「青をえらべば」に寄せて
2020年5月7日「青をえらべば」の弾き語りを録音した。出来立ての歌詞と初めて使うコード進行。
あの頃の僕はもう居ない。
だって、もうあの頃とは気持ちが違うからだ。
同じ言葉で歌うことはできるけれど、同じ気持ちで歌うことはもう出来ないのだ。
歌も、気に入らない所だらけだったから、新しいスタジオで歌い直したりした。今の方がうまく歌えるけれど、なんかちょっと違う。
もう僕はあの日のようには歌えないのだ。
緊急事態宣言が延長して、誰もが知らない世界に足を踏み入れざるをえなかった。
あの時、僕は、「きっと、この気持ちを、僕は忘れる」。
そう思った。
これまでの、たくさんの事を忘れてきた経験が、僕にそう思わせてた。
忘れることだけは、覚えておこう。
そんな気持ちでメロディーに詞を乗せた。
コンビニの定員との小銭のやりとりにも、ビニールで覆われた景色にも慣れて、僕たちは忘れていく。
あの頃の僕はもう居ない。
だからもう、同じようには歌えないのだ。
取り直した歌は、気に入らない所があるけれど、気に入らないけれど、そこが僕は好きなのだと思う。
話は変わるけど、
世界というものは、統治されている。
そして、政治は「統治のため」にあり、本当のことを言うためにあるわけではない。
統治者の立場になってみれば簡単にわかることだ。
それがわかると、腑に落ちる。
そして、少し霧が晴れる。
前提の認識だ。
統治の側から見たら、「本当のヤバさ」を回避するためには「本当のヤバさ」を伝えることをしないだろう。
「好きだ」を伝える時に「好きだ」を安易に使わないこととも似ている。
歌詞の中にある「青をえらべば、青をえらべない」とは、例えばそういうことだ。
ウイルスのことは、何が本当かはわからないが、
その前に、僕らは統治されているのだ。
それだけは確かであるならば、その視点から世界を見つめて、何が自分に必要なのか知ることが、僕には幸せな世界だ。
この世界に足りないもの、僕に写っているそれは「前提という共有」。
そして「僕らは、忘れるよ」という前置きだ。
少しずつ忘れ、書き留めておいたことも解釈が変わり、
僕らは歩むのだ。
大前提を、知って、
そして忘れられるくらいの生き方をしたい。
弾き語りをした日の夕方、「忘れたくないけど、忘れるんだ、、」そう思って公園の空に向かってシャッターを押した。
「青をえらべば」 作詞作曲:笹倉慎介
僕は忘れる こんな気持ちさえも
似たような呼吸を 繰り返すほど
ここを離れるだけの理由や
頼り無い声を待つだけなら 行こう
行こう
伝えるために 青を選べば
伝えるために 青を選べない
君は覚えてる? あの日の朝焼けの色
目覚めの 深いインディゴ色
ここに留まるだけの言い訳を
君と見つけたいから
伝えるために 青を選べば
伝えるために 青を選べない
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