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変わらないもの

私の好きな人は、人を好きになれない。

『アロマンティック』
皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか?

何十億人という人達がひしめき合って生きるこの世界には、いくつものセクシュアリティが存在する。『アロマンティック』とは、沢山あるセクシュアリティの中の1つだ。性欲はあるけれど恋愛感情を抱かない人のことをそう呼んでいる。
「俺は人を好きになれない」
私が恋心を抱く彼は、よくそういったことを口にしていた。だからこの気持ちは相手を困らせるための材料にしかならないと判断して、隠すことを決めた。

しかし数日前。私の決断とは裏腹に、予期せぬ事態が起きた。
俺のことどう思ってる?と彼からLINEが来たのだ。大好きだと伝えると、それは恋愛として?友達として?と聞かれてしまう。あぁ、気づいてるんだろうなもう隠したって時間の無駄だなと思った私は、素直に恋愛としてと答えた。

彼は、俺の行動には好意がないだの私が辛くなるだの、簡単にまとめるとその気持ちには応えられませんというような内容を不器用ながらに伝えてくれた。

彼の行動に好意がないことも、彼が応えてくれる日が来ないことも、初めからわかっていた。わかっていたけれど、そういうのを抜きに考えても、とても大切にされていることや楽しんでくれていることが私は嬉しかったのだ。

恋愛としての好意がないとしても彼が私をとても好いてくれていることは、嫌でもわかった。私はそれだけで充分なのだ。別に彼と恋人同士になりたい訳でもなければ、彼に応えてほしいと思ったこともなかった。
この感覚は中学生の頃に先輩を好きになった時の感覚と、同じと言っても過言ではないほど似ている。

特に見返りを求めたり私はこうなのになんでと嫌悪感を感じたりすることはないし、ただそばに居て本当に楽しそうに笑う彼を、真剣に思いを伝えてくれる彼を、もっと楽しませたいと思うだけなのだ。

それでも時々、彼をものすごく憎く思う時がある。しかしそれは本気だけれど少し頬が緩む憎さであるから、心の底からは憎めなかったりする。
なんの悪巧みもなく、会いたいと言えてしまう彼。私の心が踊るような言葉を、本心で言えてしまう彼。
本当にずるい。
その裏表のなさに、また惚れてしまう。

昨日のこと。
彼とご飯に行った後、ドライブをした。その時彼が、「今日俺泣いた」とカミングアウトした。
私と落ち合って発進させた車の中で、一人で泣いていたらしい。
「俺のことこんなに想ってくれてるんだって思って」
と話した声が少しいつもより元気がなかった。
「ずっと想ってたよ」
なんの偽りのない言葉。本当にずっと想ってた。何もしていない時も何かしないといけない時も、絶対に脳内には彼の姿があって、ただそれだけで励みになっていた。
本当に、本当に、ずっと想ってたんだよ。
私も貴方のことは大切にしたい存在だと思ってるよ。

最近一段と甘くなった彼を、零さないように余すことなく撮って残して大切にしていきたい。
彼のことは絶対に忘れたくない。
私を好きにならない彼は、同時に他の人のことも好きにならない。いや、なれない。
けれどそれは100%そうだと言いきれることではないから、彼が私を見てくれてる今を忘れないように抱きしめていたいと心から思う。


最後に、恐らくこれを読んでいるだろう本人へ

あの日私に、どう思ってる?って聞いてくれてありがとう。多分あのおかげで少し楽になったよ。本当は一生言わないつもりだった。墓場まで持っていくつもりだった。だから、友達としてって答えようとしたけれど、貴方に嘘はつきたくなくてはっきり答えてしまった。
困らせてしまってごめんね。たくさん独りで悩ませてしまってごめんなさい。
本当に応えなくていいの。ただ一緒にいて同じ景色を見て笑い合って、共有できる思い出が増えていくだけで充分幸せなの。貴方の笑顔の理由や思い出に少しでも私を置いていてくれたら、それだけで充分報われる。
なにもしなくていい。って言ったら少し冷たく聞こえるけど、本当にそうなんだよ。今のままで充分幸せだし、辛いなんて思ったこと一度もないよ。
だから貴方が飽きるまで、もう必要ないって思う日が来るまで、どうかそばに置いていてほしい。どんな時も貴方を一番近くで見守って支えたい。もし貴方が独りで道に迷ったら、私が手を引くから楽しい話をしよう。それでも道に迷ったら全部ほっぽってゆっくりしよ。

いつでもどんな時でもそばに居るよ。

ずっと大好きだよ。

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