見出し画像

窓越しの世界・総集編 2016年6月の世界

6/1【高速道路三昧】
蒜山SAは昨晩からのBGMがエンドレスである。夜通し不吉にしか聞こえなかったピアノの音は高原の朝によって、清々しい音色に変わっていた。青空が広がり大山までを見渡せ、気持ちが良くてレストランでは珈琲をおかわりした。

そしてひたすら東へ走る。サービスエリアとパーキングエリアの違いに、あーだこーだ言い合いながらの一日。

蒜山高原SAの朝から西宮塩原SAでの夕食、就寝まで高速道路三昧。エアベッドでの寝心地にも慣れたもんである。

6/2【灯りのどこかに】
岐阜県美濃市、どことなく富士宮の田舎と似ている。小さな山々が連なり谷間を川が流れ、それを沿うように電車が走る。

ある駅のホームには改札口も無く、子宝の湯という温泉施設へ直結している。駅名も子宝の湯駅だ。
汽車に揺られてきた私たちは、ゆっくりとした時間を過ごす。湯あがりの生ビールという贅沢に身を委ねていると、夕闇の訪れとともに大広間のテレビの中も賑やかになった。

帰りの車窓から見える家々の灯りのどこかに、あぁ、このまま帰ってしまいたい。

6/3【ハイライト】
人気の無い通りからは想像もできない店内に面を食らう。神保町辺りにありそうな老舗喫茶店のような佇まいだが、岐阜の山間の街である。

朝の会食で一日が豊かに始まり、一杯の珈琲がサーブされてくる時の幸福感も、待ち合わせた友人との会話も、この旅のハイライト。

車を走らせると、この日も初夏の陽射しと涼しげな風の一日。

6/4【すべてが終わって】
すべてが終わって、一息つこうと腰を下ろす。久しぶりのguzuri。私の目には、やるべきことしか見当たらず旅の疲れなど感じる隙がない。

ひさしぶりに近所のダイナーに繰り出す。一人、また一人、連れ合いが増え、白みだした空に愕然とし、おとなしく寝ていれば良かったという後悔がこみ上げると、いよいよこの町に戻って来たという実感が湧いてくる。

6/5【幸福感】
馴染みとなりつつあるビストロへ。今夜も忙しそうだ。

酒も食事も控え目にした帰り道は足取りも軽い。

君の鼻歌が聞こえてくる瞬間というのは私にとって一等、幸福。

6/6【違和感】
マイクのセッティングをしながら、音楽家達の到着を待つ。3週間の旅の感覚が体から離れず、ここに居る事に違和感を感じる。

明日も明後日も、その次の日もここに留まるという、当たり前の感覚が麻痺している。

6/7【本当に思っている事だけを】
車窓からの景色が恋しい。

波形が流れる画面ばかり見ているとバカになりそうなので、目を閉じる。音楽家たちの迷いを感じるときは、出来るだけ心を静かにする。

一番遠くから音楽を眺めて、本当に私が思っている事だけを伝えるようにする。

6/8【季節を飛び越えた視界】
スタジオ入り前の1時間くらいをモーニングで過ごせるといい。目玉焼きかスクランブルエッグかを選び、アメリカンをすする。

いつもの景色だが、少しちがって感じるのは、ひと月ほどの季節を飛び越えた視界だからだろう。窓からの光の具合、湿度による珈琲の香りの立ちの違い。
新米だったウエイトレスのぎこちないサーブにやきもきする事もなくなった。

皆、少しずつ時を進めている。

6/9【不正解を正してゆく】
3日間の録音物の編集作業に入る。正解などないのだが、明らかな不正解を修正することから組み立ててゆく。

正解など誰も分からないのだが、不正解を正して行けばそれに近づいてゆく。

6/10【ぐるんぐるん】
guzuriのリフレッシュをしながら珈琲店の営業が再開。スタッフ2名と一日がかりだ。それでもなお足りない。少しずつ前にすすむ日々が始まるが、そろそろ休みたい。そんな思いと戦う。

私の頭の中もそろそろ強制終了してリフレッシュしたいのだが、まだまだぐるんぐるんする。

6/11【せわしなく変わる風向き】
夕方、店を抜け車を走らせた。30分程だったが、良い時間だった。

アイスクリームを食べながら涼しい風に当り、なにもかも投げ出したいと思っていた。ツアーが終わってから、息つく間も無く一週間が過ぎた。各地でお世話になった人々に思いを馳せる。

涼しい風だが、ちと強い。長く伸びた髪が、せわしなく変わる風向きに合わせてなびくのでめんどくさい。

6/12【おかげさまで】
仕事を終え、スーパーマーケットまで歩く。今夜は餃子の残り物があるので、それとプラスαの献立。瓶ビールが呑みたくてカゴに入れる。ここのスーパーの良いところは、ビールの冷えが完璧であること。そしてお気に入りのビールがいつでも特売であること。

おかげさまで毎晩呑んでしまう。

6/13【完全な休日とは】
雨のロイホ。久しぶりの休日である。休日にすると決めたのだが、ライブのブッキングやらメールやらでやっぱりそんなわけにはいかない。

未発表の曲をまとめ、ギターを手にする。これも仕事になるはずだから、完全な休日はかなりハードルが高い。

6/14【後押ししてくれるもの】
今週はとにかく休むと決めたのだが、なんだかんだギターを弾く一日。

夜になって駅の向こうの、カウンターだけの店へ向かう。久しぶりの会話は弾むにきまっており、グラスの傾き方も威勢がいい。
season3の行くえや、今後の作品について話す。

共に作品を作ろうとしてくれる人がいる事はとても心強く、私を後押してくれる。


6/15【早いからといって】
数日前に吹き込んだ気になるメロディーを思い出しギターを手にとる。メロディーにコードを当ててゆく作業は、曲作りの醍醐味とも言える。譜面を書こうとした時期もあったがイメージに追いつかないのでレコーダーに移行した。

言葉の場合は手書きがイメージに追いつかず、今ではタイプの方が主になっている。しかし早いからと言って作品の出来に影響があるのだろうか。

6/16【メロディーとの和解】
4時ころ目が覚め、日本語を毛嫌いしそうなメロディーとの和解に勤める。もう一度寝て、9時過ぎ頃また起き上がり、ようやくメロディーが言葉を受け入れ始めてくる。

6/17【下ごしらえ】
久しぶりの入間で、先日録音したアイリッシュバンドのミックスの直し作業をする。

大量の不要品をクリーンセンターへ持ち込む。

明日のライブの仕込みをする。明日のguzuri珈琲店の仕込みをする。

毎日、何かの下ごしらえ。

6/18【そんな一日】
夕方、近所の図書館まで歩く。その目の前の公園のブランコにゆられながら、夏の夕暮れの始まりを見た。明日は満月だという。

ベランダにテーブルを出し晩酌をする。そんな一日の終わりかた。

6/19【紫蘇揉み】
あれよあれよと場面が展開し、私はいつの間にか紫蘇の葉を力一杯揉み込む作業をしていた。今年の梅作りもいよいよクライマックスらしい。

手のひらの皺という皺に染み込む紫蘇の葉汁。刺々しい葉は柔らかくなり、手触りもだんだん気持ちよくなる。

とても骨の折れる作業。

いつも美味しく頂いている梅が、今年はもっと美味しくなる気がする。

6/20【デジャブ】
どことなくハワイ島を一周りしたドライブがデジャブしている。

ふと赤い屋根と白い壁の喫茶店が目に入る。一瞬車窓から見えたガラス扉の向こうには海が広がっていた。細い山道であったが、車をむりやりUターンさせる。
 
店内に入ると期待通りの眺望で、大島までを見渡せる。風景の中を、高速船が水しぶきを上げて横切って行く。それ以外は風も波も穏やかだ。
 
しばらくはここで、言葉を待ってみたい。そんな気分になる。

太古の昔、ハワイ沖にあったであろうと言われる伊豆半島だが、私が感じたデジャブはきっとそういうことなのだろう。

6/21【珍しい降り方の日】
駅まで君を送ったあと、私はお気に入りのレストランでパソコンを広げる。私の頭はなかなか整理整頓がうまくないので、返信しそびれているメールが幾つもある。
返信の来ないメールも同じくらいだ。

珈琲を3杯くらいおかわりをする間にすっかり空は青空にかわり、軒にしたたる水滴も輝き出している。梅雨にしてはめずらしい雨の降り方。

6/22【鰻を焼く音】
近所の鰻屋の座敷に腰をおろす。外はまだ明るい。読みかけのノンフィクションを広げて瓶ビールを手酌。テレビはあるが、それが付いているのを見た事はない。

BGMも無く、しんとした店に響くのは鰻を焼く音。

 
6/23【相変わらずなもの】
TVの中では今日もとんねるずが馬鹿騒ぎをしている。丁度一ヶ月前に岡山のホテルで見ていたのと同じおふざけをしている。

落とし穴に落ちる人を見て楽しむのだ。もうこんなことを出来るのはこの人達くらいだろう。いつまでもそんな風にいてほしい。

随分久しぶりに来た焼肉店が相変わらずで安心する。

6/24【帰宅前に】
主に80年代の選曲や、なんとなくその時代を漂わす店員の風貌、当時のレコードジャケットが壁一面にディスプレイされた店内。

赤い暖簾をくぐり、そんな状況に囲まれて頂くビールとラーメンが、ここ数日の疲れを癒してくれている。
二日間に渡るJJFの録音を終え家路につく道すがら。

6/25【忘れてゆくが】
30分後、忘れ物に気がつく。財布無いのに気づいてそのままドライブとはいかない。1時間のロス。

車の中で歌える時間が増えたと思えた方がもちろん良いのだが、そう思うまでに一刻かかる。先週はPC。先月は携帯。それにポケットWi-Fi。ライブにギターを忘れた事もある。

話は違うが、私たちは沢山の事を忘れてゆく。大切なこともどんどん忘れてゆく。けれどせめて、失わないでいたい。たまにそれを見つけて涙したりできればいい。

6/26【時空の調子】
夜のドライブでふと隣の車線に目をやると、熱唱するおじさん。私も熱唱していたので気持ちはわかる。

夜のドライブの時間。時空の調子を整える大切な時間。


6/27【缶詰】
ワイパーの動きが相変わらず鈍い。先日一度動かない時があったが、また復活している。ツアー中に整備点検に出す予定が出せずにそのままの愛車。

長いくせにトラック並みにハンドルが切れるので運転はしやすい。今朝の青梅街道は小雨がぱらつく。

これからまた3日間スタジオに缶詰。

6/28【いつものこと】
雨が少しぱらついているが、傘は無くても良さそうだ。夜風は程よく冷たい。喫茶店とかでの会話よりも、こんな風に歩きながらするそれの方がなんとなく好きだ。

行きと帰りでは道を変えてみたりするのもいい。会話の途中で、おかしな看板にいちゃもんをつけたりもするが、いつものこと。

6/29【音はおもしろい】
3日間続いたJJFの録音が終わる。まだまだ途中だが、一段落。思い返せば2年以上前に計画していた録音。あれからみんな少し大人になった。あの頃とは出ている音が全然違う。ハッキリ分かるので驚いた。

音はおもしろい。

6/30【足しげく】
屋上駐車場に車を停め、エレベーターで2Fヘ。珍しい植物達を眺めながら喫茶店のアプローチへ。12時までのモーニングタイムになんとか滑り込む。
大きなガラス張りからは古い団地が望める。車通りや人の流れもよく見渡せて退屈しない。例えば私は、どこかの国の田舎町で暮らしていても、朝の喫茶店があれば足しげく通うのだろう。

画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

画像7

画像8

画像9

画像10

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15

画像16

画像17

画像18

画像19


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?