実際問題としてそこまで極端に見下されるようなことにはならないのだろうが、経験豊富な打者が居並ぶ他球団の打線に比べたら、ファイターズ打線ははるかに与しやすいことだろう。

今年の(ていうか、ここ数年に共通する)ファイターズの戦い方に顕著にみられる傾向に

「ここぞというチャンスに1本が出ない」(*´Д`)
「塁上はにぎわすけど一向にホームに帰ってこない」( ̄д ̄)
「ランナー三塁に置くと急に打てなくなる」(T_T)

とかいうもどかしいパターンが見られるが、
さもありなん、試合を決定づける攻撃側のチャンス(=守備側のピンチ)では相手バッテリーの攻め方もよりシビアなものとなるのが必定。

そんな時こそ対峙する選手各々はそれまで積み重ねてきた経験値をフル活用して相手バッテリーの厳しい攻めを凌駕していかねば得点にならない。 

それなのに、ファイターズには圧倒的に一軍での実績が不足している選手しかいない。しかも、そのキャリア不足をアドバイス等で少しでも補えるような経験豊富なベテランさえいない。そりゃあ、対処しようにもなかなか難しいってものだろう。

技術的な差とは別に「ここで絶対ランナーを返さねば」という余計なプレッシャーがマイナスに作用して普段の実力が発揮できない、という部分もあるだろうが、そういったメンタル面の弱さもひっくるめて、
場数(経験値)の踏み方が足りない」ということでもある。

残念ながら、経験値の低い選手が「チャンスに弱い」のは、別に不思議なことではない。少々キツい言い方になるが、ある意味「当然の結果」とも言える。
だから、チーム全体として経験値の低いファイターズの野手陣にとって

「少ないチャンスを確実にものにする」とか
「得点圏で必要最低限なバッティングをして1点をもぎとる」

とかいう高度(笑)な野球は、
最終的に目指す理想ではあるが、現時点では相当ハードルの高いミッションでもある。

ぶっちゃけ今のファイターズで最も蓋然性の高い得点方法は、
相手バッテリーの攻め方がそこまでシビアにならない場面(ランナーなし若しくはランナー1塁)でのホームランだけといってもあながち間違いではない気がする。

ちなみに、2004年にパシフィックリーグに新規参入した東北楽天ゴールデンイーグルスの1年目ってどうだっただろう。
分配ドラフトで投手中心に獲得したこともあり、野手については相当キビシかった印象が当時あったので、現在のファイターズ野手陣なみに一軍キャリアの乏しい選手層だったのかなぁ……と思い改めて調べてみた――

 捕手:中村武士(6回)、
 内野手:大島公一(8回)、山﨑武司(4回)、吉岡雄二(5回)、
 外野手:飯田哲也(6回)、関川浩一(4回)、礒部公一(4回)、益田大介(1回)

規定打席数を3回以上クリアしている「主力選手」が7人、1回クリアの益田大介を入れると規定クリア経験者が8人もいて、しかも、捕手1人、内野手3人、外野手3人(+1人)と、めっさバランスまでとれてるやん。

あの、11連敗をシーズン2度も記録し、38勝97敗1分 勝率.281という圧倒的な最下位に沈んだ2005年の東北楽天でさえ、(単純に)キャリア面だけ見れば今年のファイターズよりははるかに上の野手陣なのだ。

つまり、いささかこじつけめいた乱暴な言い方をすれば、今年のファイターズは(少なくとも攻撃面においては)100敗してもおかしくないくらい、勝ちを拾うには未熟なチーム、そういえるのかもしれない。

■ 若すぎるぜ――投手編

チーム単体で見てもライバル他球団と比較してみても、打撃陣はどうやらめっさ頼りなさげだということが垣間見えたところで、次は、昨シーズン
チーム防御率リーグ3位と健闘した投手陣について見てみたい。

打者同様、こちらも実績(経験値)という観点から見た、総投球回数順の投手陣のラインナップを見てみる。
(名前の前の*は開幕ロースター入り、ただし河野竜生は3月26日、吉田輝星は3月27日、上沢直之は3月29日と時間差で登録されているが、ここでは実質的な開幕ロースターとして扱っている)

うーん……。
こうしてみると、投手陣の方も実績ベースの観点から見るとなかなかにキビシそうだ。

なにがキビシいって、先発投手の頭数、全然足らんもん(^^ゞ

先発投手の実績を見る上で重要な指標のひとつが規定投球回数であるが、規定投球回数をクリアするのも近年ではけっこうハードルが高い(*1)という点を考慮してもなお、ファイターズにおける「実績のある先発投手」は少ない。

*1:「中6日ローテーションの確立」の影響もあり、規定投球回数をクリアするのはけっこうハードルが高い:
投手の規定投球回数とは、ざっくり言えば打者における規定打席数という指標に相応し、主に先発投手が1年間しっかりローテを守って投げましたね、という目安。具体的には「規定投球回数=チームの試合数」であり、近年では143(イニング)ということになる。ちなみに、「規定投球回数をクリアするのはけっこうハードルが高い」ということについては、いずれ別稿で考察してみたいテーマだが、結論から言うと「日本式の中6日ローテで規定投球回数をクリアできるのは、ごくごく限られた投手だけ」となる。

規定投球回数をクリアした経験のある投手が、チーム全体で金子千尋(8回)、上沢直之(2回)、加藤貴之(1回)、伊藤大海(1回)のわずか4人

しかも、打者同様に「規定投球回数を複数年(3年間)クリア」というのを信頼できる「主力コアローテ投手」と定義するなら、その条件をクリアできているのは金子千尋ただ一人ということになってしまう。

規定投球回数クリアの難易度を考慮して143イニングではなく「年間100イニング以上」と多少ハードルを下げてみても、上沢と加藤のキャリアがちょっとだけ増え、
「金子千尋とゆかいな仲間たち」がかろうじて
「金子と上沢と加藤となかまたち」になるだけで、人数的な頭数が増えるわけではない。
(……やらなきゃよかった…(*´Д`)

しかも、2018年オフにオリックスから移籍してきたチーム随一のベテランにして球界を代表する名投手でもある金子千尋について言えば、断トツの実績(8回)を誇るものの、御年38歳。ここ2年で勝ち星わずか1勝、とかつての威光にも翳りが見え、今年に至っては5月に入ってようやく一軍ロースターにお呼びがかかったという状態である。
現実問題として「主力コアローテ投手」にカウントできるかというと、まぁ……その、ナニだ(^^ゞ。

そうなると、実質的なファイターズの「主力コアローテ投手」はゼロとなってしまうし、無理やりゲタを履かせてみても上沢・加藤・伊藤のたった3人なのだ。
しかも、3人中1人は2年目の伊藤大海という、実力があるのは確かといえそうだがキャリア的にはまだまだ浅い投手でもある。

近年どのチームでも採用されている「中6日ローテーション」という先発投手の運用を考えた場合、必要となる先発投手の数は当然6人である。
が、今見てもらったとおり、ファイターズには「計算できる」ローテーション投手が (上げ底してさえ) たった3人しかいないのだから、あとの3人は、「信頼できるような実績はないけど『まあまあ期待しとるで!頑張ってや!』」枠の投手にならざるを得ない。

上沢、加藤、伊藤に続く、
「信頼できるような実績はないけどまあまあ期待しとるで!」枠の投手は、今年のファイターズで言えば、

河野竜生、立野和明、池田隆英、生田目翼、根本悠楓

といったあたりが、春季キャンプやオープン戦の段階で今年の先発ローテーション候補としてその名が挙げられていた。
彼らは、一部メディアや解説者等から絶賛されていたり、ネットのファンサイト等では

「あかん、先発投手陣、最強すぎる!」
「先発ローテ、余るくらいいてるやん」
「これで外国人投手が当たれば優勝間違いなし!」

――とか言われていたが、この5人の実績は上記表-3のとおりで、最も経験値の高い河野竜生でさえ2年間で計150イニングをこなしたに過ぎず、根本に至っては一軍登板経験なっしんぐである。

個人的には、誰か1人くらい早い段階で頭角を現してくれたらいいのになぁくらいには思っているが、全員ローテに入ってバンバン活躍するとか言われると、それはあまりにも非現実的すぎる。さすがにそれはどんな狸の皮算用やねん(笑)と思ってしまうくらいだ。申し訳ないけど。
(ちなみに、実際、上記5人の中で先発ローテーションの一角を担い「回れて」いる投手は今のところ皆無である)

無論、5人ともそれぞれにいい投手であるし、いずれはローテーションでガンガン回れるような先発投手に育ってもらいたいと個人的にも期待しているが、少なくともそれは今年ではないよなぁと。

彼らが今年なすべきことは、まずは先発投手として最低5~6イニングを投げ試合を作る、という「実績」を1試合でも多く積み重ねることだと思う。
先発ローテーションの一人として計算され、その信頼に応えて1シーズンをこなし、何勝何敗でいくら勝ち越せたか、などという段階ではない。

まあ、ファイターズに限らず他の5球団にしても、実績十分な「主力投手」で6人全てまかなえるチームなんてまずないし(*2)、6人中1人、ギリ2人くらいまではそういう「お試し枠」があっても不思議ではない。

*2:実績十分な「主力投手」で6人全てまかなえるチームなんてまずない:
とはいえ、これに限りなく近いのが東北楽天の先発ローテーション投手陣である。この球団には、
涌井秀章(11回)、岸孝之(10回)、田中将大(NPBのみでも8回)、則本昂大(7回)、という規定投球回数3回クリアどころの話ぢゃないレジェンドクラスのどエラい先発投手を4人も擁している。

が、さすがにローテの半分以上
「彼は炎上しない」
「多分(炎上)しないと思う」
「(炎上)しないんじゃないかな…」
「(炎上)ま、ちょと覚悟はしておけ」(*3)
とかいう出たとこ勝負のお試し三昧で、これが週の半分を占めるというのなら、とてもじゃないが1年間安定して戦える見通しなんて立つわけないではないか(*4)

*3:「彼は炎上しない」…「ま、ちょと覚悟はしておけ」:
余談だが、このネタのオリジナル『関白宣言』(byさだまさし)がリリースされたのは1979年。もう40年も前なんですねぇ…。オリジナルの歌詞は、昨今だとモラハラだ!!とか男尊女卑だ!!とか目くじら立てて非難する人とかいそうでコワい^m^ そういう向きの人はアンサーソングの『関白失脚』とか聞いてちょっとだけ溜飲を下げてみてはいかがでせうか?

*4:とてもじゃないが1年間安定して戦える見通しなんて立つわけがない:
まぁ、この点に関して言えば、外国人投手でローテーションの1枠ないし2枠をまかなうのが昨今わりとどの球団も常套手段となっている。実際、外国人野手が1年目の最初から日本の野球に対応するのはなかなか難しいが、外国人投手の方は野手ほどはハードルが高くなく、開幕当初から安定してローテを守る活躍をしてくれる投手もそこそこいる。
 というわけで、ファイターズも、外国人投手ガチャに成功すれば、6人中2人くらいまでは安定して試合を作れる投手で回せる可能性もあるからして、「見通しなんて立つわけがない」とヒステリックに叫ぶほどには悲惨な状況ではないかもしれない。無論、あくまで外国人ガチャに成功したらの話なので、そのガチャに失敗した場合は……「ま、ちょと覚悟はしておけ」。♪ラーラーラーラーラーララーラララ……

ちなみに、野手の考察とは順序が逆になったが、実績ではなく単純な年齢で見るファイターズ投手陣の「若さ」も、これがまたなかなかのものである。最年長投手こそ金子千尋の38歳、ついで宮西尚生の36歳と、一応他球団なみにベテランが2人いるのだが、他の30代投手は杉浦稔大(30)、ブライアン・ロドリゲス(30)のギリ30歳が2人いるだけ(一人はまた外国人やんw)で、あとの29人は全員20代及び10代だったりする。
……青いねぇ^m^

以上、ファイターズの野手及び投手の致命的な弱点、
びっくりするくらいチーム全体まるっと経験値不足」について考察してみた。

もちろん、
「実績が乏しい(経験値が足りない)」野手がチャンスで絶対に凡退するとか、あるいは
「実績が乏しい(経験値が足りない)」投手が早いイニングで必ず大炎上する
とかいうわけではない。

どんな大選手もどんな大投手も、最初は実績ゼロなのだから。

経験値の少ない若い選手だって、実績はこれから積めばいいだけの話だ。

ただ、「実績のある(経験値豊富な)」野手や投手に比べれば、実績のない選手がチャンスで凡退したり試合を作れず炎上したりという可能性はどうしたって高くなるわけで、ファイターズはそんな経験値不足の選手だらけで戦っているのである。
野手の失敗、投手の炎上、そういった結果の積み重ねで敗戦を重ね、チームの勝率が低いというのは、ある程度は当然の結果と受け止めるべきだろう
ということだ。

それでもなお、
「この選手たちの実力でもって断トツ最下位なんておかしい!」とか
「BIGBOSSがメチャクチャな采配をするから負けてるのであって、他の監督なら今頃勝率5割とか首位でもおかしくないはず」とか言い張るのは、
掛け算九九をようやく覚えたばかりの小学生に「○○ちゃんは頭いいんだからこのくらいはできるはずよね」とか言って東大模試を受けさせるのと大差ないムチャぶりなようにも思えるのだが、いかがだろうか……
(※個人の感想です)。

まぁ、BIGBOSSの采配がすべて正しい、などと妄信するつもりはサラサラないし、実際、単に野球好きなだけのドシロウトの自分にはあまりに発想が突飛すぎていささか理解に苦しむ采配(*5)がちょくちょく見受けられるのも事実だけど(笑)、
ことさらにBIGBOSSだけが悪い、と悪者扱いする見方はさすがに問題の本質からズレているように感じるのだ。

*5:あまりに発想が突飛すぎていささか理解に苦しむ采配:
頻繁に批判されている主な采配(及び起用法)は、
・打順の組み方がメチャクチャ
・先発ローテーションの中4日(中5日)構想は非常識
・やたらめったらヒットエンドラン、ランナー3塁でもヒットエンドラン
てあたりか。
 ただ、これも、こういう見方をすればアリかな?、こういう狙いなら悪くないかも等、見方、考え方をちょっと変えるだけで、そこまで目くじら立てて全否定しなくてもいいんぢゃない?というケースも多かったりする。
とにかくBIGBOSS采配の何もかも気にくわない、という人にはたぶん聞く耳持ってもらえないとは思うが、そうでない人は一度
「この無茶苦茶な起用(采配)をむりやり肯定しようとすればどういう方法があるか?」
という発想でアプローチしてみたら、けっこう面白い発見につながるかもしれませんよ、て話で(笑)
「これが野球のセオリーだから」で全否定するのは、ちょいと頭が固すぎるかも。上記の批判も、ある種面白いテーマなので、別途考察してみたいところである( ̄∀ ̄)

そもそもこの未熟な戦力で他の5球団と対等に渡り合えというのがぶっちゃけ無理筋な話なのであって、真に問題にすべきなのは、ではなぜこんな圧倒的に経験値不足な選手「しか」いなくなっちゃったのか?ということなのだと思う。
 
この問題の核心であるファイターズの「若年化」は、チームの大きな方針としてもともとそういう傾向があった。
その傾向はここ数年でさらに加速度を増し、昨年2021年オフでひとつの象徴的なピークを向かえたといっていいかもしれない。
次の章ではその一端にも触れつつ総括してみたい。

■ コスパ重視の末路――それでも前を向いて行け

昨年のオフシーズン10月29日に正式発表された新庄剛志BIGBOSS就任は、世間的にも個人的にもなかなかの衝撃だった。一部メディアでは「新庄新監督誕生か」という報道が先行してはいたが、いくら球団OBとはいえ、監督経験どころかコーチや裏方の経験もなく、ましてや野球そのものから15年以上離れて日本にすらいなかった「一般人」である。
それがいきなり一軍の監督だなんて、ファイターズには栗山英樹という前例(*1)があるにせよ、日本ハムのフロントもさすがにそこまで酔狂な決断にシフトでけへんやろwとか思っていた。

*1:栗山英樹という前例:
ファイターズの前監督・栗山英樹は、2011年にNPBのコーチ・監督経験なっしんぐでいきなりファイターズの監督に就任している。ただ、ヤクルトスワローズの選手として7年間プレー、メニエール病の影響もあり若くして現役引退を余儀なくされた後はスポーツキャスターとしてテレビ・ラジオ等、マスメディアへと活躍の舞台を移し、大学時代に取得している教員免許を活用して白鷗大学教授としてスポーツメディア論を教えたり、あるいは北海道の栗山町に私財を投じて天然芝の野球場「栗の木ファーム」を作る等、なんだかんだで様々な形で絶え間なく野球に関わり続けていた。この点がBIGBOSSとの大きな違いではある。

が、そんなサプライズ人事よりもはるかに個人的に度肝を抜かれたのは、翌月11月16日に球団から発表された

西川遥輝、大田泰示、(ついでに)秋吉亮のノンテンダー発表である。

日本では耳慣れない「ノンテンダー」だが、日本語の野球表現でなじみのある言い方なら「自由契約」であり、一般社会人サラリーマン世界で分かりやすく例えるなら事実上の「解雇」に相当する。

それでなくても、昨年8月にチームの大きな柱であった中田翔が起こしたチームメイトへの暴力行為による無期限出場停止というペナルティがあったばかりなのだ。
しかも、この件ではさらに驚くべきことに、無期限と言ったわずか2週間後に巨人への無償トレードという形で、チーム随一の実績を誇る(規定打席数クリア10回)、言わば「チームの大黒柱」をあっさり捨てている(*2)

*2:あっさり捨てている:
真相がどうなのかは勿論藪の中だし、恐らくこれからも公に語られることはないのだろうが、そもそも「事件」が起きたのがオリンピック期間中の8月、エキジビションマッチの試合前の出来事であり、コロナ禍でベンチ裏等でのメディアの取材も厳重規制されている中である。ベンチ裏に記者がいるなんてことも恐らくなかったろうから、内々で処理しようと思えば処理できるような(←当然、良くないことではあるが)「事件」でもある。これをあえて球団側から「暴露」し、当該選手を無期限の出場停止処分さらには他球団への無償譲渡とトントン拍子に話が進むのは、少なくとも球団サイドがもはや中田翔をチームにとって必要不可欠な中心選手とは思っていないんだな、個人的にはそう感じた。

そこへ追い打ちをかけるかのように西川遥輝(8回)、大田泰示(4回)というファイターズにおいては数少ない「貴重な主力選手」を、これまたいとも簡単に切り捨てるとは、これを衝撃と言わず何と言おう。

確かに西川、大田両選手とも、昨シーズンの成績はほぼキャリアワーストといっていいくらい酷くチーム低迷の大きな要因の一つとなったが、それでも、だ。

これまでの考察のとおり、そもそもファイターズは35歳以上のベテラン野手が皆無という異常すぎるほど「若い(ていうか青い)」チームである。

そんな状況下で8年連続レギュラーで29歳の西川、ファイターズ移籍後4年連続レギュラーで31歳の大田、という貴重なベテラン(当社比)(*3)野手を市場にタダで投げうつという選択は、個人的には
「いやフロント、完全に頭イカレてるやろ(笑)」
大変失礼な物言いで恐縮だが、心の底ではそう悪態ついて呆れていたし、球団経営のタイヘンさをろくに知らない素人の自分には、逆に笑けてしまうくらいすっとこどっこいな愚行にも思えた。

*3:当社比:
激烈若者集団のファイターズの中だからこそ西川、大田両名はベテラン扱いされるが、そもそも29歳と31歳なんて他球団では中堅中の中堅選手であり、29歳の西川については、年齢層の高い某球団あたりに行けばまだ「若手」ですらある。

具体的な考察は別稿に譲るが、もともとこの球団には数字上の実績がその選手の年俸に釣り合っているかどうかという「コストパフォーマンス」に重点を置いて査定し、いわゆるコスパの悪い選手をトレード等で積極的に放出する傾向があるにはある。

2021年の両者の成績は

・西川遥輝 130試合 打率.233 本塁打3 打点35 盗塁24 OPS.673 
 ――年俸2億4000万円(推定)
・大田泰示  76試合 打率.204 本塁打3 打点20 盗塁 1 OPS.556
 ――年俸1億3000万円(推定)

確かに、単年の成績で見て年俸と対比すれば、お世辞にもコスパがいいとは言えない(苦笑)
…ということで、衝撃のノンテンダー放出も、何より第一に「コスパ」を考える北海道日本ハムファイターズのフロントなら考えそうなことではあるかぁ…

青天の霹靂的なショックで数刻思考が停止した後、そうも思い直した晩秋の夜長。

だったらせめてその2人を交換相手としてファイターズお得意のトレードとか他球団に持ちかけるなりして、せめてちぃとは元(もと)とらんかい!
……とか考えてしまうのは、さすがにあさましい貧乏根性であるが、
この高額年俸を最低限キープしてのトレードがほいほいと成立するかと言われると、それはそれで厳しいよねぇ……冷静に考えればそう思う。

ノンテンダー発表後、西川は東北楽天に、大田は横浜DeNAにそれぞれ所属球団が決まり、真価が問われる今年はシーズン開始からそれぞれの新天地で活躍している(特に西川は大活躍だ♪)。

これ自体は誠に喜ばしい限りだが、西川は8500万円、大田泰示は5000万円(それぞれ推定)と、両者とも年俸は大きくダウンした契約になっていることから見ても、
ファイターズ所属時の高年俸のままで交換トレードというのは、どの球団を相手にするにせよ先方に二の足踏まれる案件なのは間違いなさそうだし、よしんば成立したにせよ、ファイターズ側が交換選手や金銭等、相当割に合わない妥協を余儀なくされていたかもしれない。
 
個人的には、コスパが悪いのがいけないというならコスパを良くする、つまりファイターズ側が考えるコスパに見合う年俸をまず提示してみたら良かったのに、とも思う。
球団の提示する年俸額があまりにも低く、西川、大田両選手が、
「いぃや、安っすっ!」
とたまげて納得しなかったら、それはそれで晴れてノンテンダーに「なれる」(*3)わけなのだからw

*4:晴れてノンテンダーに「なれる」:
日本プロフェッショナル野球協約(通称「野球協約」)第92条(参稼報酬の減額制限)の規定では、年俸の減額に関して年俸が1億円を超える場合その40%まで、1億円以下の場合25%まで、と制限されており、選手の同意があれば契約は成立するが、選手が不服として拒否した場合は、自由契約選手になる「権利」が与えられる、まさにノンテンダーに「なれる」のである。
 前年オフにメジャーリーグへのポスティング移籍を希望したものの不調に終わったという経緯がある西川は、大幅ダウン提示なら契約拒否した可能性も高いが、相当に年俸を下げられる覚悟はしていた、と公にコメントしている大田あたりなら、「1年契約5000~6000万円」くらいの提示ならフツーにOKしたような気もする(※個人の感想です)。
 無論、これは両者とも契約が締結された格安金額を見ての結果論であるし、なんならファイターズ側が西川8500万、大田5000万でもコスパ悪いわ、とか思ってたりするならそもそも成立しない話ではある。
 いずれにせよ、ドライドライなMLBの世界ならともかく、長期間所属している球団に対するサラリーマン的帰属意識や球団への貢献度に対する情の部分とかに対する思い等が必要以上に色濃く反映されがちな日本の社会では、ノンテンダーに「される」とノンテンダーに「なれる」の差は存外に大きいだろう。
 結果は同じであっても大幅減額提示というワンクッション置いただけでも、選手会だったり世間さまだったりのノンテンダー発表に対するファイターズ批判の嵐はそこそこ回避できたかもなぁ……個人的にはそうも思う。

いずれにせよ、このノンテンダー宣言が結果としてもたらしたのは、

ただでもベテラン不在で中堅層すら少ないチームから、貴重なベテラン(あくまで当社比)戦力が2人消えて、より一層「未熟な若者だらけ」のチーム構成に拍車がかかった、

という身もフタもない現実だ。

球団のこの決定を最大限好意的に解釈するなら
「本気でチームをゼロから作り直す」
ということなのかもしれない。

もしそうなら、個人的にはこちらも一ファンとして腹をくくって応援し続けたいと思う。
負けても負けてもひたすらに応援し続けたいと思う。

ただ、少しだけ言わせてもらえるなら、こっちも覚悟決めるから球団フロントおたくらにもそれ相応の覚悟を持ってよね、というトコか。

もし、西川や大田が抜けた穴くらい、他の若い選手で何とでもなるやろ♪くらいに思っていたとしたら、それは(少なくとも短期的には)大きな勘違いだということを自覚してほしいのだ。

恐らく向こう3年間くらいは優勝どころかAクラスも易々とは望めないだろう。なんなら3年続けて最下位に沈み続ける可能性もフツーにアリだとすら思えてならない。
ゼロから作り直すんだから、そこまでの事態になったとしても慌てふためいてくださんな、と。

理由はこれまで考察してきた通りである。コスパコスパで高額年俸に見合わない「主力選手」を放出し続けてきたツケの残滓、
「史上まれにみるレベルで未熟なチーム」がホイホイと勝っていけるほど、日本プロ野球のペナントレースは甘くないはずだからだ。

「向こう3年間くらい」としたのは、
一軍での経験値というものは、ドラえもんに頼んでとりあえず3年間分ほど未来で修業を積み、しかる後にこちらへ帰還する、とかいうファンタジーな反則でもかまさない限り、前倒しで得られる近道がないからである。
当たり前の話だが、「1年の経験を得るには1年かかる」のだ。

つまり、レギュラー経験値ゼロの若い選手1人が、前章で述べた「主力選手」になるには単純にみて3シーズン必要なのだから、「主力選手」の数を少なくともパ・リーグの他の5球団なみに揃え、最低限ペナントレースを対等に戦えるようになるまでとなれば、一体どれだけの時間がかかるだろうか。ちょっとは真剣に想像してみてほしい。

そんな、スタートラインレベルまでチームを引き上げることすら、現状からよほど順調に(かつ大量に)若い選手たちを成長させない限り、それこそ一朝一夕には成しえないだろう。
普通に考えたらやはり「最低でも」3年くらいは必要なのかなぁと思う。

ただ、その3年間を2年間にしたり、あるいは1年間にしたり (1年はさすがにムリかw)、と多少なりと短縮することはひょっとしたら可能なのかもしれない。
それが本当にできるかどうかは、それこそBIGBOSSの育成手腕と周囲の協力、何より一番重要なのは若く未熟な選手たちの日々の努力にかかってくると思われるのだが。

だからこそ、選手たちには、今はとにかく積極的に失敗を重ね、そこで得られた苦い経験を次の機会になるべく生かし、また失敗を重ね…そういうプレーをひたすら繰り返し経験を積み重ねてほしい
なんといっても、BIGBOSS体制でチャンスはかなりオープンに与えられている(*5)のだから、それを生かせるか、無駄にしてしまうのかは選手それぞれの日々の努力次第である。

*5:チャンスはかなりオープンに与えられている:
シーズンに入る前、BIGBOSSは「今シーズンはトライアウトの年」と宣言していた。見極めのための1年でもあるし、全員横一線のトライアウトだと。「チーム全員横一線スタート」という言葉は、ぶっちゃけどの新監督も必ず口にする、政治屋のマニュフェストきれいごと程度のリップサービスなのが普通だが、BIGBOSSは今のところこの言葉に割と忠実に采配をふるっているように見える。
 その一例が、点差をつけられた終盤や最終回に敢行することが多い代打攻勢である。しかも、単に一軍キャリア不足の若手のお試し起用だけではないという点。
 最終回の代打に中島卓也が出てきた時はさすがに一瞬耳を疑い
「いや、BIGBOSS、マジで横一線かいwww」と感心した。キャリアは関係ないのだ。ルーキーだろうが14年目だろうが、ダグアウトに控えている選手は、全員、次のスタメン、次のレギュラーを狙う横一線の候補生なのだ。
 ファンの中には、いくら大差で負けているからって、打てる見込みのないような代打攻勢なんて球場に足を運んでくれたファンに失礼だ!といって怒る人もいるだろうが、これも考え方ひとつだ。ある意味、これもトライアウトであり、大事な未来への種まきでもある。
 終盤までクロスゲームをキープできず一方的な試合になってしまったことは残念であり、その点については確かにファンに失礼だったかもしれない。が、そんな試合だからこそ、最終回を惰性で終わらせてムダにするのではなく、控え選手に「一瞬のチャンス」を与える。そのチャンスを生かせば、次のスタメンにつながる、次のレギュラーへの足掛かりになる、BIGBOSSはそういうチャンスを与えて「モノにしてみろ」と背中を押している、個人的にはそんな風に見えるのだ。だから、この最終回の代打攻勢はけっこー気合を入れて応援してたりする。また、そのチャンスを実績ゼロの2年目・梅林にも実績3449打席の14年目・中島にも、同じ横一線で与えている点、これもなかなかに興味深く衝撃的ですらあった。

普通のチームならベストメンバーに占めるキャリア不足の「未熟者」はせいぜい1人か2人、9人中3人もいるようなら、相当数の主力選手が故障離脱してたり新型コロナウィルスでも蔓延しまくったんか?、という異常事態だが、
ことファイターズに関して言えば、そういう普通のチームの「異常事態」がファイターズの「日常」なのだ。
なんたって、未熟者が9人中3人どころか、逆に未熟じゃない選手を3人スタメンに入れる方が難しいのだから(笑)。

だから、1試合という小さな単位でも勝ちきるということは相当に難しいし、それを続ける連勝なんてのは、明日雪が降るかもレベルのプチ奇跡に相当する難易度だ。
ましてや長いペナントレースで良好な成績を修めAクラスだの優勝だのというのは、もはや奇跡を通り越してミラクル (ぃや、同んなじ意味ぃー) といっても過言ではないくらいハードなミッションである。

BIGBOSSは、昨年11月4日の監督就任の会見で

「優勝なんか一切目指しません」

と力強く言い放ち、その後なにかと物議をかもしたが、これは日本語がいささか正確ではない。
正確にはこうだろう――

「優勝なんか一切目指せません」

これが正しい。👆

そして、BIGBOSSは未熟な「がんばれベアーズ(*6)」を一足飛びにいきなり優勝チームに仕立て上げられるような神様なんかではない。真っ赤に染めたオリジナルの初心者マークでも似合いそうな一介の新人監督である。
(しかも、16年間野球から離れていたw)

*6:がんばれベアーズ:
1979年に公開されたアメリカ映画 (原題:The Bad News Bears)。アメリカ西海岸の問題児だらけの弱小少年野球チーム「ベアーズ」が、マイナーリーグ上がりのプール清掃員の指揮下で奮戦しつつ勝ち抜いていくというコメディ映画。さすがに古すぎて今どきの人にはキョトンかポカンかなぁ……。
むしろ、北海道でベアーズなんて言っちゃうと、チーム全員BBとか、あるいは「の・ぼ・り・べ・つと言ったらクマ牧場!! (くまぼくじょー)」で道産子にはおなじみのローカルCMみたいに、大量のクマがガッツポーズでもしている図が想像されて、ちょっとシュールな感じになっちゃうかもねー…。

個人的にはBIGBOSSは予想以上に健闘していると思う。
他球団なら1軍にはまだまだ上がってこれないような選手も積極的に (しかもスタメンで) 起用し、
投手起用 (配置やローテーション) も野手起用 (打順や守備位置) も、これまでの実績や常識とされてきた運用を一旦チャラにして様々な可能性を試し、
結果が出ない選手も辛抱強く起用し続ける等、
未来へ向けて着々と種を蒔いているのが如実に見てとれるからだ。

攻撃面での「奇策」が過ぎて失敗した時などはなにかと批判されることも多いが、そもそもが未熟者だらけで構成されたメンツが無理ゲーやってるわけである、少々乱暴な言い方をすれば
「普通にやって失敗」よりかは「ハードルの高い奇策にトライして失敗」の方が、経験値が少しは多く得られる分若干マシ(笑)
くらいにとらえ、個人的には支持していることの方が多い。
もちろん「普通にやって成功」が一番いいに決まってるのだが、そもそも「普通にやって成功」できるキャリアの選手がごくごく限られた人数しかいないのだからしゃーないものw。

チームは2016年に10年ぶり3度目の日本一という頂点を極めた。
考えてみればあれからまだ5年ちょいしか経っていないのだから、あの頃を知るファンの中には

「こんなに弱いわけがない」
「ここ数年たまたま勝ててないだけで本当は強いはず」

そう思う人がいるかもしれない。

でもちがうのだ。
現在のファイターズは、年を追うごとに一人また一人と「主力選手」を手放し、そこまではまだある程度経済的に仕方ない面がある(*7)としても、その後釜をろくに育てることができていない。
そして、気がつけばこれまでの考察で見てきたように、若さという曖昧な将来性でしかポジりようがないような、あまりにも未熟なチームへと姿を変えてしまったのだ。
(この衰退の過程についても、いずれまた考察してみたい)

*7:そこまではまだある程度仕方ない面がある:
まぁ、あくまで内部事情を正確には知りえないしょせん外野の推測にすぎないので多くは語れないが、キーワードは「ファイターズ歴代最高の年俸を誇る超大物メジャーリーガー札幌ドーム選手 (年俸26億円(推定))」でお察しいただければ幸いである。

2016年のファイターズみたいに勝ち続ける野球が見たいのなら、残念ながらしばらくは贔屓のチームを他球団に変えるか、大谷翔平擁するエンゼルスを応援してなんとなくファイターズが勝ってるかのように錯覚して自分を納得させるか (ううっ、虚しい…)、いっそのこと野球は一切見ずに他の趣味や仕事に没頭することをオススメしたい。

でも、ファイターズの現実から目を背けずにしっかりと直視し、至弱のゼロから這い上がっていく過程を長期展望で楽しみたい、と思う物好き……もとい、真に愛すべき野球ファン諸兄には、是非是非この若きチームを応援してもらいたい。
なかなか勝てない試合を観るのは精神的にけっこうシンドいけど、可能な限り試合も見てほしい。
勝てない試合も勝てないなりに次への手応えを感じられる試合、以前よりは成長したなぁ、と思わず目を細めたくなるようなプレー、徐々にではあるがそんな試合やプレーが増えてきているのも確かだから。

そして、せっかく応援してくれるのなら、
ことごとくチャンスをつぶす情けない攻撃も、
肝腎なところで無駄な四球を出しまくるチキンな投手も、
一見しただけでは理解に苦しむようなBIGBOSS采配wも、
可能な限り長い目を持って見てやってほしい
愚痴や批判のひとつもSNSに拡散したくなるトコをぐっと堪え、できることなら「今回はアカンかったけど、次はガンバレ!」とエールを送ってやってほしい

他ならぬ監督自身も含め、このチームはまだまだスタートラインにすら立てていない未熟なチームなのだから。

最後に、そうは言っても人間のやることに「絶対」ということはないもので、未熟者集団のファイターズが今年優勝する可能性は本当にゼロなのか?と問われれば、答えはノーだ。
限りなくゼロに近いけど
イエスかノー、どっち?
と気難しそうな強面の刑事に詰問されたら(*8)、内心ビビリつつも即答でノーだ。

奇跡を信じることもロマンだからね♪(o^-')b♪

それに、何よりも私のようなズブズブのド素人が長々と語るペラッペラに薄い考察になぞ、根拠と呼べるほどのエビデンスもなければ、なるほどと膝を叩かせるような説得力もないのだし^m^

*8:気難しそうな強面の刑事に詰問されたら:
ドラマ『真犯人フラグ』の渋川清彦が演じる阿久津刑事、めっちゃキャラ立ってましたねぇ♪……てか、悪人役ぢゃない渋川さんを見るのも久々……ヘタすりゃ初めてだったかもww(いや、失礼)

今年のペナントレースもあと100試合あまり(*9)、最終的な順位がどうであれ、個人的には1試合1試合を丹念に見ていきたい。悔しい敗戦でもその中で明日につながるようなポジティブな要素があれば見逃さずに讃え、珍しく勝ったゲームでは、勝利という貴重な結果を素直に歓ぼうと思う。

*9:今年のペナントレースもあと100試合あまり:
……なんだ、この、5月の大型連休に突入する直前の職場で、退勤間際に「それではみなさん、よいお年を♪」と言ってオフィスを後にするかのような時節感のズレた物言いは…(*´Д`)

ファイターズの選手たちが勝利に歓喜し、ファンも共に喜び合うゲームを1試合でも多く見たいというのは、偽らざる本音なのだからして。

だから、

たとえ100敗しても、応援し続けるよ。

ファイターズ。


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