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ストリクスヘイヴン ドラフトガイドライン 入門編

新年度、あけましておめでとうございます。スギモトです。
4月上旬まで仕事が立て込んでおり、3月にカルドハイムのまとめ編を書き上げてから、2回しかドラフトできませんでした…

そうしている間に、新セット【ストリクスヘイヴン:魔法学院】のリリースが迫ってきています。
今回も、リリース前『入門編』→リリース2週間後『中間報告編』→リリース1か月後『まとめ編』と言う形で、MTGアリーナ・BO1ドラフト環境を考察していきたいと思います。(カルドハイム編、よければご覧ください!)

後述しますが、近年のセットの中では、かなり複雑にデザインされているのではないかと感じています。拙いところ、まだまだ考えの及んでいないところも多いと思いますが、まずは『入門編』として、あなたの参考になれば幸いです。長くなりますが、よければお付き合いください。

▼環境の第一印象

●対抗色の組み合わせ5種
公式のマローコラムで明言されていますが、今回は「ラヴニカにはない特徴を持つ」「対抗色の組み合わせをフィーチャー」したセットです。

対抗2色―WB白黒、UR青赤、BG黒緑、RW赤白、GU緑青の組み合わせ5通りを軸にデザインされており、コモンにもマルチカラーが複数配置されています。友好2色の組み合わせはそれらを活用しにくいため、(少なくとも研究が進むまでは、)アーキタイプとして存在し得ないということを、1つ目の前提にして話を進めていきます。

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また、「ラヴニカにはない~」というところも地味に重要で、各色が従来のイメージとは少し異なる戦略をとっています。白黒が「果敢」のような細かいスペルを重ねるコンバット、青赤が宝物トークンを絡めたランプ、赤白が墓地利用など。
《学舎》シリーズ(占術能力持ちの2色土地)の封入比に関する正確な情報を掴めていないので、3色以上の戦略を積極的にとれるかは、いまのところ不明です。

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多色化サポートは多いわけではない

●単体のカードパワーは控えめ
というよりは、単体で完結しているカードが少ないです。
誤解を恐れず簡単に言うと、「飛行」という能力はいつでも自己完結して強いですが、「履修」という能力は、優秀な「講義」がどれくらいあるか、「魔技」というカードは、プレイアブルなインスタント/ソーサリーをどれだけデッキに入れられるかでその強さが上下します。
コモンのクリーチャーにも、一風変わった能力を持つものが多く、それらは相互作用=システムがあって初めて真価を発揮します。

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楽しいガチャガチャパッケージ

●除去も弱め?
枚数、効果ともに申し分なかったカルドハイムから一転、少しおとなしい印象です。
文句なし赤のトップコモンであろう《白熱する議論》、黒の優秀なコンバットトリック《悪意の打ちつけ》あたりは使いやすい性能ですが、その他はソーサリータイミングや条件付きの除去が多いです。前段の、システムを構築するクリーチャーたちは、生き残りやすい印象
しかしながら、ミスティカルアーカイブから、アンコモンの《ショック》《取り除き》、レアの《剣を鋤に》《破滅の刃》《稲妻》《ウルザの激怒》《審判の日》《命運の核心》が出張してくる点は意識しておきましょう。こちらもどの程度の封入比になるのか正確な情報がないのですが、アンコモンなどは、充分に警戒すべきラインだと思われます。

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●クリーチャーのスタッツと魔技
平均的な地上のスタッツは以下のようなイメージ。
2マナ:2/2、《プリズマリの誓約魔道士》3/3
3マナ:2/3、3/2
4マナ:4/3
5マナ:4/4、《ウィザーブルームの誓約魔導士》5/5

全体的なサイズ、特にタフネスが抑えめの印象です。
2マナ域は《プリズマリの誓約魔道士》が白眉。5マナまでタフネス4以上のアタッカーが存在せず、またタフネス3を落とすのは手間なので、かなり硬い壁になるでしょう。

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ラヴニカの《凍結燃焼の奇魔》を思い出すのは
ぼくだけでしょうか

それ以外にも、一つ下のマナ域で相打ちしやすいサイズ感になっており、素のサイズでは若干後手・防御側が有利に見えます。話が除去に戻りますが、防御側なら使いやすいものもいくつかあります。
これは、攻撃側の魔技による上昇補正を織り込んで、バランスをとったデザインだと感じています。魔技は、使えるマナの多い先手に有利なメカニズムですが、スピーディーな「先手ゲー」が多くなるかというと、少し疑問の残る第一印象です。

●履修&講義
基本的に講義カードの性能は控えめで、レアまで見ても、メインで採用したいものは少ないのではないでしょうか。通常のカードより1~2マナ分コストが重くなっている印象で、中盤までの特定ターンの行動としては弱いです。特にアグロ系のアーキタイプでは手損になることも多く、マナフラッド除けのルーティングとしてとらえる方がよいことも多いのではないでしょうか。いつも以上に、不要な土地は置かないように意識しましょう。
消耗戦になった終盤で、《フラクタル召喚学》のようなX呪文、《墨獣召喚学》のような回避持ちを引っ張ってくるのが有効な使い方だと感じます。

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まぁまぁプレイアブルかな?という面々

以上がセット全体の第一印象です。これらを予備知識としながら、各アーキタイプについて詳しく見ていきましょう。


▼WB(シルバークイル)

前述の通り、軽めのコンバットトリック、+1カウンター付与を駆使して、魔技で殴るアーキタイプ。魔技でのパワー修正を含めて、自ターン・攻撃時に強化される能力を持ったクリーチャーが多いです。
軽いマナ域から飛行クリーチャーもそろっています。高マナ域の全体強化スペルは、修正値は小さいもののコモンに2枚あり、それらを飛行に重ねて押し込んでいくイメージになりそうです。

●コモンの基本戦力
前述の通り、ビートダウンにとって大きな壁になるであろう《プリズマリの誓約魔道士》。《悪意の打ちつけ》で突破できないので、早めに3/4以上をつくるか、飛行を付与することになります。
その意味で、3マナ域は優秀なスタッフが揃っているでしょう。2→3と魔技持ちを展開して、4ターン目にそれらを強化するスペルで魔技誘発、という流れが定番になりそうです。
また《戦闘学の教授》も、2マナ域、あるいは先制持ちの《ロアホールドの誓約魔道士》をパワー3にしながら、次ターンから3/3飛行警戒で殴れる優秀なカード。3/4以上の飛行がコモン・アンコモンに存在しないので、《オーリンの盾魔道士》と合わせて、なかなか有用な戦力になりそうです。

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●コモンのスペル
基本の黒4マナ除去《魔道士狩りの猛攻》はソーサリーになってしまいましたが、そのターンのブロックに制限をかける攻撃的な能力がWB向けです。白の定番《大物つぶし》枠の《学舎防衛》は、全体修正のモードがついて、採用しやすくなっています。《生きた証》は攻め手を維持しながら《プリズマリの誓約魔道士》を処理できるので、重宝するかもしれません。

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●アンコモン
《賢い光術師》:魔技でタフネスにも修正が入り、強化スペル1回で3/4以上になれるのが大きいと感じます。
《シルバークイルの初学者》:もうちょっと熱心な《熱心な一年生》程度ですが、2ターン目に魔技持ちが出ていることがまず重要なので使うでしょう。
《轟く語り部》:《シルバークイルの誓約魔道士》と並べば宇宙。
《自身の誇示》:4ターン目に2+2と動くことで、一気にサイズをリードできます。
《締めくくりの声明》:効果は強力ではありますが、軽く撃つと魔技のサイズアップに貢献しない点で、若干低めに見積もり。
《終身書唱師》:いわゆる《地獄乗り》的能力。4ターン目にカウンターを撒いた後、5ターン目の動きとしては最良?

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▼BG(ウィザーブルーム)

中心になるシナジーは、生贄とライフゲイン。マスコット(各大学の固有トークン)である「邪魔者」トークンが、2つのギミックを並行してくれます。
「4ターン目に邪魔者を生贄に捧げながら《湿地帯のグロフ》を出し、《血の研究者》をサイズアップ」というような動きで盤面を作るミッドレンジになるでしょう。
マスコットを出す講義カード《害獣召喚学》が、WBやGUでは活かしづらい点が、地味ながら長所に思われます。

●コモンの基本戦力
ライフゲインでWBの攻勢を耐えつつ、威迫持ちである《血の研究者》を育てます。ライフゲインにボーナスを持たせるカードが、コモンにはこれしかないので、まずはここを軸にしましょう。《検体探し》→《害獣召喚学》のライン、あるいは《獣魔術の教授》でトークンを供給しつつ、《新米解剖者》や《湿地帯のグロフ》で能動的に育成していきたいところ。
5マナ域のサイズでは頭一つ抜けた《ウィザーブルームの誓約魔道士》が出た後は、《検体》+《召喚学》ラインが一層有用になります。
ライフゲインがあるとはいえ、対空防御が十分とは言えず、自分よりゲームレンジが遅いアーキタイプの方が多いため、下手に防御的にならない方がいいでしょう。しっかり殴っていき、ライフゲインでダメージレースを躱すような構成が望ましいと思います。

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●コモンのスペル
《魔道士の決闘》は、単体ではもうひと声欲しい性能ですが、魔技持ちが出たあとは、《突っ走り》が優秀なつなぎ兼決め技になるので、セットで取り入れることを意識できればよいのではないでしょうか。
《大技》は攻防に役立ち、+1カウンターシナジーもある、強力なコンバットトリックです。

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●アンコモン
《魂浸し、ダイナ》:ライフゲインを直接打点に変換するカード兼、サクリ台。《悪意の打ちつけ》で処理されないのも◎。
《ウィザーブルームの初学者》:ドレインシステム。こちらも《検体》+《召喚学》といっしょにどうぞ。
《定命の槍》:はい。強い。
《貪る触手》:まぁ、強い。
《終身書唱師》:BGも育成の過程でカウンターが乗るので、それなりに有用ではないでしょうか。

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▼RW(ロアホールド)

赤白らしからぬ、墓地活用とゆっくりとしたゲームレンジが特徴の組み合わせ。
魔技と履修は各大学バランスよく配置されていますが、RWだけ例外的に、魔技が少なく履修に偏っています。軽いスペルを連打するのではなく、履修や墓地回収のアドバンテージで差をつけ、最終的に航空戦力でフィニッシュする形になると思われます。履修をルーティングのモードで使っても、墓地肥やしに貢献できるのはいいですね。
点在する「カードが墓地を離れるたび」の誘発型能力は、追放しても手札に回収しても誘発します。追放するカードと回収するカードの両方がデッキに入ることも少なくなさそうですので、選択は慎重に。(こういうケースは珍しいのでは…?)
積極的に活用する機会は少ないと思われますが、URの「手札からカードを捨てて宝物トークンを生成する」という能力は墓地を肥やせるので、緩やかなシナジーがあります。1度捨てて宝物トークンから青マナを確保し、回収して唱える、みたいなことができなくもないかも…。

●コモンの基本戦力
墓地にある程度カードが溜まってからが勝負になるので、序盤は防御的に動きます。《石昇りのスピリット》《著名な歴史家》《星霜の巡礼者》あたりは、序盤・中盤両方の動きを作れる優秀な戦力ですが、《悪意の打ちつけ》で突破されるので、ブロッカーとしては心もとないです。赤を濃くする意識で、《プリズマリの誓約魔道士》を確実に運用したいところ。
「墓地を離れるたび」システムを持つ《石繋ぎの導師》《発煙する肖像》が無事に着陸したら、上記の序盤戦力やアンコモンで誘発させながらカードアドバンテージを伸ばし、《戦闘学の教授》などの航空戦力で詰めていきましょう。
今回、白のお家芸であるライフゲインがBGに取られており、絆魂で巻き返す動きが少ないのは残念です…。

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●コモンのスペル
3マナ除去《除名》《白熱する議論》の両方を強く使えるアーキタイプなのは、クリーチャーが心もとない分を補って余りあります。
《身震いする発見》は、中盤に一息つきながら、下地を固められるいいつなぎでしょう。前述の通り、唯一魔技が少なめの色なので、細かいスペルは控えめでよいと思います。

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●アンコモン
《実地歴史家、クイントリウス》:コモンの「墓地を離れるたび」システムは盤面に触れないので、是が非でも採用したい1枚。
《歴史の再構築》:墓地回収の本家―緑や黒もびっくりの大盤振る舞い。《合格通知》《居残りの渦》はあまり採用したいカードではなさそうですが、これが取れたら少しずつ散らしてもよいかもしれません。
《炎血の発想》《引き裂き》:追加の除去。いくらあっても困りません。

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▼UR(プリズマリ)、GU(クアンドリクス)

過程に少し違いはありますが、「マナブーストからビッグスペルを唱える」というゴールを共有しています。緑の土地サーチ、宝物トークンを扱うことで、ティムールカラーに多色化することもままありそうです。

URは、宝物トークン生成とコピー。通常のリミテッドでは重すぎる7マナ以上のスペルが複数ありますが、マルチカラーのものは「(U/R)(U/R)、~を捨てる:宝物トークン1つを生成する」という起動型能力を持ち、デッキに入れやすいデザインになっています。それらの大技をさらにコピーするような、派手な展開を目指すカラーコンビネーションです。

GUは、ランプ(追加の土地を出す)スペルが複数存在し、「8つ以上の土地をコントロールしているかぎり」ボーナスが発生するという、固有の能力があります。最終的には《力線の発動》や《フラクタル召喚学》で大きなトークンを作ることがゴールになるでしょう。

●コモンの基本戦力
再三の紹介になる《プリズマリの誓約魔道士》に加えて、なぜ《霜のオオヤマネコ》にノーコストで飛行が付いたのかよくわからない《霜のペテン師》、《針棘ドレイク》、《スカーリドの群棲》あたりが無理なくデッキに入るので、対空防御も安定しています。うまく序盤を捌き、終盤戦に持ち込みたいところ。
隙を見てマナブーストしたら、《精霊召喚学》《ウィザーブルームの誓約魔道士》《力線の発動》で切り返します。《フラクタル召喚学》を1枚控えさせておけば、消耗戦にも強くなるでしょう。

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●コモンのスペル
ここまで書いた赤、緑の除去に加えて、《本への没頭》は、序盤の捌きから終盤の押し込みまで、マルチに使えるいい性能です。
《フラクタル召喚学》にアクセスできる「履修」はいくつかほしいところ。ドロースペルは充実していますが、終盤まで強い魔技持ちが、そこまで多くないのは少し気になります。

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●アンコモン
《本のワーム》:レア未満で、ゴールにできるビッグスペルはこれでしょう。
《ケルピーの道案内》、《クアンドリクスの神童、ジモーン》:序盤の加速から終盤の制圧まで活躍できる、クアンドリスの方向性に合ったカードです。
《クアンドリクスの栽培者》:ナイスランプ。
《断固たる否定》《霊気のらせん》:使いやすいユーティリティでしょう。
《プリズマリの初学者》《ワームホールの海蛇》:盤面を固めた後、《渦の走者》を伴走させて詰めるのは悪くなさそうです。

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▼あとがき

おおまかに、セット全体と各カラーコンビネーションの特徴をさらってみました。
どのカードもテキストが長く、正直、読むだけで一苦労でした。恥ずかしながら、レア・神話レアのカードテキストは、まだ半分以上理解できていません笑
数字の根拠があるわけではありませんが、コモンにここまで複雑なカードが多いのは、近年のセットでは珍しいのでは、と感じます。

ドラフトピックでも、相互作用の理解と、クリーチャーとスペル、あるいは履修と講義の採用バランスがとても求められそうです。シンプルに優先順位をつけられるカードが少なく、今回、一覧での評価は見送らせてもらいました。『中間報告編』『まとめ編』で精度の高いものをお届けできるよう、研究に励みます。
日々の細かな戦績などは、Twitterで小刻みに発信していますので、そちらもよければご覧ください。

最後に宣伝&スペシャルサンクスです。

ぼくも参加している、リミテッド中心のDiscordサーバーです。

ぼくは参加できませんでしたが、フルカードリストが出たあと、さっそく意見交換会があったようです。これから、画面共有をしながらプレイしたり、7勝したデッキの画像を共有したりするので、何かしらの刺激があるはずです。気軽にJoinしてくださいね。

難しそうですが、それだけやりこみ甲斐のある環境になるはず。楽しんでいきたいですね!
長文になりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。ではまた、2週間後の『中間報告編』で。

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