電線を伝って

今日も一日ひどく疲れた。
職場から家まで片道約1時間半、重い身体を引きずって、やっと乗り換えの駅まで辿り着く。

ここ最近は仕事終わりに駅前のカラオケで歌の練習をしたり、nana(という歌のアプリ)にアップする歌を録るのが日課。
次の日が仕事のときは控えるようにしてるけど、やっぱりまっすぐ家に帰りたくはなくて。

そんな時にいい気分転換を思いついた。駅を降りて少し歩くと、川沿いに散歩道があるのを見つけたのだ。しばらく道沿いに歩いてから乗り換え先の駅の方向に逸れると、数分間の遠回りができる。

今日はあの道を通って帰ろう、
帰りの電車の中でそう考えるだけで気分が上がるんだから、自分の機嫌を取るのは得意なほうなのかもしれない。逆に落ち込む時は光の速さでどん底まで落ちるけど。

ホームに電車が到着し、階段を降って駅を出る。人の流れと違うルートへ足を進めると、目の前をまっすぐ流れる川。その傍につづく道と、夕暮れ空に架かる電線。

その日はなぜか、やけに電線が目に入った。
そして突如降りてきた「電線を伝ってどこまでも」というフレーズ。思いついたその一瞬で、「これは絶対いい曲になるからすぐに形にしなきゃ!」と謎の焦りを覚えた。笑

電線がどこまで続いているか確かめるように、その日は川沿いの道の先までずっと歩いて歩いて歩きまくった。結局迷子になりかけて来た道を戻ったのだけど、歩きながら歌詞を考えていたら心が満たされて、生きる希望みたいなものが、ふつふつと湧き上がった。

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最初に思いついたフレーズから遠距離恋愛の曲にしよう!とピンときたのだけど、曲の疾走感とそれにハマる歌詞がどうしても「恋愛」と結びつかず、わたし自身遠距離恋愛の経験がなくて書けず、ラブソングは早々に諦める。

この頃から曲作りは全部脳内で行っていた。頭の中で作詞作曲をして、完成した曲を一通り歌ってみて、それに後からギターのコードを載せるという感じ。オリジナル曲の7,8割はこのやり方で出来ていて、『スピカ』は基本街中を歩いてる時に作っていた気がする。

一曲を通して朝から昼、夜に移りゆく時間を感じてもらえたらなあなんて思いながら書いた曲。青空の下、大勢の前で思いきり歌いたい曲。

ライブでたくさん歌う気がしたから、冒頭の歌詞はステージに立った時に感じる気持ちをそのまま描いてみた。「ずいぶん遠くまで歩いてきたみたいだ」って、ライブの度に思うから。

今も鉄塔や電線を見るたびに思う。同じ方向に何本も伸びる道はどこに続いているのか、終わりはあるのか。
そういうのって無性にワクワクする!たぶん、どこまでも果てを探していくんだと思う。

電線を伝ってどこまでも
もっと、もっと、先へ

スピカ / 亜美



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