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TBSラジオの低迷に思う

はじめに

 ふと、何気にネットブラウザをしていたら、TBSラジオの低迷に関する週刊文春の記事を見つけた。(※1)記事の内容は、昨年に平日朝のラジオ番組を降板した伊集院光とTBSラジオ社長の三村孝成との確執、三村執行部の従来の慣習を無視したトップダウンによる一方的なラジオ番組、ラジオパーソナリティを決めるやり方へのTBSラジオ関係者の反発など、三村執行部に関する批判を中心としたものであった。

 TBSラジオはここ最近聴取率が低迷しているが、その原因が三村にあるのではないかとの主張はSNS界隈にあふれていた。だから、記事の内容自体は既に知っていたのだが、週刊誌が取り上げたという辺り実際のところ想像以上に深刻な状況なのではないかと感じた。

番組関係者中心かトップダウンか

 TBSラジオの売りが番組パーソナリティの個性にあることは、かつてTBSラジオで番組を持っていた宮川賢が指摘している。(※2)宮川はTBSラジオの体質として番組の内容に番組部外者が介入しにくい状況があり、TBSラジオの顔である生島ヒロシ、森本毅郎、大沢悠里らは自分の個性や想いを強く反映した番組づくりをしている(いた)との見解を示している。

 もちろん、これは宮川個人の見解でしかない。ただ、TBSラジオの番組が番組パーソナリティの個性に依存していた要素は強い。現に、聴取率の高い番組のラジオパーソナリティが降板をした後の番組は前の番組と同様の聴取率を維持できない傾向にある。典型例としては「久米宏ラジオなんですけど」の後番組「週末ノオト」(※3)、「伊集院光とらじおと」の後番組「パンサー向井の♯ふらっと」(※4)、「荒川強啓 デイ・キャッチ!」の後番組「ACTION」(※5)などが挙げられる。

 前述した週刊文春の記事にある、トップダウン方式による番組内容やラジオパーソナリティを決めるやり方に変えようとしている背景には、ラジオパーソナリティやラジオ番組スタッフに依存する番組づくりによって、聴取率が番組関係者に左右されることを解消したいとの思惑もあるのだろう。ただし、その場合には当然、ラジオパーソナリティ、番組スタッフを指導するスタッフが聴取率、質の点でも優れた番組を作成することが前提であることが必要だ。だが、三村執行部で新たに始まった番組が低迷している事実を考慮すると、TBSラジオのトップが聴取率、質の意味でも優れた番組づくりをするだけの体制を整えられていないと言わざるを得ない。

TBSラジオの低迷に留まるか

 今回紹介した週刊文春には聴取率についての言及があるが、TBSラジオの聴取率は下がっているものの他局がその分聴取率を上げているわけではない。(※6)TBSラジオで番組を持っていたラジオパーソナリティの番組は好きでも、それ以外のラジオ番組は他局も含めて聴くリスナーではないため、ラジオ番組の終了とともにテレビ番組やspotifyなどのSNSといった他のメディアに変えたということなのだろう。だから他のラジオ局関係者もTBSラジオの凋落は敵失を喜ぶというよりも、将来的には自局の衰退にもつながる現象という危機感を持っているのではないだろうか。

 ラジオの聴取率自体が減少していることは、ラジオ自体が若年層を中心とした新たな層への浸透が十分とは言えない状況でもあることを意味している。radikoなどSNSメディアを活用する形でシステム上は若年層に対応してはいるが、そもそも番組内容自体が表面的な若年層へのウケを狙ったものであれば、若年層の支持は得られないし、また従来ラジオを聴いていた中高年層の支持も離れていくだろう。

 私自身、かつてはラジオを頻繁に聴いていたが、最近習慣として聴いているラジオ番組は、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(以下「スタンバイ」)文化放送「ロンドンブーツ1号2号 田村淳のNewsCLUB」くらいである。スタンバイは平日の朝に放送されている番組だが、この番組が終了した場合は習慣としてラジオ自体を聴く習慣がなくなるかもしれない。

 TBSラジオの低迷は、本質的なところでラジオリスナーがラジオ自体から離れていることの表れであると言える。公共放送としての役割を持つNHK以外の民間ラジオ局は、採算の関係でラジオ局自体から撤退する可能性もある。現に地方ではいくつかのラジオ局が閉局をしている状況にある。ラジオの存在意義がどこにあるのか、ラジオ局関係者が真剣に考え、対処することを一ラジオリスナーとして切に感じずにはいられない。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

脚注

(※1)

《沈みゆくラジオの王様》TBSラジオの“独裁者”が破壊する「数字」と「社風」と「伊集院光」 | 文春オンライン (bunshun.jp)

(※2)

バイタルゲージがゼロに達する恐怖と「らじおと」終了の恐怖-お前の母ちゃん宮川賢!! (amazon.co.jp)

(※3) お笑いタレントバービーのラジオパーソナリティの番組。1年半で終了した。

(※4) Oriconの聴取率調査の記事からは、裏番組であるニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に聴取率で負けている状況にある。

ニッポン放送、週平均V3達成 SixTONES『ミュージックソン』でも首位獲得 | ORICON NEWS

(※5) 荒川強啓 デイ・キャッチ!の報道を中心とした番組に対し、情報エンタメ番組として始まった番組。1年半で終了した。

(※6) (※1)同

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