雲の海

高速道路に入ると西の空が見渡せた。青き山並みは今日は荒れた雲海に飲み込まれていた。迫り上がる波のような雲間に時折、紫の光が散る。ドーンと重い音が響く。幼い頃、この音を聴き鬼が来ると怯えた私に祖母が言った。鬼ではない、美しい龍神様が花嫁を探しに来ているのだよと。

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