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窓越しの世界2022.11.6~12.31

11/6【そういう心境】
伝えることに興味はない。

伝わることには興味がある。

そういう心境。

11/7【ハズレなしの精度】
池袋の歩いたことのない裏路地。

雑司ヶ谷へ続く道は、喧騒と隣り合わせの生活の心地よさを想像させた。

グーグル評価が4以上の店を探し電話をして予約。

ハズレなしの精度。

11/8【手と手と手】
無意識を代弁する手。

代弁を解釈する手。

代弁と解釈の双方を受け取る手。

手と手と手。

11/9【少し揺れた?】
高円寺のルノアールは今週二度目。

誰にも気をつかうことなく、PCを開いてコーヒーを啜る。

気兼ねない、都会の受け皿。少し揺れた?

最近、地震が多い。

11/10【日帰りの僕】
今日はおばあちゃんの誕生日だと母が言った。

日帰りで東京へ戻る予定の僕は、お墓参りに行こうか?

そう心の中で呟いて、時計を見て、黙っていた。

11/11【ストン】
どこにも心がストンと落ち込まない一日。

カレーを食べて、魚を見て、銭湯に行く。

夕方の渋滞に呑み込まれ、真っ暗な部屋で待つトトを思う時。ようやく、ストン。

11/12【東京駅】
東京駅にはなんでもある。

過去も、未来も。

八重洲地下街でカレーを食べる。

11/13【沢山の回答】
エフェクターボードをライブ使用にセッティングをする。

レコーディングされた曲たちの再現に向かうが、それの意味についての疑問もある。

沢山の回答が、混沌として、どれも正解であり誤回答をはらむ。

11/14【一つしかなければ】
無邪気に誰かに伝えたいときの手段が多すぎる。

一つしかなければ、迷わないのに。

11/15【お金の話】
気持ちよくギターを弾いていると電話が鳴る。

PCの前に引き戻されて、お金の勘定が感情の障害になる。

大切なお金の話。僕を助けてくれるお金の話。

11/16【音の墓標】
今朝、トトを小脇に抱えながら思う。
「こんな人間がいたのだ。」
そんな墓標のようなものが世に放たれたのだと。

小さな虫たちが現れなくなった公園のベンチで一服してスタジオに向かう。
僕のバグは相変わらず存在して、内側で育つ。

表現とはなんだろうか?
生きる程に現れる回答の中で、選択をしては見失い続ける。

音楽に固定されたその一つに、理由をつけて、発信する行為をこれからも繰り返すだろう。
1000ある僕の、1にも満たないか、それ以上かもしれない、音の墓標を。

11/17【不思議が嬉しい】
O脚で腰痛持ちの僕。

内腿や内子関節も筋肉が弱いことが原因だと察しがついてバランスボールに乗り鍛え始めた朝。

明らかに弱い内股と股関節の筋肉。刺激を加えると、腰が楽になる不思議が嬉しい。

夜はビックシーフのライブ。

11/18【いつかの僕】
スカイツリーの空まちエスカレーターから空中庭園が見えた。

いつかのクリスマスシーズンがよぎる。

夜には高円寺の街にいる僕は、そこでまたいつかの僕を見つけた。

11/19【実態の実感】
体に向き合うなぜ?は歌と同じだった。

それは自分にしか分からない。

細部にまで気を配ると、決して同じ体感など求めてはいけないと思い当たる。

伝えようとするときも同じだ。

その歯痒さを、受け止めて、伝えることの、伝わることの、実態を実感する。

11/20【5分で帰れるありがたみ】
先日セッティングしたエフェクターボードの配線を見直す。

歌いながら足元にも気を配るのだから、慎重になる。

空腹も忘れ、繋いではやり直す。どんなに遅くなっても5分で帰れるありがたみ。

11/21【あれ?早いのね】
よく晴れた秋の一日。

本日もレコーディングしたものを体に馴染ませる作業。

夕方からジムなので早めに帰ると、あれ?早いのね。

そんな表情のトトのお出迎え。

11/22【あの春を】
お茶の水の宮地楽器へ行くと、ビルの立て直しで小さい店舗になっていた。

いくつかのギターアンプを試し、決断できずに帰る。

靖国神社の横を通るとき、僕は今日もあの春を思い出すのだった。

11/23【よろしくね】
神楽坂の高級マンションに着くと、アンプを抱えた外人が出てくる。

僕は一生のうちで、こんな金の使い方ができるだろうかと、そのマンションの家賃を想像していた。

片言の英語で立ち話をして、僕の元に転がり込んできた1959年製のギターアンプ。

よろしくね。

11/24【真空管デビュー】
真空管を抜いて、それの持つ性質を調べる。

もう少しクリーンな音が欲しいので、新しいチューブを注文する。

真空管を外すのも買うのも、初めてなのが自分でも驚き。

11/25【言葉の種】
言葉の種を植える。

その種が育つかどうか、楽しみではあるけれど、期待とかそういうものとは無縁の感覚。

咲いて、実り、枯れて、また植える。

11/26【これから、これから】
真空管が届く。

なるほど、面白い。

あぁ、また楽しい世界を見つけた。

ギターの楽しみも、これから、これから。

11/27【明日の朝に食べよう】
深夜に帰宅すると、テーブルの上に冷えたピザが置いてある。

明日の朝に、グリルで焼いて食べよう。

そう思って灯りを消した。

11/28【声の謎なぞ】
自分を分析する。

声のなぞなぞに、一筋の光。

骨格と向き合い、修正。

いつまでも発見し続けるのは、録音という仕事をしている恩恵なのだと思う。

書かないと分からないことがあるように、録音しないと分からないことがある。

11/29【手に入れることは、手放すこと】
昨日から始まったスタジオの改装工事の音が階下から聞こえる。
3階のフロアで僕はライブのリハをしたり、スタジオの整理をする。

手に入れることは、手放すこと。

逆の文脈も然り。

雨が止むと生暖かい風。

また雨が降ってくる前にスタジオを出てトトの待つ家へ。

トトは、手放したくないな。

11/30【5秒でゴロゴロ】
朝。布団が畳まれると、行き場を無くしたトトが暖かい場所を求めて彷徨う。

結局僕の膝しかなく、テーブルの障害物もお構いなしで突進してくる。

そろそろスタジオへ行く時間。

今年初めての電気カーペットをオンにして、カシミアのストールにトトを包んでセッティング。

5秒でゴロゴロ言い出した。

12/1【懐かしい時間軸】
僕の時間軸。トトの時間軸。

僕とトトだけの数日間。

懐かしい時間軸の中。

12/2【自分】
テーブルの上に並ぶ沖縄土産。

東京で全て手に入るんだろうな。そう思う自分。

そうじゃ無いんだよ。そう思う自分。

12/3【歪み】
気持ちが言葉になる時の歪み。

音量過多による歪み。

歪みにもいろいろある。

12/4【歴史の始まり】
再びのお茶の水。

ギターショップの匂いはどこも似たようなもの。

少なくともあと60年は使えるギターアンプを買った。

歴史の始まり。

12/5【ストーブか厚着か】
冷たい雨なので、自転車を置いてスタジオから帰る。

そろそろストーブを出そうか。

もう少し厚着でやり過ごそうか。

12/6【学校みたい】
指先の空いた手袋に指を押し込み自転車を走らせる。

スタジオから10分のライブハウスまで。

地下に降りる。全員のことを知ってる。

その感じは、学校みたいだった。

12/7【輝き】
不意のトラブルのおかげで、朝の景色が変わった。

スタジオから少し歩いた善福寺公園の朝陽を浴びながら、状況に少し感謝する。

日常は非日常によって輝き、非日常は日常によって輝く。

12/8【不完全だから】
うまく話せないから、歌を作る。

うまく伝えられないから、メロディーに込める。

音楽で伝わる不完全さが、魅力であり、その本質な気がする。

不完全であるという健気さだ。

12/9【朝に備える】
早い夕食を済ませて再びスタジオへ戻る。

体に馴染ませる時間をひたすらに消化。

この身も消耗品だという感覚がよぎりてっぺんを目前に帰宅。

ただただ回復を祈り、横になり次の朝に備える。

12/10【見たくないもの】
座り場所の無いソファーにまた服が積まれていく。

デスクの上にも書類が蓄積する。

こんな風に、技術の積み重ねも可視化できればいいのに。

見たくないものの方がよく見える。

12/11【潮の流れ】
高輪の街は昭和の高級感が漂っており、都会の中にあるレイヤーを見ていた。

会話の海で舵を握り、言葉の波をいくつも超えてたどり着いたのは縄文時代だった。

傘のいらな夜のにわか雨に打たれながら、太古の雨を思う。

12/12【区役所と中華料理店】
当たり前のようにタバコが吸える店に入るとなんだか妙に安らぐ。

それが当たり前だったかつての風景の中で刀削麺を注文。

音声が聞き取れない朝ドラのクライマックスにポロっと涙しそうになる。

阿佐ヶ谷の杉並区役所はごった返していた。

12/13【トトは知らぬ顔】
繋ぐツールは、いつの間にか分断のツールに変わり、

繋がれていたものは裂かれ、離れていたものは繋げられた。

トトは知らぬ顔をしていて安心する。

12/14【そんな日々を送りたい】
その一つ一つは弱々しくても連なることで増す強度。

吹けば飛ぶ藁が連なり縄になるような、そんな日々を送りたい。

オペラシティーギャラリーで川内凛子さんの写真に囲まれて思う。

12/15【手袋がない】
昨晩予約したタクシーが5:40に自宅前に到着。

吉祥寺からリムジンバスで羽田空港。大分空港からバスに乗り、大分駅で気づく。

手袋がない。

12/16【癒す夜】
ホテルで起床。朝食を済ませ、心当たりのある場所に電話するも見つからない手袋。

チェックアウトし、増村のスタジオでじっくり音合わせ。夕方になり伊賀さんが佐伯に到着。

本日の音出しはそこそこに終わり、美味しい魚とお酒で旅の疲れを癒す夜。

12/17【環境が及ぼす影響】
夕方までみっちり音出し。3人で温泉とサウナ。

東京では過ごすことのできない時間の流れ。

同じことをしていても、景色や空気、違う環境に包まれると、その意味も、成果も、変わる。

環境が及ぼす影響は、その時よりも、後になって実感することが多い。

12/18【昔は逆だったのに】
多分、僕はもう別の生き物になっている。

4年ぶりに見た景色が、そう言っていた。

変われている自分に安心をした。

昔は逆だったのに、今は変わっていけることが嬉しいのだ。

12/19【逆側かもしれない】
大分駅ビルのホテルで迎える朝。伊賀さんはとっくに朝の便で東京に向かっている時間。

僕は眺めのいい露天風呂から海を見ている。

かつての空港はどこだったのだろうかと市街地を見下ろしながら探すけれど、見当もつかない。

逆側かもしれない。

東京について吉祥寺行きのバスに揺られながら、朝ドラの再放送を一気に見返して日常に接続していく。

12/20【言葉の要らない会話の入り口】
音色に人を見るようになった。

ああ、これが君の音か。

これが僕の音だよ。

そんな言葉の要らない会話の入り口にいる気がする。

12/21【言葉を増やすということ】
言葉を間違えると、会話は脱線する。

言葉を知らなければ、会話は弾まない。

音を出す練習は、言葉を増やすということ。

12/22【体力の調整をしながら】
疲れの蓄積を感じて葛根湯を飲む。

なんとなく元気になった気がして、スタジオでもう一踏ん張りしてしまう。

レコ発まであと4日。体力の調整をしながら進まないと。

12/23【諦めて眠る】
睡眠が記憶と技術を定着させる。

時間が必要だという意味がそこにある。

徐々にしか進まないことを知っているから、諦めて眠る。

12/24【知り方】
知る、には二つの作用がある。

拒むこと、そして受け入れること。

どちらに転ぶかは、知り方にある。

12/25【薄々感じながら】
時は金なり。子供の頃、なぜか一番好きだった言葉。

なぜ、そんなことを思っていたかは覚えていない。

もしかしたら、家業のスーパーマーケットのレジに並ぶ人の行列が時と金の流れに移ったのかもしれないし、
そうでは無いかもしれないし。

生命の繁栄に不可欠だったはずのその流れと繋がりにピンときていたのかもしれない。

別の道もあったのかもしれないけれど、諦めて今、そのレールに乗っている。

それは間違いだと、薄々感じながら。

12/26【立ち止まりバランスをとる技を覚えた時】
後退することを許されない歩み。

ペダルを漕ぐことをやめるとバランスを保てない自転車のように音楽は進む。

立ち止まりバランスをとる技を覚えた時、僕は自由になれる気がする。

12/27【拡大と細分化】
場所を作るということは、触れ合う機会を得ることだ。

場がなければ、人はどうなるのだろうか。

人は場を求め、場を作り続ける。

村、集落、町、国家。

拡大と細分化は、比例して起こっている。

12/28【そんな雰囲気だった】
スタジオの大掃除は続く。

手付かずの多くを、人は年末に取り掛かる。

強制的に社会がブレーキを踏むから、安心して取り掛かる。

コロナ禍も、初期はそんな雰囲気だった。

12/29【まやかしであり、真実を】
たくさんの振込みをしながら、それが血や肉に変わる連鎖を想像する。

もはや目に映る全ての形あるものに刻まれているそれを、忘れながら、思い出すのだ。

金という、まやかしであり、真実を。

12/30【今年もありがとう、お疲れ様】
6時に目が覚める。

少しづつ明るくなる時間帯が好きだ。

一日中スタジオの整備。

今年もありがとう、お疲れ様。

そう言って扉を閉じて、また来年。

12/31【人間の可愛らしさに笑う】
初めての道は長く感じたけど、人生の折り返しに差し掛かると、初めての道との出会いは当然減り、初めての道にもいつかの道を重ねるようになる。

後戻りが出来ない道だとわかると、人はちょっと強くなり、振り返ることが囁く恐怖心の中で、諦めという意味が違う角度から迫ってくる。

今年最後の日没と、北関東のひたすらに平坦な道の中で、人間の可愛らしさに笑う。

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