緑の指

 植物を育てるのが上手な人のことを、緑の指を持つ人、と言うのらしい。
 20代のはじめの頃、サボテンですら仲良くなれなくて枯らしていたので、わたしはそれを持っていないと思っていた。
 20代の終わりの頃に商売を始め、ローズマリーとオレガノを育てた。食べられるからだ。その2つは水が足らなければしょんぼりし、水が満ちていれば元気だった。わかりやすかった。
 その後、1度目の結婚をして、気分に余裕がうまれて、ベランダ菜園をした。すでに仲良くなれていた2つに加えてルッコラを育てた。
 ルッコラはよく育ったけれど虫がたくさんついたので、1度でやめてしまった。けれど、食べられるものしか育てる気は起きなかったわたしなのに部屋の飾りに、とワイヤープランツを育てた。あまり大きくはならなかったけれど、わたしのつたない世話でも1年ほどはがんばってくれた。気持ちに余裕があったのかもしれない。
 わたしは2度目の結婚をし、自分の在り方を変えた。家事、はついでにするものではなくて、それをいちばんの仕事にした。だから家にいることが増えた。
 食べたアボカドの種から発芽させて育てることができることをしり、この種からは育ちそうだ…と面倒を見たら、今や5本のなかなか見応えもあるものになってきた。 
 ローズマリーも育てている。今、住んでいるところのベランダと合わなくて2回失敗したが、今はしっかりとしたものとなり、挿木でも増えている。
 基本的には食べられるものが好きなので、野菜の苗も試すが相性が悪いものもあったりして、今やっているのはつるむらさきと大葉。毎年収穫できるようになった。友達の庭から分けてもらったミョウガも。
 花もある。アジサイは3年目。今年からはカーネーションも加わった。どうなってゆくかな。ワイヤープランツもわっさわっさしてる。
 わたしに緑の指なんかなかった、と思っていたのに、今はベランダにも室内にも緑がいっぱいだ。
 今年はお試しで米も育ててる。食べるに足る量にはならないと思うけど終わりまでが楽しみだ。

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