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2018M-1決勝まであと10日

お笑い好き一家で育ち、寒さが本格的になるこの頃には必ずテレビの前で集まって漫才頂上決戦を見てきましたが、今年はわけが違う。
応援する人がいる。予選を2度生で見ている。それぞれの思いと覚悟と涙を、少し、知っている。

まずは決勝進出者発表をみて。
No.1206 和牛
正直和牛の決勝進出はカタいというか、彼らもそれを通過点としかみなしていないし名前を呼ばれた瞬間もすっかり落ち着いていた。それが、すごいのだ。ここを通らなきゃ話にならないと思っている場所をすんなり通り抜けたことが、そんなネタを用意して舞台で存分に実力を見せつけたことが。世間が和牛に向ける期待を込めた視線を彼らがどのように受け止めているのかはわからないが、その中に多分に含まれている「和牛の漫才は面白くて当たりまえ」も確実に感じているはずである。
2017年のM-1で完成された100点と思える素晴らしい漫才をみせた和牛がさらにその先へ。
ふたりが満足のいく最高の漫才ができますよう。

No.349 霜降り明星
面白い、いける、といわれ続けてはじめて本当に手に入れた、憧れの舞台、決勝戦へのチケット。準決勝で見た彼らは溢れる若さとエネルギーで、大きな会場を沸かせていた。結成5年、4回目の出場。大号泣。よかった、よかったと体を寄せたふたり。「ほんま長いトンネルやった」
ダイアンの’よなよな’でギャロップとかはわかるけど泣くん早いわという話が出た。いろいろ考えながらもう一度見たのだけど、やっぱり本人たちにしかわからない日々があったんだろうと思う。真っ暗な時って、きっとたった1ヵ月でも息ができないほど苦しい。
他の漫才師がふたりの間に距離感をもっていろいろと適度に保ちながらやっているとしたら、彼らはしっかり手を取り合ってしまっている気がする。そんな漫才が新しくて面白い。がんばれ、霜降り明星。

No.2852 ゆにばーす
劇場の出番で見てもテレビで見てもゆにばーすは面白い。が、準決勝のネタには驚いてしまった。こんなこともできるのか!「M-1で優勝したら芸人やめます」という人のいるコンビだ、番組にとってもこんなに面白いことはないだろうしそこまでの思いを持ってくれているのは純粋にうれしいと思う。出場3回目から2回連続決勝進出、その実力は本物だと証明できた。漫才に魅せられた人間の漫才を見せられた人々がなにを思うか楽しみでもある。川瀬名人にやたらめったら噛みつく人が多いみたいだけどそれもすべて手のひらのうえ。’ナシ’なことを言わない限りはすべてエンターテインメント。
ひょいひょいと指でつまんだ人たちを全員テレビの前に座らせてゆにばーすの漫才を見せてやれ!

(ここで見取り図モリシは号泣する霜降りをちらりと見てすでにかなりグッときている)

No.2197 見取り図
やっと、やっと見取り図に光が手を差し伸べた。「どうしてこんなに面白いのに」と思う芸人さんたちはいくらかいるけれど、その中でも前に出ていく同期の中で苦汁をなめ関西で燻ぶった彼らが全国で、視聴率15%を超える注目度の高い番組で、あたおかでおっかくな漫才を披露すると思うとワクワクが止まらない。どうか上手くはまるようにと願うことしかできないが、「辞めんでよかった。夢って叶うな。」と涙を流したふたりに是非100万人以上の数分間を奪って笑わせてほしい。とにかくまずはそのことに意味がある。大丈夫。面白い。ここからはじまる!

No.2851 かまいたち
確実に面白い人たち。偉業を成し遂げようとしている人たち。唯一無二のスタイルをもつ彼らの漫才で笑わないなんて無理なんじゃないかと思う。準々決勝でも大ウケだったと見て、知っている人が大半であっただろうUFJのネタでもお客を黙らせないかまいたちは、かまいたちのネタは、本物だなあと思った。空間を自分たちのものにするのが上手い。声を発した瞬間からいかにも面白いことを言いそうな気がする。決勝進出が決まっても「優勝以外意味ないんで」と言い切った山内さんが不覚にもかっこよく見えた。ここまでやってもガッと上がらせてくれないならば、どうせならM-1でも優勝してかまいたちの取り合いを起こらせればいい。
かまいたちが’ネタの神様’になる日を楽しみしています。

No.843 スーパーマラドーナ
M-1を少しでもたしなんでいる人であれば多少なりともスーマラにのせる思いはあるんじゃないだろうか。ついにラストイヤー。ふたりの温度差が何とも奇妙で面白い。何を努力と呼んで、何を苦労とするのか、定義はあいまいだけど、武智さんがM-1のために使った時間は膨大だろうしなんってったって最後のチャンスだ。もうリミットはすぐそこだ。M-1への出場資格がなくなったときどんな顔をするんだろう。少し心配なくらいすべてをかけているこの戦い。今年は武智さんの「悔いなく終われればいい」という旨の発言をよくみる。
是非漫才を4分間余すところなく楽しみきってほしい。そのとき初めて、わたしたちは新しい彼らを目の当たりにできる気がする。

No.3933 ジャルジャル
(わたしは数字が読まれた瞬間カメラがジャルジャルを映していないことにすこし怒っている。)
こちらも結成15年目。漫才に独自のスタイルを取り入れる常に革新的なジャルジャル。王道が評価されがちなM-1の決勝に4回も進んで毎回記憶に足跡をつけていくが、彼らの面白いところは世間の’イメージ’とは正反対なところだ。
たとえば福徳さんは「中川家の礼二さんに認められたい」という。「わかるヤツだけわかればいいというスタンスは昔から一切ない」という。あんなに媚を売らない芸をして自分たちにとっての面白いを突き通して、それでいてこう言うんだから、わたしは彼らに憧れざるを得ないのだ。いちばん純粋なきれいな目に見えるのだ。
なんといっても去年松ちゃんに高評価を得た一方でいくつかのダメだしもくらった’ゲームスタイル’の漫才を片手に彼らは今年もここまできた。それが意地なのか、反骨精神なのか、分からないけれど、決勝で違うネタをやるにしてもその一貫性がなんともやっぱりジャルジャルだ。
さいごの決勝の舞台で、ジャルジャルのフリースタイル漫才、思う存分見せてください。

No.919 トム・ブラウン
地下からの刺客。正直この大会まで知らなかったので下手なことは書けないけれど、交通費も出せないほど収入がなかったようで、そんな彼らが華の舞台で漫才を披露することは何人の心を救うだろうか。知られていないことは最大の強みになり得る。彼らのこれまた新しい漫才がこの大会にどうはたらくか、楽しみです。

No.2077 ギャロップ
ラストイヤー、決勝初進出。「何で最後なんやろな」と涙を流す毛利さんの言葉が非常に印象的だった。分かったふりなんかしちゃいけないけど、少しだけ、なんとなくその意味が想像できる気がした。今まで何度も夢を見て少し光が見えたと思ったらまた暗闇に突き落とされて、ちゃんと面白いはずなのに実力はあるのに、もがいてもがいてついに掴み取ったのはラストチャンス。またもやよなよなでダイアンがゴリ押しするので応援せずにはいられないというか。松ちゃんが竹原ピストルのことを「才能のある人間が認められないと」と話した映像を思い出す。
どうか、彼らに後悔をさせないで。


ここに敗者復活から一組が加わって計10組で行われる決勝戦。
4640組からまず準決勝に残っただけで猛烈に評価されてほしいくらいなのに、’敗者’とくくられてしまうんだからなんとも残酷だ。これは今年のキングオブコントの準決勝と決勝で感じたことなのだが、準決勝の会場ではもう精鋭というか’ここまで残ったツワモノたち’という感じだったのに、決勝をテレビの前で見ているとテキパキと進む進行と下位が受ける扱いのあまりの’下位感’に悲しくなったものだ。激戦をくぐりぬけてあんなに面白かった人たちが落とされている中ここに立っている10組なのに。10位だってこの中では10位かもしれないけど(少なくともKOCだけを基準にすれば)全国の中で10番目に面白い人たちなのに。


決勝進出経験者は決勝に出るだけでは何の意味もないと言った。
彼らが欲しいのは’王者’の称号だけ。


今までを思い出して涙を流して喜び、周りの人が笑顔でおめでとうと拍手を向けるそのすぐ横で、今までを思い出してまたダメだったと涙をこらえ膝から崩れ落ちる人がいる。そういう大会なのだ。

皆1ミリもみせないが負けて負けて悔しさで握る拳の中爪が突き刺さる思いでここまできてるー2017M-1王者とろサーモン久保田のInstagramより

最後の一組発表の瞬間となりで祈るように立っていた岩橋さんの表情が忘れられない。決勝の舞台で見られますように。

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