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2024/06/07 薬の影響で恋愛感情がなくなったことから多様性について考えてみる

プレフェミンという薬がある。
PMS治療薬、と言ってもなじみのない方がほとんどだろう。とくに男性ならなおさらだと思う。PMSは生理前の症状で、主にうつやイライラの症状などが出る。
「生理前の落ち込みがひどいな……」と思って軽い気持ちでプレフェミンを毎日服用して三か月目、これが思った以上に効いた。体感、落ち込みやイライラが8割くらいカットされているように感じる。今までの自分はなんだったのか。これは生薬や西洋ハーブの効果で、女性ホルモンに効くらしいので、あなどれないなあと思う。
その代わり、どんな薬にも副作用はある。わたしの場合、恋愛感情がなくなってしまった。ネットで検索してみると、「服薬したら性欲がごっそりなくなった」と言ってる人もちらほらいたので、タイミング的に考えてもおそらく合致していると思われる。
ということは、わたしの嵐のような恋愛感情は大なり小なり女性ホルモンが影響していたことになる。そんなことがある???
エビデンス的にどうなのかはわからないけど、正直わたしはほっとした。良かった。これでバンドマンを熱烈に好きになって貯金を切り崩して追いかけたり、急に人をめっちゃ好きになって、ものすごい勢いで接近して身を滅ぼすことは、もうないんだ。本当に良かった。助かった。
めでたし、めでたし。

……というところで終わりたくないので、マッチングアプリをやってみたものの、あまり意欲が湧かない。なんだか、男性がたくさんいるなあという漠然とした気持ちしかない。
短歌も、好きな人を重ねて詠むことが減った。
書き途中のR18小説(BL)も、最近は全然書き進めていない。
あんなに好きだったヴィジュアル系バンドも、お金がないからと言いつつチケットを買うのをずっと後回しにしている。
今までわたしの行動力って、「好き」の衝動を前提にしていたんだろうか。
自分の性格って、たった一錠の薬で左右されるものだったんだ。


恋愛感情がなくなったことは、自分が薬を飲み始めたからだ。でも、仮に女性ホルモンの影響でそういった感情がなくなったとすると、それは自分自身の意志によって左右できることじゃないのがわかる。
つまり、生まれつき恋愛感情がない人もいるんじゃないだろうか。
人を好きになれない。恋人になろうとは思わない。そういう人が一定数いるかもしれないのに、相談したところで「そのうち好きになる人が出来るよ」と言われるばかりで、現状はそうならない可能性もある。「恋愛ができなくても大丈夫」と言う人は、おそらくあまりいない。
そうすると、社会は、『恋愛ができる』人前提に回っていることに気づく。
これは恋愛感情のあるなしだけじゃなくて、『どうしても異性が好きになれない』人もいるんじゃないだろうか。それを『個人の選択』『個人の意思』と決めつけすぎてしまうと、おそらく当事者の心はひびが入ってしまうだろう。

高度経済成長期を代表として、長らく日本は「男が稼いで、女が支える」価値観をベースにしてきた。
それが崩れつつあるのは、日本という国が斜陽に入ったからだ。男性の収入だけで家族を養うのが難しくなってきた時代に、今までの家庭のモデルだけでは限界がある。
それを、「昔の日本を取り戻し、より強固に国体を維持する」人と「今までの価値観だと限界があるので、様々なモデルを模索する」人で対立が起きるのはわかりやすい。
たまに、「少数派がうるさい」という声をSNSで見聞きするとき、むしろ今まで口を封じられていたことが、ようやく声に出せるようになったんだと思う。
しかし、SNSでは言論に限界がある。実際の理想と今の社会とでひどく乖離していて、むしろSNSでは叩き合いに終始してしまっている現状がある。わたしもいろいろ意見があるけれど、これが反対派の意見構築に使われるなら何も言わない方がマシだと思い直す。
これを「日和見主義者」と言う人もいるだろう。こうしてわたしたちは分離していく。
今の現状は、基本的人権をめぐって少数派が終わらない椅子取りゲームをしているように見える。はたして、少数派が基本的な幸せすら掴めないことが、本当に成熟した社会なんだろうか。


今もプレフェミンは飲み続けている。自分の恋愛感情は未だに湧いてこない。このまま創作意欲もなくなって、ぼんやりとした日々を過ごし続けるんだろうか。それとも、なんらかの拍子で副作用がなくなる時があるんだろうか。なんだか、自分の身体で人体実験をしているような気持ちだ。
プレフェミンをとるか、恋愛感情をとるか。究極の選択はまだ続きそうだ。